第61話 生きていた預言者
質問の意図が見えなかったカトレアは、応える事が出来ないまま、沈黙が続いた。
けれどこんな事をしに来た訳ではないカトレアは、沈黙を破るかのように口を開いたのである。
「どうして私が来ることが分かっていたの?」
カトレアの問いに、ジェフは少し鼻で笑ったかのような仕草をして
「僕に未来を預言する力なんてありませんよ・・・。ここに来たのですよ・・・予言者がね。その存在はあなたも知っているでしょう?だからここに来た?違いますか?」
全てを見透かしている。そんな感じの言い方である。
・・・それはジェフではなく、その予言者に対して・・・。
「ミリアムね?ミリアムは生きてるの?来たっていつなの?」
興奮したかの様にカトレアはジェフに質問を浴びせる。
「ちょっと待ってくださいよ。一度にそんなに聞かれても答えられないですよ。僕はここが『変』だから、こんな所に居るわけですしね・・・ここがね。」
そう言ってジェフは人差し指を自分の頭に当て、顔をクシャクシャにして無邪気に笑っている。
しばらくして、ようやく落ち着いたのか、軽く咳払いをしたジェフは
「失礼・・・。マズはどの質問から応えましょうか?・・・そうですねぇ・・・」
もったいつかせて、なかなか応えようとしないジェフに、しびれを切らしたカトレアは少しため息を溢した。
するとジェフはそれに気付いたのか
「ミリアムは生きてますよ。僕も彼女の姿を実際に見るまでは、生きているなんて想像もしませんでしたよ・・・。」
カトレアはバックからペンダントを取り出し、ジェフに見せた。
「ミリアムはこの子なの?」
ジェフはカトレアの手から、そのペンダントを取りマジマジと眺めている。
「懐かしいなぁ。」
それは口から自然とこぼれたかの様な口調であった。
そしてペンダントから目を離し、カトレアをジッと見つめはじめたのである。
「やはりミリアムの言った通りだ。あなたには過去を知る権利があるようです。」
そして目線を遠くにやるように、窓の外を眺め、淡々と話し始めたのであった。
「孤児院を出てから、僕達3人は偶然に出会いました・・・。僕とジェフとアンナは・・・。」
「アンナ・・・??」
てっきりミリアムの名前が出ると思っていたカトレアは、アンナという初めて聞く名前に戸惑いを隠せず、ジェフの話に割り込んだ。
けれどジェフはそんなのは、おかまいなしに話を続ける・・・。