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初めての週末と富士見屋の盛況1

遅れてすみませんでした。

 休日、それは至福の一時である。しかしうちは大衆食堂。常連さんたちの相手をしないといけないのだ。ちなみに定休日は毎週火曜と年末年始、お盆である。母の怜子の手伝いで忙しい。

 春休みはよかったなぁ…。おばさんが店を手伝ってくれてたおかげでゴロゴロできる日が多くて。

「お兄ちゃん、何時まで寝てるの?早く起きて!」って来る妹は、いない。代わりに「キモッ!」っていって来る妹ならいる。店の手伝いはしないし、成績と性格も悪い、そんな妹欲しくなかった。

 妹の名前は、富士見夏希。夏に生まれてから夏希とか適当すぎる名前じゃん。まぁ、見た目だけはいい。補正なしでいいといえるだろう。

 朝起きてすぐ仕込み、昼になって料理を作りという休日にはもう慣れた。


 カランカラン


 お、さっそくお客さんが来たようだ。

「いらっしゃ~せ。お好きな席にお座りください」

「あれぇ、富士見君じゃない?」

 富士見君?そう呼ばれるのは何年ぶりだろうか…。最近は「お前」や「おい」、「そこの」とかしか呼ばれなかったからびっくりした。(注:家族や空勝からは孝介と呼ばれています。)

 たしかあいつは、

「本網か」

 スキルは{逆転鏡}と{反射}のクラスメート本網美羅亜ほんもうみらあだ。逆転鏡はMR、反射はHRだったな。

「なんでいんの?」

「なんでって、ここが俺んちだから」

「そうなんだ!春休みの始めのころにここに来たことあってさ、美味しかったからまた来たんだよね」

「そうかい、ありがとよ」

「そん時いなかったけど、どしたの?」

 まさか引きこもってましたなんて言えない。

「いや、ちょっと用事があってさ…」

 こういう時は、ごまかすに限る。

「へ~。んじゃ、日替わり定食で」

「あいよ」


 俺は厨房へ移る。昨日の夜から漬け込んだ鱈の西京漬けを焼く。フライパンから、ジューッとよい音がしてきた。小鉢とみそ汁、白米を盛り付けて、税込み650円の日替わり定食完成だ。

「へい、お待ち」

 そういって俺は定食を差し出す。そして気になっていたことを聞く。

「今日は、お前ひとりなのか?」

「ちがうよ。あっ、これ美味し。もうちょっとしたら来るんじゃない?」

 え~、まだ来るんですか…。これ以上、学校の連中と関わりたくねぇ…(空勝を除く)。


 カランカラン


「はい、いらっ……って空勝か」

 俺の親友、月島空勝。毎週土曜の常連客だ。

「よ、じゃいつもので」

「はいよ。今日は日替わりもおすすめだけどどっちにする?」

「いつも」

「OK」


 空勝のいつものは、ささみの塩焼き定食600円(税込)だ。人気Nо.3の一品である。3年前から変わらず、ずっとこれを食べている。


「今日はどうよ」

「うまいな。いつもと同じだから、安心する」

「ありがとな」

 空勝はいいやつだ。初めて俺が店で料理してからずっとうまいって言ってくれる。こいつがいてくれるから、俺も頑張れる。


「ぐ腐腐腐腐」

 いきなり変な笑い声が店内に響き渡る。



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この作者は、他にもこんな作品書いてます。「俺、小田家に仕官します。」
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