野生のチンピラが現れた
えー、なにこの状況……。
「早く寄越せっつってんだろぉ? お前がさっき鍛治屋で大金受け取ってんのは知ってんだよぉ!」
「ヒヒッ、素直に渡した方が身のためだぜ?」
現在私はTheチンピラといった感じの男二人に絡まれている。見た限りあんまり強そうには感じないけど……。
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名称:ダス
種族:人間
レベル:12
状態:通常
魔素値:12
筋力:20
防御力:23
敏捷:20
知力:5
スキル:〈恐喝:Lv3〉〈待ち伏せ:Lv3〉〈追跡:Lv2〉〈詐欺:Lv2〉〈性技:Lv2〉〈剣術:Lv1〉
称号・加護:〈Eランク冒険者〉〈チンピラ〉
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名称:カスール
種族:人間
レベル:11
状態:通常
魔素値:10
筋力:15
防御力:17
敏捷:22
知力:8
スキル:〈隠蔽:Lv2〉〈待ち伏せ:Lv3〉〈追跡:Lv1〉〈盗み聞き:Lv2〉〈詐欺:Lv2〉〈性技:Lv2〉〈短剣術:Lv1〉
称号・加護:〈Eランク冒険者〉〈チンピラ〉〈取り巻き〉
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なるほど、紛うこと無きチンピラだ。鑑定してみたらレベルは確かに私より高いけど、アマンダさんやモニカさんの足元にも及ばないし、ステータスもレベルの割に高くない。それにスキルの種類がヒドイ。最後のヤツ以外ロクなスキルが無いじゃん。あと、先輩がどうとかのたまっていたとおり、コイツらも冒険者らしい。こんな輩もいるのか。
それはともかく、これからどうしよう。素直にお金を渡すっていう選択肢は私の中には無い。戦えばなんとか勝てなくはないと思うけど、やはりニ対一は厳しいし、相手は武器を持っている。そうして私が迷っていると相手は焦れたらしく、
「オイテメェ聞こえてんのか! 早く寄越せってんだよぉっ!」
「わっ!?」
いきなり掴みかかってきた。慌てて躱すと、その拍子にフードが脱げてしまう。急いで被りなおしたけど、バッチリ顔を見られてしまったらしく、男たちの視線が下卑たものに変わる。
「オイオイなんだよ。女だったのかぁ~? ヘヘッ、しかもなかなかカワイイ顔してんじゃねえか」
「ヒ、ヒヒッ、アニキ、楽しみが一つ増えましたね」
そのネットリした粘着質な視線に生理的嫌悪と恐怖を覚える。その時、
「おい! お前達何をしている! その女の子から離れろ!」
チンピラたちの後ろに、此方に向かって走ってくる人影が見えた。その人影はチンピラたちの間をすり抜けて私を庇うように私の前に立つ。その人は青い髪の男の子だった。歳は私と同じぐらいで、私より頭一つ分背が高い。呆気に取られていると、
「君っ、此処は僕に任せて逃げて!」
と焦り気味の口調で声をかけられる。その顔に余裕は無く、チンピラ二人を同時に相手取るのは難しいのだと分かった。その顔を見て思わず言い返す。
「いえ、私も戦います。元はと言えば私の問題ですし、一対一なら勝てます」
「っでも! ……大丈夫なの?」
「はい。貴方は短剣を持っている方をお願いします。私はもう一人を」
一対一で最適化を使えばなんとかなる筈だ。それに、ここで逃げたらまた同じような奴等に絡まれるかもしれない。それならここでコイツらを撃退して、警告にした方がいい。
「……分かった。助けに来て情けないけど、それで行こう」
私たちが話を終えるのと同時にキレたチンピラ一号が襲いかかってきた。
「テメェ! 調子に乗ってんじやねぇーーっ」
頭に血が上っているのか、ご丁寧に剣まで抜いている。大人げなっ。
流石に怖いけどっ、ゴブリンライターよりは怖くない!
「最適化!」
相手の武器を奪って無力化するイメージ!
身体が自然に動き、最小限の動きでデタラメに振り下ろされる剣を避ける。
相手が驚く間を与えず、空振りした剣を持つ腕を下から思い切り膝で繰り上げると、振り下ろす勢いと相まって、肘から嫌な音が聞こえた。
ダスが痛みで剣を取り落とすと同時に、思い切り地面を踏み込んで鳩尾に拳を叩き込む。
息が詰まり前屈みになるところに、容赦なく全体重を乗せたアッパーで顎を打ち抜く。
ダスは呆気なく崩れ落ちるが、最適化さんはまだ足りないとばかりに止めの蹴りをダスの股間に打ち込んだ。
今度こそダスは意識を失い、泡を吹いて気絶してしまった。
この間僅か三秒の出来事だ。
……ちょっとやり過ぎたかな。私がやったことだけど、流石に憐れだ。…と、あの子は大丈夫かな。
見ると、まだ戦っている真っ最中だった。青髪の男の子は剣を使っているけど、短剣に苦戦しているようだ。……相手逆の方が良かったかな。怪我されたら嫌だし、ちょっと助太刀しよう。私は足元に転がるダスの腰から鞘を抜き取ると、戦いに気をとられているカスールに忍び寄ってその脳天に思いっきり叩き付けた。もちろん最適化発動済みである。カスールは目を回して崩れ落ちた。
やっぱりこのスキル優秀すぎ。ふと顔を上げると男の子は私の倒したダスの方を見て固まっていた。ダスは未だに白目を剥いて泡を吹いており、その股間は刺激臭のする液体でズボンが濡れている。男の子は若干ひきつった顔でこう言った。
「これ、僕いらなかったんじゃ……」
……そうかも。