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法医学教室の革新者  作者: 広木イズミ
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第一章 屍出虫(シデムシ)

感想やご指摘により、描写や方向性を変えていく可能性があります。誤字・脱字、技術的な矛盾点などございましたら、ご指摘くださいませ。よろしくお願いします。

 

「いえハーフじゃありません。クォーターです」


 小さなころから朝比奈修一郎が、ずっと繰り返してきたセリフだ。


 オーストリア/キリスト教の修道士であったメンデルが、教会の中庭で育てたエンドウ豆の一粒ひとつぶをかぞえながら発見した遺伝子の振る舞い。

 悲しいかな、メンデル自身はその発見で報われることはなかった。

 しかしながら、彼の発見した原則はたしかに存在した。

 厳格なキリスト者だった修一郎の父/F2(二世代目)で影をひそめた遺伝子は、隔世遺伝という形で顔立ちや体格にあらわれ、彼の茶系がかった瞳のふちをブルーに染めた。


 遺伝子研究におけるエンドウ豆の役目はその後、世代交代の短いショウジョウバエやマウスにとって代わられたが、まだ何も知らない子どもたちにとって、遺伝子など別世界の話でしかない。

 そして、ささいな差異はイジメのきっかけとなる。


「異人の子」


「ニューハーフ」


 子どもはじつに正直で、残酷だ。

 どれだけ多くの言葉の暴力を浴びたことだろう。


 ときには言葉だけでなく、腕力による直接的な暴力にもさらされる。

 いくら敬虔なカソリックの家庭に生まれ育ったとしても、理不尽な暴力は耐えがたい。

 小・中・高の学生時代は、合気道にのめりこんだ。


 遺伝子の呪縛は、医学への道を選択することに繋がった。

 たがここもローティーンのころと変わらない理不尽さにあふれていた。


 研修医時代には容姿による差別を受けることはなくなったが、逆差別があることに気づく。

 背の高い、容姿に恵まれた者ばかりをそろえ、ヒエラルキーのなかで奴隷のごとく命令に従わさせられるパワハラとアカハラ。

 醜い優越感と歪んだ徒弟制度。


 差別されることに敏感だった感受性は、知らずしらずのうちに差別やイジメがもたらす無神経さに過剰反応を起こし、些細なドクハラまでもが気になってしまう。

 そういった苦悩のなか、自分が自分らしく生きていける領域を模索し、追い求め続けた結果、やっと法医学に出逢うことができた。


 朝比奈修一郎はそんな法医学教授であり、監察医であった。

テレビドラマや推理小説などによく登場する「法医学者」が主人公です。

よろしくお願いします。


<法医学の基本知識>

事件性の疑われる異状な死体が発見されると、最初に警察による「検視」が行われます。検視官は解剖は行わず、遺体の状態などを調査・分析し、”事件性が あるか?”を見極めます。


・事件性があると判断された場合

  司法解剖(しほうかいぼう)の手続きが行われます。

 司法解剖は監察医が執刀するのではなく、 大学の法医学教室で高度な専門知識を有する法医学者が担当します。


・事件性がないと判断された場合

 監察医務院(かんさついむいん)にて、行政解剖(ぎょうせいかいぼう)が行われます。

 行政解剖の最中に「事件性がある」と判断された場合は 司法解剖となります。

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