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習作

作者: かえる

電車に乗る。田舎の路線には珍しく、ロングシートだった。適当に座り流れていく窓の外を見る。東京の中心ではあまり見られない自然の光景はとても新鮮で、優しく綺麗に映った。


暫くしてなんとなく駅に降りた。改札はなく、駅の出口に小さな切符を入れる箱が置かれていた。

始めは広々とした道路だったが、少し歩くと舗装された道路は消え、獣道が現れた。電車の窓から見た森は、日に照らされ青々と輝き、生命力を感じられる綺麗な姿だった。今目の前にある森は、同じ森であるはずなのに、どこか暗く映った。獣道といっても看板はあり、散歩道と書かれていたため、きっと大丈夫と言い聞かせ、森に入った。

森にはいろいろな生き物がいた。リスや蝶など見ていて楽しい生き物もいれば、蜂や百足など害のある生き物もいた。熊に注意の看板があった時は心臓が止まりそうになった。看板だけでびっくりするほど、自然の大きさに心が参っていた。ただ、生き物たちは、生きていた。図鑑で見て「知っている」姿とは迫力も全く異なっていた。蛇は生きるために蛙を食べていたし、蜂は横切った蛙に道を譲っていた。蟻は蝉を運んでいたし、リスは木から落ちてきた。恐怖に揺れた心だったからこそ、より強い「生命力」を感じた。


森を抜ける。抜けた先には町があった。大きな道路がつながっているらしく、意外にも、そこそこ立派な町だった。町の建物のしっかりとした建築に、無機質な印象を感じた。今まで綺麗に見えた家や歴史建築が、自然の大きさを見た後では、色あせて見えた。同時にその町を歩く人々から安心感を感じる。腰が抜けるほどの安心感に、人とのつながりは、人間の生きるための知恵なのだなと思った。


大きな道路から少し遠回りをして、駅に戻った。電車を待つ。


着た電車には学生がたくさん乗っていた。皆笑顔で楽しそうに笑っていた。どこか地方に暗いものを感じていた自分の偏見に呆れ、考え直し、もっと色々な景色を見たいと思った。


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