性同一性商売
お読み頂きましてありがとうございます。
誰にでも心が女の部分と男の部分があると思う。
『性同一性障害』
自分の身体に違和感を持っていた私は、ニューハーフと呼ばれるコミュニティーに属することになった。
親には内緒だ。高校を卒業後、運よく就職できた会社にまだ勤めていると思っているに違いない。そこは親に対するダミー会社のつもりもある。
親にカミングアウトして良いことなんか何もない。完全に拒絶してくれるのはまだ良いほう、受け入れているポーズだけで何一つ協力してくれないのが現実だ。
受け入れるだけでもマシだろうと言って、性転換どころか身体を改造したり、ホルモン注射をすることさえ許してくれないと聞く。
完全に受け入れる人間が100人に1人だとすると両親2人で1万分の1の確率、兄弟がいれば100万分の1の確率、さらの親戚となると宝くじに当るよりも低い。
会社に居た1年間コツコツ溜めたお金で専門病院の門を叩いた。今は日本にも幾つかの病院が存在することは調べればすぐ分かる。
そこで『性同一性障害』と認定を受けるのが第一の関門だ。詳しい問診と親の同意。未成年はなんでもかんでも親の同意が必要だけど、もうすぐ20歳。それに親に知られる可能性を排除するには保険証も必要である。
目標があれば、会社でどのような扱いをうけようが構わない。残業代さえ払われるなら残業沢山のブラックも歓迎だ。もちろん、カミングアウトする気もさらさら無い。
最近は社会的に属するコミュニティーでカミングアウトする人間が居るらしいが、それをしてどうするというのだろう。誰も得をしない。全員が全員受け入れてくれる確率なんてゼロだ。
LBGTそれぞれが相容れぬ存在だが、それぞれコミュニティーが存在するのがその証だろうと思う。
☆
私はその中でも上手くいっているほうなのだろう。ニューハーフというコミュニティーに飛び込んでボーイ、ホステスを勤めつつ溜めたお金で身体を改造していく。
性転換を行なうかどうかが第二の関門だ。ホルモン注射だけで女性らしい身体を手に入れることができる。それで満足する人間が意外と多い。おそらく私もそのタイプだ。
いやだったというべきだろう。
好きな男性が出来た。ベッドインできただけでも奇跡だったが身体を繋ぐことは無理だった。土下座して泣きながら謝るその人を見たとき、次なる目標ができたのだ。
そして、自分の『性同一性障害』を売り物にした。おそらく100%女性の心を持っていたらできないことだ。それにより収入が多くなり次々と自分の身体を改造していく。もちろん、彼の好みに合わせることも忘れない。
だが性転換を果たしても彼は手を触れてくれない。彼も店に通ってくれるのが余計ツライ。何が悪かったのか、商売だと割り切ったのが間違いだったのだろうか。
☆
やがて転換点にさしかかった。彼は派遣会社を経営していたのだが、LBGTに関係なく雇っているらしいことを聞いた。彼らしい。罪の償いかたなのかもしれない。
私はその罪の意識につけこみ、彼のコミュニティーに入り込んだ。そう戸籍を変え、女性として昼間の仕事を始めたのだ。
周囲の視線は優しかった。こんなにも違うものなのか。あの1年間の社会人経験と全く違う。もちろん、ここでもカミングアウトはしない。それをすれば彼に迷惑が掛かってしまう。
見ればLBGTが多いことがわかる。その雰囲気で分かってしまう。それぞれが分かっているのか、皆一様にカミングアウトしていない。もちろん、お互いにもである。本当に好きな人には告白しているようだが。ある種の仲間意識を持ちながらも誰もそのことに触れてこない。
ある意味、奇跡の職場かもしれない。
だがそれも甘い幻想に過ぎなかった。彼に婚約者が現われたのだ。
しかし、再び奇跡の出会いとなった。私の正体を易々と見破った彼女が私を全面的に受け入れてくれた。世間では『腐女子』と呼ばれる存在らしい。彼女は私の味方になり、彼に同居を迫ったのだ。
彼と結ばれた。
そして既に配偶者だったと分かった彼女と彼と3人で住む生活が始まる。
だが良いことばかりは続かない。『性同一性障害』という間違った情報が妻である彼女に突如降りかかった。『性同一性障害』の専門病院に通院している私と間違われたようだ。
それでも、彼と彼女は優しかった。彼女は出て行くという私を殴ってでも止めるという徹底ぶりだった。
★
そして今、私は愛する彼の子供を抱いている。
彼女は彼の子供を育てるという幸せを分けてくれるらしい。
BL用のペンネームで執筆しております。
本編は「作者マイページ」から辿ってください。
単なる告白になってしまいました。
もうすこし勉強してノンケの男性に気持ち悪いと言ってもらえる作品を
お送りできるように頑張っていきます。