0→2
ある幼稚園で、先生が一つのボールを取り出し、子供達に聞いた。
「皆さん、簡単な数字のお勉強です。このボールはいくつありますか?」
子供達はしばらく考え、それぞれに答えを言う。
「0個です」
「いや、2個です」
食い違う答えに、子供達は言い合いを始めた。
「違うよ、0個だよ」
「君こそ間違っているよ、2個さ」
「あれは0個じゃないか」
「0はなんにもない事だって、お母さんが言ってたから、あれは2個だ」
そんな様子を見ていた先生が仲裁に入り、困りきった表情で言う。
「ううん、どうしましょう。確かに0でもあるし、2でもあるわ。でも間違えている気もするのよねぇ…」
この世から『1』という数字が逃げ出し、『1』の概念がなくなった世では、一つのボールは0であり2でもあったのだ。
先生は、ふと時計を見て言った。
「あら、もうこんな時間。さあさあ、皆、帰りの支度を始めて。それにしても、今は2時…それとも4時…、一体何時なのかしら…」