カーナビゲーション
これは、夏休みに体験したことである。確かぁ、七月くらいだったと思う。友達の瀬川、尾形、自分こと藤井の3人で旅行をしていた時にその出来事は起こった。当初の予定より遅れて出発した僕達は、泊まる宿に向かっている所だった。
藤井「おい、どうしする!予定の時間よりも5時間も遅れたやんけ尾形のせいやぞ!!」
瀬川「しかない藤井さん、今回は尾形さんの就職祝いやもん」
尾形「すまん、藤井」
藤井「まあいいや、とりあえず旅館にはチェックイン遅れるって言ったしなんとかなるやろ」
尾形「藤井、ありがとう」
瀬川「まぁ、藤井さんあと1時間くらいしたら着くし」
といつものたわいない会話をしているところだった。
すると、『ガァー、ピィー』いきなりカーナビにノイズがはしった。すると、いきなりカーナビ画面が切り替わり『新しいルートが検出されました。新しいルートに変更します。』
藤井「えっ!マジで、何これカーナビ大丈夫か?」
瀬川「新しいカーナビやし、多分大丈夫やと思う。けど、こっちの方が30分早いで」
尾形「皆に迷惑かけたし、少しでも早いこっちのルートでいいよ」
藤井「じゃあ、そっちで行くか」
僕はこの時、この判断を下したことをあとで後悔することになる。
すると、カーナビから目的地に着いた合図が鳴った。『目的地周辺です。運転お疲れ様です』
しかし、そこは目的地の旅館ではなかった。あたり一面湖で湖の奥には白い西洋の建物が建っていた。その西洋の建物は、ボロボロで旅館というにはほど遠いものであった。
藤井「えっ!!ここ、旅館ちゃうやん。何処やねんここ!!しかも目の前に廃墟あるやん」
瀬川「あれ、やっぱりカーナビ壊れてたんかな?新品やったのにショックやわ」
すると、友達の一人が訳の分からないことを言い出した。
尾形「藤井、瀬川。立派な旅館やで今日はここに泊まろ」
藤井「はぁ、何言ってるんや!どこからどう見たって廃墟やねぇかぁ。 瀬川、早よ旅館行こや」
瀬川「そやな、藤井さんの言う通りやで尾形帰るで」
すると、友達の一人はこう言った。
尾形「さっきのは冗談やで ちょっと家の中見てこや 気になるし...」
というので、興味本意でその西洋の建物に入って行くことにした。
中は、想像以上に綺麗であった。人が使ったような形跡はなく。また、住んでいた生活感もなかった。築年数はおそらく20年と言ったところである。最初は、ハウスキーパーでも雇っているのだろうと思っていた。
藤井「めっちゃ綺麗やん!ここで寝てもいいかもな」
瀬川「いやぁそれは、ちょっといややな。なんか不気味やし」
尾形「...。」
いきなり、友達の一人がしゃべらなくなった。すると、窓の向こう側の茂みの方から声が聞こえた。『カエレェ』、『キミタチガクルバショデハナイ』、『ダマサレテイル』、『ハヤクニゲロ』などと聞こえてくるのである。
藤井「瀬川か尾形のどっちか今なんか言った?」
瀬川「なんも言ってないけど?なんか聞こえたん?」
藤井「そうなん!じゃあ気のせいかも 尾形は?」
と僕が言った瞬間、その友達が二階に走り出した。その光景を目にした僕達は急いで尾形を追った。すると、尾形はある部屋の中でたたずんでいた。そこは、今まで見てきた部屋の中とは違いかなり汚れていて散らかっていた。
藤井「お前どこまで行くねん。早く帰るぞ!」
瀬川「尾形、頭でも狂ったか? 病院行くか?」
すると、友達はこう言った。
尾形「藤井、瀬川ここに着くまでの記憶がないんやけど」
藤井、瀬川「?、!?」
尾形の発言に二人顔を見合わせ驚いた。そう、尾形は、少し前までのことを覚えていない。
藤井「どこから記憶ないん?」
尾形「車で会話してたくらいから」
瀬川「えっ!!それってヤバくない」
藤井「なんか、ヤバそうやな。早く帰ろか。嫌な感じがする」
すると、ちょうど僕が言い終わったくらいに向かいの部屋から音が聞こえてきた。『シュッシュッ』何かを研ぐ音が聞こえてきた。その音はだんだんと近づいて来た。しかも、その音は僕たちのいる部屋に近づいてきている。すると、部屋の前で音は止んだ。
藤井「なんか、変な音聞こえたな。早よ帰ろ」
瀬川「俺もなんか、嫌な感じがしてきたわ。早よ車戻ろか」
尾形「.......。ビック!」
藤井「どうした尾形!」
尾形は、ただただ人差し指で何かを指しているのだった。その指の先には、黒い影だけで包丁を握りしめている人影があった。その影を見た瞬間に僕達は雲の子を散らす様に逃げた。しかし、その影はどんどんと近づいてくる。僕達は影に追いつかれず無事車に乗ることができた。しかし、車のエンジンを入れても動かない。
瀬川「なんでこんな時に動かんへんねん」
藤井「影どんどん近づいてるでヤバい早よ車動け!!!」
尾形「瀬川、車早く出してや!!!」
瀬川「尾形、今やってるから」
と言っているうちにも、影はどんどんと近づいてくる。影が目の前で迫った時、車がやっと動き出しその場を立ち去った。なぜ車が動いたのかは、わからなかった。しかし、尾形の背中には御札のようなものが貼ってあった。
その後、無事に旅館に着き今日の出来事を女将さんに話した。すると、衝撃の事実が返ってきた。もともとあの西洋の白い建物は、お金持ちの家族が別荘として使っていたものらしく、その日もたまたま別荘に泊まりに来ていたそうだ。そこに逃亡中の殺人犯がその別荘に忍び込み家族全員を切りつけ殺害したそうだ。殺人犯は、警察から逃れられないことを悟ったのか、そこで自害したそうな。それからというもの、あの建物では包丁を持った霊が人の血を見たさに自らあの建物に招き入れ人殺しを繰り返していた。そこから、無事に生きては帰ってこれないと、女将さんは言う。あとに、女将さんはこう続けた。お金持ちの家族の両親は霊媒師でもあったそうだ。
もしかするとその御札はその家族の人たちが貼ってくれた物なのかもしれない。女将さんが話し終わると部屋から退出した。その退出の去り際に女将さんはこう告げた。
女将「アトモウスコシダッタノニ、アノカゾクニジャマサエサレナケレバモウスコシデチノアメガミレタノニ」
本作を読んでいただきありがとうございます。少しでも怖がっていただけたら幸いです。作家の端くれ故に読者の皆様から助言等をいただけたら嬉しいです。