1話目
冷たい雨が目を覚まさせた。
身体の様々な部分が損傷して、もう立ち上がることもできない。
痛みで意識が朦朧としている。まるで夢でも見ているようだった。
しばらく呆然としていると、ふと我に帰った。
激痛を承知で立ち上がり、岩陰を抜けて、開けた草原に出た。
そこには1人の亡骸が横たわっていた。すぐに親友だとわかった。
酷い状態だった。殆んど原型をとどめていないほど、大量の傷を受けていた。
人は信じられない、信じたくないものに直面したとき、何も反応できなくなる。声すらも、涙すらも、感情すらも湧かなかった。何かが壊れたように、何もなかった。
そうして暫くして雨がやんだ。
さっきまで親友と行動を共にしていた。心のどこかできっと目覚めると思っていた。
親友の手のひらから、御守りがこぼれ落ちた。親友の婚約者からのものだった。
それはあまりに残酷で悲痛で、気付いてしまった。これは現実で、親友はもう死んでいる。
心臓が脈打つのがわかった。汗が止まらなくなった。自然と涙が溢れてきた。親友と行動を共にしていた時に話は通っていた。誰が親友を殺したのかは予測がついた。
しかし、謎が多すぎた。
何故親友は死ななければならなかったのか、誰に殺されたのか、予測ではなく真相が知りたかった。真相を知るまで、この悲しみと怒りは収まらないと悟った。
親友の仇をとらない限り、一生満足できない。親友を殺した人間に復讐することが自分にとって生きる意味になった。