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聖贄女のユニコーン 〈かくて聖獣は乙女と謳う〉  作者: 陸 理明
最終話 聖士女のユニコーン
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彼方の〈方舟〉

 俺たちの眼に飛び込んできたものは、黒々と広がる水面だった。

 茫漠とした表面の底には、例えようもないほどに不気味な生命がたむろし、いつでも陸に這い上がろうと企んでいる。そんな印象しか浮かばなかった。

 風もなく、波もないので、見た目は穏やかそうだとしても絶対に信用できない。

 鼻孔が湿った臭いを嗅ぎつけた。

 いや湿ったというよりは腐ったというべきか。

 べっちょりと剥きだしの皮膚のすべてにまとわりつくような不快な、加えて喉の奥から嘔吐を促す異臭であった。

 すべてあの〈泥の海〉からのものだとすると、正直な話、近寄りたくもないというものだ。

 この世界に来てから海というものを拝んだことはないが、初めて見る異世界の海原があんなに不愉快なものだというのは非常に耐えがたいものだ。

 せめて、空が晴れ渡っていてくれればいいようなものの、陽光の一筋すら差していない有様であるから。

 あれがタナたち聖士女騎士団の目的としている場所であり、俺はあの海に浮かぶ船になんとかして乗り込んで、敵の待つ場所に赴かねばならない。

 ある意味では旅の終わりだ。

 あそこで俺たちは別れることになる。


「巨大ですね」

「ああ、東京ドームぐらいはあるな」

「なんですか、それは?」

「うちの世界での闘技場だ。五万人ぐらいは入れる」

「それは凄い……」


 ノンナが指摘したのは、その〈泥の海〉に浮かぶ一隻の船だ。

 船といっていいのかは語弊がある。

 なんといってもさっきの言葉通りに東京ドームぐらいの大きさがあるのだから。

 ただ、俺の記憶では世界一周をするような豪華客船というものは、それに近いサイズのものがあったはずだから、ありえないというものではない。

 ただし、船の全体が明らかに木製で、どうみてもボロボロなくせに沈みそうな気配がまったくしないというのは異常だ。

 沈没もしないで存在していることすら信じがたい。

 また、マストも帆もなく、櫂も見当たらないし、いったいどうやって航行しているのかどうかもわからない。

 とにかく見た目がなんとなく船だとわかる程度である。

 

「錨は降りていますが、接舷したという訳ではなさそうですね」

「ん、どういうことだ?」

「船に詳しくはないのですが、あの船がどうやってあそこに停泊したのか、非常に不思議な状況だと思います」

「確かにな」


 すると、先導していたハーニェが叫んだ。

 いつもはアオがやっている仕事だが、彼女が抜けたので次に目のいい野生児であるハーニェが受け持っているのである。


「正面、砂浜に人影! 数は一!」


 俺たちは顔を合わせた。

 人だと?

 この〈王獄〉の奥の奥、俺たち以外に人など入り込めるはずのない場所にか。

 それはつまり……


「先ほどの〈剣の王〉使いの次の削り役ということでしょうか」

「考えられるのはそれだけだ。こんなところで足止めされたくはないぞ」

「では、また誰かを当たらせましょう」

「―――くそ、いつまでこんなことをしなければならないだよ!」


 聖士女騎士団はそのままの速度を落とさず、ただし警戒態勢を越えた戦闘状態に移行すると、巨大な船の見える砂浜にたたずむ人影を目指した。

 その手前、声が届く位置まで来て停止する。

 驚いたのはその姿だった。

 身長は俺の腰までしかなく、着ているものは白い絹でできた豪奢な刺繍入りフード付き長竿着、そして豊かな輝きを放つ金色の髪。

 年齢は無理に引き上げたとしても十二歳ぐらい。

 完璧な左右対称、とんでもないとまではいかないが、機械か天才職人の造形によるものとしか思えない整いすぎた美貌の持ち主である。

 何よりも異彩を放つのは笑いに満ちた人懐っこそうな顔だった。

 それなのに俺の胸に湧いてくるのは、不定形の不安のみ。

 近づくのも遠目から観察するのも何か気が咎める、といった体験したことのない感情が湧いて出てくるのだ。


《あれは……》


“ロジー”が茫然と呟いた。

 前の幻獣王にしては迂闊な態度だ。


「わかるのか?」

《……おそらくはな》

「何だ?」

《友よ、少し待ってくれ。〈念話〉を含めて表に出していいものか確信が持てない》


 こいつにしてはおかしな言い回しだった。

 表に出す、つまり口に出していいかわからないということだろうか。

 言霊信仰じゃあるまいし。

 だが、無理して聞き出すこともあるまい。

 どのみちあの金髪の子供には問いたださなければならないことがある。

 子供といえるかはわからない、下手をしたら人に擬態した化け物そのものではあるがな。


「我々は第一王国ロイアンよりの歴史を引き継ぐ中原の国家バイロンに属する人類守護聖士女騎士団である。告げる。貴殿は何者だ!」


 ナオミが口上役を買って出た。

 隊長であるノンナも一緒だ。

 他の騎士は武器こそ向けないが、警戒は怠らない。

 誰にだってこんなところにぽつねんと立ち尽くす子供が尋常なものだと思えないだろう。

 間違いなく、人外かそれに近いはずだ。


『やあ、来たね。待っていたよ、人類代表たち』


 案外、普通の返答がきた。

 たまに”ロジー”が使うようなロイアン古語よりもやや古めかしい言い回しっぽい。

 内容は風呂敷の広げすぎだが。


「言葉が通じるとなると話は早い。こちらの問いに答えてもらおうか」

『えーと、とりあえず……あ、いた』


 ナオミは眼中に入っていないらしく、金髪の子供はこちらを見渡し、俺を指さした。


『晴石聖一郎!』


 と、おそらくは今となってはシャッちんと”ロジー”ぐらいしか知らないはずの俺の本名を呼んだ。

 俺が戸惑って動けないにも関わらず、友好を示そうというのか、小さく手を振っている。

 親しげな態度ではあるが、俺にとっては意味不明の行動だ。


「……セシィ、どうすんの?」


 ナオミの代わりに、俺の護衛に入ったタナが訊いてきた。

 それはこっちがききたいところだ。


「せいいちろーってセシィの名前でしょ? 何で、あいつがそれを知ってんの?」

「わからん。俺にとってもな。……ところで、どうして俺の名前を知っているんだ?」

「ん? シャッちんに聞いたんだよ。たぶん、十三期はみんな知っていると思うよ」

「まったく、機密がダダ漏れだな」


 それから、俺はタナに顎をしゃくり、


「ついてこい。とりあえず、話をしてみよう。すべてはそれからだ」

「だね」


 楽しそうに頷くタナをつれて、俺は先に行ったナオミの元に行った。

 途中で、マイアンの横を抜けたとき、「言葉にお気を付けてください」と忠告された。

 珍しいこともあるものだ。


『やあ、聖一郎。初めまして、だね』

「さあ、な。ずっと前に出会っていた可能性はあるんだろ?」

『多元宇宙ではよくあることだね。そういうことはあるだろうけど、君はそういう存在ではないから、正真正銘初めましてだよ』

「……どういう存在だよ、それは?」

『んー、神の血を継いだ〈英雄〉とか宇宙でも稀な能力を授かった〈半神〉とか、そういう類のことだね。それに比べれば、君はただのつまらない定命の者だ。本来なら、僕が君と出会うことはあり得ない』


 ……つまらない者呼ばわりかよ。

 言ってくれるぜ。

 それに、こいつの話し方とか雰囲気とか、やたらと〈白珠の帝国〉の皇帝と帝弟を思わせるものだ。

 まるで遠い親戚であるかのような印象を受ける。

 皇帝の前に立った時も相手に呑まれるような、まさにカリスマというものの光明を受けたものだが、こいつの場合はその比ではない。

 こいつの語りというか喋りを聞くと、なんとなく幸福な気持ちになってくるのだ。

 気分が落ち着くどころかただの感情の揺らぎでさえもなくなっていくような、穏やかな、陶酔するような心持ち。

 ただ、これは危ないものではない。

 もっと高次にある、魂の在り方までも左右しかねないものであった。


《……余の友にちょっかいをかけるのは、止めてもらえないか?》


 俺が正気に返ったのは、”ロジー”の心底嫌そうな〈念話〉のおかげだった。

 頭の中に冷水をぶっかけられたかのように、すっとさっきまでの多幸感が消えていく。

 おそらくなんらかの魔導を使って俺の眼を覚まさせたのだろう。


『ふーん、さすがは幻獣王だね。伊達に神話の時代から存在していない』

《それはこちらの台詞であるな》

『ただね、僕には僕の事情がある。君はしばらく黙っていてくれないか。あと、僕についての助言をすることも控えてくれよ』

《―――貴様がおかしなことをしなければな》

『はいはい、わかりました。じゃあ、僕は君の言う通りにするから、僕のやることを邪魔しないでくれ』

《……承知した》


 すると、金髪の子供は俺に向き直り、


『という訳だよ。では、改めてよろしくね、聖一郎』

「……おまえは誰だ」

『名前? あー、名前ね』


 少し悩んだ。


『じゃあ、”ゆかり”でいいや。”ゆかり”くんって呼んでよ』

「―――”ゆかり”?」


 この世界の名前ではない。

 どちらかというと俺の元の世界の響きだった。

 しかも、その名前はどう見ても女の子のものであって、この美貌の少年らしいものには不釣り合いだ。

 だが、どうせ偽名だろうし、わかる奴にはわかる何らかの意味があるのだろうと想像がつく。

 もっとも、今のところ、俺には関係のない話だ。


「わかった。で、”ゆかり”。おまえの正体については聞かないとしても、こんなところで何をしているのかは説明してもらえるんだろうな」

『それは構わないよ。僕の仕事は、まあ、端的に述べるなら航海士かな。あそこに見える〈方舟〉を上手に目的地に運ぶという仕事を請負っている』

「……〈方舟〉だと?」


 俺の記憶で〈方舟〉といえば、それは一つしか思い浮かばない。

 聖書にあるノアの方舟という奴だ。

 世界が悪徳に満ちてしまったため、神がすべての生物を一度リセットしてやりなおすことにした。その際に信心深いノアという男とその一族に、全世界の生物のつがいを集めさせて乗せたという脱出船みたいなものだ。

 あの〈泥の海〉に浮かぶ船が〈方舟〉だというのならば、その航海士だと名乗るこいつはいったい何者なんだ?

 ノアとでも言うつもりなのか。


『そう、〈方舟〉。言いえて妙だと思うよ。なぜなら、あの船ははるか未来から帝国の人間たちを連れてきた代物だからね。移民船としての性格もあるし、ぴったりじゃないかな』

「そういうことか」


 どういう仕組みなのかはわからない。

 帝国を襲った〈手長〉や〈脚長〉の群れは、ここからやってきたということなのだろう。

 だが、あの夥しい魔物の群れを運んだにしては小さい気がしないでもないが……。


『ご安心なく。あの船内は時空が歪んでいてね。見た目以上に、色々と広くなっているんだよ』

「……心を読むな。化け物め」

『うわっ、酷い言い草。これだから人間は嫌なんだよ』


 派手な仕草でおどける金髪の子供―――”ゆかり”を無視し、俺はさらに問うた。


「その航海士がどうして、こんなところに突っ立っているんだ? おまえには危険がなさそうなのはわかるが」

『別に何の不思議もないよ。僕は君を迎えに来たんだからね。友達に頼まれて』

「友達って誰だ」

『んー、君たちが会いたがっている相手だよ。君の腰に佩いている剣の、『本物』の持ち主』


 俺だけでない、ほとんど口を挟まないで会話を聞いていた(おそらく俺と同様に”ゆかり”の声に幻惑されていたのだろう)タナたちの顔色が変わる。


「あ、あなたは敵なのですか!?」

『どうしてさ』

「私たちの戦うべき相手を友達と呼ぶ以上……」

『別に敵ではないよ。僕の友達は確かに君らの敵だけだけど、僕はあいつとは立ち位置が違う。ただ、友達だから手を貸しているだけ? それが問題あるの?』

「なっ!」

「ナオミ、やめろ。敵ではないとこいつが言うのならそれが真実なんだろ。味方でもないがな」


 俺は興奮しかけたナオミを抑えて、


「つまり、おまえは俺たちをあの〈方舟〉に乗せてくれるということでいいんだな? 俺たちを運ぶ、つまり友達を危機に陥れることも理解したうえで」

『勿論さ。……ただねえ、ちょっと驚いている』

「なにをだ」

『ひいふうみいよお……。予想以上に、生き残っているねえ。せっかく送った八脚神獣も〈城呑蛇〉もゾングもほとんど役に立っていないじゃないか! 骨折り損だよ!』


“ゆかり”は俺たちの後ろにいる、生き残りの騎士たちを指折り数えだした。

 ひどく不快な仕草だった。

 

「どういうことだ?」


 ナオミが恫喝こみで聞くと、


『どうもこうもないよ。僕の計算では、ここに来られるのは聖一郎とあと〈破滅の喇叭の吹き手〉が数名といったところのはずだったのに、なんたることだ! まったく予想を下回る出来だよ!』

「―――あの魔物たちを使役していたのはあなたなんですか、”ゆかり”殿」

『あたりまえじゃないか。あんなこの世界にはもういない連中を過去やら異世界やら引っ張ってくるなんてことが僕以外に出来る訳がないよ! それにしたって誤算だ。あと半分は削れていたはずなのに』

「おい、待てよ。騎士を減らして貴様は何をするつもりだったんだ!」

『別に。〈方舟〉の定員を超えないようにしたかっただけさ。……君と僕の友達との邂逅に必要以上の邪魔物を紛れさせたくなかったからね』


 それだけのために、あんな化け物を?

 俺をここに来させないようにするためでもなく?


『まあ、実際はそれだけでもなくて、聖一郎が手塩にかけて育てた教え子や同胞のユニコーンたちをどんどん亡くしてその気にさせるためだったんだけどね』

「……その気だと?」

『こんなことならば、もう少し大雑把にバイロンを滅ぼすなり、帝国に死病を撒き散らすなりすればよかったよ。僕の想像以上にそこの女の子たちは強かったんだねえ』


 俺は拳を握った。

 まただ。

 また、俺たちを操って自分の好きなように動かそうとする奴らがいる。

 今度は俺を怒らすためだけに、この部隊から仲間を一人一人消そうとしていたんだ。

 ふざけやがって。


『終わってしまったことは仕方ない。じゃあ、ついておいでよ。君をあの〈方舟〉に案内するからさ』


 俺は”ロジー”の馬首をめぐらせた。

 ついにこの時が来たのだ。

 話を打ち切ろうとする”ゆかり”に対して、ノンナが口を出した。


「待ってください」

『何さ?』

「あの〈方舟〉には定員があるとおっしゃいましたね? それは何人でしょうか?」

『特にはないよ。できたら、少なく収めたかったってだけ。……片道切符になりそうだしね』

「―――そういうことですか」

「そういうことさ」


 ノンナは両隣の戦友二人と頷きあう。

 

「わかりました。セスシスさん、少々お待ちください」

「どうした?」

「あなたに付き合う面子を選びます」

「ちょっと待て。あれに乗るのは、俺だけのはずだろ?」


 巨大な〈王獄〉の奥にあるという〈泥の海〉。

 そこに浮かぶ船に乗ってすべての元凶―――〈剣の王〉を操るものを斃す。

 そのために、唯一の切り札である俺を無事に〈泥の海〉まで連れていくというのがこいつらの任務だったはずだ。 

 この浜辺に辿り着いたことですべては終わる。

 作戦はそうだったはず。


「……あなただけをあんな得体のしれないものに乗せる訳にはいきません」

「ちょっと待てよ」

「そうだね。そこのお子様がセシィを罠にかけないなんて保証はないし。すべての任務を達成して、この世界を確実に救うためにはまだ足りないかな」

「タナの言う通りだ。ここまで来て、せっかくの切り札を一枚だけで手放すなんてありえん。結果を最後まで見届けるのが博打というものだろう」


 三人が口々に言うことに対し、“ゆかり”は……


『おそらくは片道切符になるとさっき言ったよね? それでもいいのかい?』


 揶揄するように言った。

 嘲笑の響きが露骨にあった。


「ああ、あんた、女にこっぴどくやられたことがないでしょ?」

『なんだって?』


 想像もしていないこと言われたのかを鼻白む。

 タナはそんな相手の対応を歯牙にもかけない。


「女が惚れた男のために暴走しようっていうのを邪魔したらどうなるか。ちょっとは知っておいた方がいいってこと」

「おまえのお友達とやらにも教えてやらないとならないな。恋する乙女がどれほど偉いのか、ということを」

「―――タナ、ナオ、あなたたちね、愚連隊じゃないんだから少しは言動に注意をしなさい。ちなみに私も同意見ではあります」

「おまえたちな……」


 俺は呆れた。

 確かに少しも考えていなかったとしたら嘘になる。

 きっとこうなるだろうなとは思っていた。

 だが、ほんとにいいのか、“ゆかり”の言う通りにあんなところについてくるのを許していいのか?

 あの〈方舟〉に乗ったら十中八九は戻ってこられないのがわかっているというのに。

 今までの〈雷霧〉などの戦場とは間違いなく違う。

 そんな戦場に仲間たちを引き連れていくのが許されることなのか。


「……強制はするなよ」


 俺の口から出たのはただそれだけだった。

 もうわかっている。

 理解していた。

 骨身に沁みていた。


 ここに至るまでの間に、タナに、ナオミに、ノンナに、クゥに、キルコに、みんなに言われていたことを。


 俺は認めなくてはならない。


「……最期まで俺に付き合えるという、物好きだけを誘うんだぞ」

「当然。あと、セシィには誓ってほしいものがあるんだけど」

「なんだ? なんでもいいぞ」


 すると、タナたちがにんまりと笑った。

 別の抜き差しならない罠に足を突っ込んだ気分になれた。


「最後の最期まであなたにつきあうことができた騎士は、セシィのお嫁さんにしてね」


 俺は色々と諦めて返事をした。

 もうやけくそだ。

 どうとでもしやがれ。


「ああ、約束する。何人だろうと構わねえ。結婚してやるよ。ただし、全員最期まで死ぬんじゃねえぞ。死んだら婚約破棄だ」


 俺の投げやりな誓いを聞いて、少女たちは黄色い声を上げた。

 あの思慮深いナオミまで。

 そして、奴らは、


「ねえ、みんなあ、聞いたあ、あのセシィがついに陥落したよお! 苦節三年以上、我々の勝利だあ!!」


 と、口々に叫んで仲間の元へと走り出していった。

 その場にとり残された俺と自称“ゆかり”だけがぽつねんと佇んでいた。


『……定命の者たちというのは、あんなに姦しいものだったっけ?』

「あいつらは結構例外だ」

『―――だよね』


 こんな得体のしれない奴と気が合いたくなどなかったな……。



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