ツンデレ屋さんごっこ
※4/23感想受け付けるをユーザーのみに設定してました。制限なしに直しました。感想下さいとか後書きに書いていたのにすいません。
「あっ、あんたのことなんか、全然好きなんかじゃないんだからね!」
「おぉ」
「かっ、勘違いしないでよね!」
「あぁ」
「ハッ、ハンバーガーにピクルスはいらないんだからね!」
「らんらんるー」
「ちょっ、ちょっとはまじめにやってよね!」
―ズガ!
「いってーな何すんだこのバカ!」
「なにって、ツンデレ屋さんごっこだよ」
「はぁ?」
突然わけのわからないことを言い出すのは、いつものことの我が幼馴染。先週までギャルゲーにハマっていたかと思うと今度は“ツンデレ屋さんごっこ”?何だそれは。
俺は不思議に思いながらも、頭に投げつけられた本を手に取る。
「『ツンデレのすべてがわかる本~これであなたもツンデレマスターだ~』何だこれは?」
「何って、ツンデレを極めるための本だよ。今、巷では空前のツンデレブーム!ツンデレを極めれば異性にモテモテってことさ!」
「ふ~ん」
興味なさげに『ツンデレ本』を眺める俺に、彼女は不満をぶーぶー言い始める。
「なに~。ツンデレに興味ないのもしかして?美少女の私がツンデレを極めることによって、ツンデレ美少女にジョブチェンジできるのに興味ないの~」
「ねぇよ。それにそれは、どちらかというとジョブチェンジではなくて、クラスアップだ。そしてさっきの“ツンデレ屋”ってのはなんだ?“屋”ってのは?」
俺の興味ないの一言と無益な突っ込みにさらにぶーぶー言いっていたが、“屋”とはなにか?と問いかけると、その大きな瞳を輝かせて話し始める。ついでにあほ毛がヒョコヒョコ動くところも愛嬌があってよし。
「“ツンデレ屋”ってのはね~。ずばり“ツンデレ”を売る店だよ!道路とかで、ツンデレ一回200円とかで売るんだ!!元でもかからないし、人気だし、おこづかいガッポガッポ間違いなし!!!」
相変わらずの突拍子のない発想に絶句する俺。ダメだこいつ。はやくなんとか……できねぇか。もう手遅れだ。
「はぁ」
そんなことは分かり切っているんだが、一応幼馴染として忠告だけはしておく。一応。
「お前なぁ。そんなのもうメイド喫茶とかでやってんだろうが。それに万が一危ない奴がいたらどうすんだ?」
「あっれ~?心配してくれるの?それともやきもちかな~?」
あぁ。神様、こいつのポジティブさをイグ〇ナの娘に分けてあげて下さい。きっとすぐに幸せになれると思うのです。俺はいつものように、首をうなだれながら大きくため息をつく。普通の人ならここで空気を読んで、「冗談だよ~」とか言ってくれるのだろう。
しかし、そこはさすがの幼馴染クオリティ。
「それにメイド喫茶なら問題ない!あんな風に猫耳だ、うさ耳だ、ヒョウ柄だ、といって無駄に多機能化している所には負けない!うちはツンデレ一本、専門職だ!さらに、秘密兵器がいるそれは~!!」
「……それは?」
「それは、YOU-!!」
このように引くどころか、有無を言わさず俺を巻き込こもうとする。
「はぁ、ふざけんなよ!何で俺がツンのちデレをしなくちゃいかんのだ!!天気か!たしかに人の気持ちは古来より天気に例えられたり……いやそれもいいんだ。とにかく!ヒョウ柄は何か違う店だ!!」
珍しく少し本気で怒りまくし立てる俺。こんなにブレスを使わず話すのは久しぶりだ。本気で嫌だし、まだ大学が始まって間もない。ここで一発ビシッとかましておけば、後々楽になるはずだ。そう思ったのだが……
「……しんぱいしてくれないの?」
その一言にまるでマンガのように石化してしまった。きっと、効果音は―ピシッで、頭のところに少しヒビが入る演出になるだろう。まぁ、とりあえず固まったということだ。
「ねぇ……僕……きみにとってはどうでもいい子なの?」
Tシャツの裾を引っ張りながら、伏し目がちに聞いてくる彼女。長いまつげの間から見える瞳が潤んでいるのがよくわかる。お前、それ反則だろ……
「……心配しないとは言ってない」
「じゃぁ、一緒にやってくれる?」
「それとこれとは、話が……わかったやります」
「やったー!!」
はぁ。高3になったぐらいからいつもこれだ。困ったら、潤んだ瞳で伏し目になって、俺が罪悪感を感じて引いたところに今度は上目づかいで追い打ちをかけてくる。しかも最近は、目を潤ませるとかの小技も覚えてきたようで、もう手がつけられん……まぁ、こんなコイツの表情見せられて、ちょっと得したと思っているうちは、きっとやられ続けるのだろう。
はぁ。俺ってやつは……
「でっ、何したらいいんだ?」
こうなってしまっては、もうこいつが飽きるまで付き合うしかるまい。覚悟は決めた。コイツのことだ。どうせすぐ飽きる。
「じゃぁ、まずは基礎編からこのポーズ!」
彼女はそう言うと、『ツンデレ本』をめくりながら動作の説明をし始める。てか、基礎編とかあんのね。それ。
「いくよー。ちゃんちゃんちゃ♪ちゃっちゃ♪ちゃんちゃんちゃ♪ちゃっちゃ♪ちゃちゃちゃちゃちゃちゃちゃちゃららららー♪」
「いや、ラジオ体操の前奏はいらんから早くしろよ。しかも音外れてるし」
「おぉ!よくわかったねー。あったりー。さすが僕の幼馴染だよ~!」
「いや、喜ぶとこじゃねぇから。いいから早くしろって」
コイツ……小学校6年間をトータルしても一回くらいしかラジオ体操来たこと無いくせに。むしろ、よく前奏を覚えていたもんだ。まぁ、俺しかわかんねぇだろうけど。
「もぉ、せっかちさんなんだから!じゃぁ、今度こそ行くよ。まず『あっ、あんたのことなんか、全然好きなんかじゃないんだからね!』からいこうか。それじゃぁ、腕を組んで、少し斜め上に顔をプイッと逸らせながら少し見下す感じで言い放つ。その時、頬を膨らませておくことを忘れてはなりません。なお、顔を逸らしながらも横目でチラチラ相手を見るようにすること。実はあなたの反応が気になっているんですということをしっかりアピールしましょう。ハイッ!」
「あっ、あんたのことなんか、全然好きなんかじゃないんだからね!」
「きゃはははははは!!かわいいよ~。Youグッドだよ~。きゃはははは!」
「お・ま・え・な~!笑うんじゃねぇよ!だいたいこれさっきお前がやってたやつじゃねぇか!!」
「そうだよ。だってこの本基礎編と応用編合わせて10ページもないんだもん。しかたないじゃん」
……やけに薄い本だとは思っていたがそういうことか。まぁいい。それならこの苦行も早く終わるってことだ。俄然やる気がでてきたぜ!!
「おっしゃ!次こいや!つぎー!!」
「おう!珍しくやる気だねぇ。じゃぁ、次はコレ『かっ、勘違いしないでよね!』。まずは腰を70度くらいにまげて、軽く背骨を逸らしつつ、上目づかいに相手をしっかり見つめがら言いましょう。そのとき、両手を腰に当てることを忘れてはいけません。もしくは、片手は相手を指さすようにしても問題ないでしょう。なお、そのときお尻をしっかりと突き出すこと。やるからには半端はいけません。」
「ぐおぉぉぉぉ!コレ思ったよりきついぞ!!」
「こら!『ぐおぉぉぉぉ』じゃなくて『かっ、勘違いしないでよね!』でしょう!ハイッ!!」
「こなくそー!!かっ、勘違いしないでよね!」
「おぉ!」
嬉しそうに目を光らせる幼馴染……めちゃくちゃ楽しそうだなコイツ。こっちはぎっくり腰にでもなるかと思ったのに。まぁいい。
「はぁー、はぁー、どうだ!!」
「いいよ!いいよ!その調子だよ!じゃあ次は早速応用編だ!!」
「おっしゃこいやー!!」
俺も徐々に調子に乗ってきた。男としての羞恥心はあったが、自分の部屋だし、見てるのもコイツだけだし、何よりコイツが嬉しそうにしてるし……こうなりゃ極めてやるぜ!ツンデレの極意ってやつをよぉー!
「いくよ!まずイスに座って、左手を膝の上に置きます。その際背筋は絶対に曲げないこと!」
「おお!」
「そして、右手をロボットダンスのロボットのように直角90度に曲げて!」
「まげてー!」
「胸を張りつつ目を見開きながらー!!」
「見開きながらーー!」
「右手も一緒に顔の方に持ってきて、ハイっ!」
「ハイ―!!」
「いらっしゃーい!!」
「いらっしゃーい!!……ん?」
「きゃははははははは!はっ!!はー!!ほんとにやったー!おなかいたいよ~」
こっ、この童顔あほ毛女!人がせっかくやる気だしったてのに……
「てめー!このやろー!!」
「きゃー。おこった!おこったー!!」
狭い部屋で暴れる二人。外では天高く昇る太陽の下、すべてのものが遍くその恩恵にあずかっている。つまりは、春爛漫。外に出ろよっていうことである。
この2人を題材に短編を書くのはこれで3回目です。もう少しキャラを深掘りして、表情を豊かにしてあげたいなーと思うのですが全然できてないっす。落ちとかももう少しきちんと考えたいのですが……精進します。
いっそのこと、今まで書いたのをまとめて書き直して、この2人を主役で不定期連載しようかなっと考えてます。今はラブコメっぽくなってますが、ほんとは分けのわからん彼女の話を意味なく議論するって話のはずだったのですが、どうしてこうなった。
とにかく、感想とうとうお待ちしているので、忌憚のない意見をお聞かせ下さいませ。よろしくお願いしまーす!