エピローグはいらないけれど羊を数えたら
眠りは浅いたちでこればかりは思春期の頃から治らない。いろいろ試したが中でもいつ誰に教わったか覚えていないが、羊が一匹、羊が二匹、羊が……という眠るまで数える方法は何度か試したが、数えることに集中しようとするあまり、返って目が冴えてきたり、雑念が入ってコメカミが痛くなったりと効果がなかった。
それを踏まえて。
先日、テレビの映像を見ていると、羊の放牧の風景が写っていて、何千頭という羊がモンゴルの草原を駆けていた。馬よりは迫力が劣るが管理人に適宜誘導されて、それは活き活きした光景だ。映像を見る限り、モンゴルの草原の生活環境の厳しさは後背に退いている。
なんでもその羊は行政のもので管理人は公務員らしい。月に一度だか、年に何度か、はっきり覚えていないが、羊を数えるそうだ。事実その映像が流れてきて、長く伸びる柵を境に一方に羊の群れがいて、ふたりの管理人が協力して一頭ずつ数え、中央の出入口から他方の区域に放たれる。一匹ずつ選んでいるのか、近くにいるのを手当たり次第に手繰り寄せているのかわからないが、数えられた羊は管理人から自由になったあと、踊るように駆け出していく。
ほほえましい。管理人は慣れた動作で機械も使わないで数えている。それは見ているだけでもう単調な作業で、しかしその中にもリズムがあり、そのまま管理人は何千頭と数えるのである。終わりのないような錯覚に陥りながら、そのまま羊を数えると眠れそうな……。
五十名弱の方、ありがとうございました。エピローグなんて要らないけれど、終了するしかない。