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神「賢者が魔法を使えるなんて、誰が決めた?」  作者: 源泉
第四章:賢者は空気が読める

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8 空気が更新されました

(村人たちに突入させていたほうがよかったのか……?

いや、彼らは火を使うつもりだったから更に状況は……)



ケンサクが回らない頭で考えるが何も解決はしない。


その時、通路内に風が吹き抜けた。

自然のものでは、ありえない流れだった。


外の入り口から入り込んだ風は、通路を一気に駆け抜け、奥の空間を巡り、再び入り口へ戻るように循環している。


まるで、この空間そのものに「流れ」を作るような、不思議な動きだった。


ケンサクの頬を、冷たい空気がかすめる。



――息が、入る。

肺の奥まで、はっきりと空気が届く感覚。


ケンサクは思わず顔を上げた。



「……これは……」



喉がひりつきながらも、声が出る。



「魔法の……風……?」



隣で、リテナが大きく息を吸い込んだ。

何度も、何度も。

まるで空気の存在を確かめるように。


女の子の父親も、荒かった呼吸が少しずつ落ち着いていく。


リテナは、もう一歩進もうとして―― その場に崩れ落ちそうになった。

だが、倒れる前に、ケンサクが腕を伸ばす。



「大丈夫か?」



支えられたリテナは、震える指先でケンサクの服を掴んだ。



「……っ、は、はぁ、なん、とか……」



途切れる声で答えた、次の瞬間。



「ケンサク〜! リテナ〜!」



明るい声とともに、光が近づいてくる。

まるで救いそのもののように、ホタルがふわりと現れた。


その光を見た瞬間、リテナの表情が崩れた。

堪えていたものが、いっきに溢れ出す。



「……っ……」



肩を震わせ、声を殺して泣く。



救えなかった過去。

今、救えた現実。


その二つが、重なり溢れる。


ホタルは二人の周りをぶんぶん飛び回る。



「なんでこんな無茶したのさ!二人とも!お父さんも!!」



光が、怒ったように明滅する。



「特にケンサク!!自分で危ないって分かってたでしょ!?

なんで、もう!!暗い地下なんて縁起も悪い、し……」



そこまで一気に言い切った、その直後。

ホタルの光が、ふっと弱まった。


そして、まるで電源が切れたみたいに、ふわりと落ちる。



「……うう、バッテリー、切れ……」


「……ホタル。結界で入り口を守ってくれてたからな、ありがとう」



小さく呟くと、ホタルはかすかに光りながら、



「……早く……おいしいものを……」



そう言って、完全に動かなくなった。

その様子に、泣いていたリテナも、思わず小さく笑った。



通路には、ホタルの微かな光だけが残る。


その光に照らされて、奥のほうに倒れている人影が、いくつも浮かび上がった。


それは間に合わなかった人たち。



(……まずは、一度、外へ)



ケンサクはその光景を、リテナの視界からそっと遮るように立ち位置を変え、背中に手を添えた。



「行こう」



リテナは黙って、うなずく。

三人は、ゆっくりと、外へ向かって歩き始めた。

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