表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
神「賢者が魔法を使えるなんて、誰が決めた?」  作者: 源泉
第四章:賢者は空気が読める

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

46/49

6 勇者がいない場所で

偶然だった。

本当に、偶然。


ゼドはこの村に、少しだけ滞在するつもりだった。

勇者に急ぎの連絡で先に向かい、



「ゆっくり戻ればいい」



と言われたからだ。



正直に言えば彼らにはあまり、関わりたくなかった。


ケンサクという存在は、ゼドにとって最初から異質だった。

頭の上に表示される《賢者》という文字は《魔法使い》のゼドの上位互換、と感じる存在だというのも関わりたくない理由の一つ。


彼の行動は、正義でも悪でもなく、

世界の流れを変えかねない違和感。


平和を守るという意味では、危険な存在だとすら思っていた。


あの村で光の祭りの夜に起きた、些細な諍いも。

いつものように、勇者へ報告するつもりだった。



――なのに。



ケンサクは、解決した。

しかも、力ではなく、言葉と知識で。


村を出たあと、魔物に森で追い詰められたゼド。

魔力を使い、逃げ続け、限界だった。


間に合ったのは――

あの賢者たちが、いたからだ。


最終的に魔物を斬ったのは勇者だった。

けれど、あの時間を稼げなければ、

自分は確実に死んでいた。


そのあと。

森を浄めるべきだと考えた勇者を、

ゼドは止めた。


なぜ止めたのか、

自分でも、よく分からなかった。


(……勇者様を信じていれば、すべて正しいはずなのに)


そして今。

ゼドは、広場の混乱を遠巻きに見ながら、

足を止められずにいた。


人の流れが、地下神殿へ向かっている。

その先頭に――

押されるように進む、見たことのある背中があった。


ケンサク。

そして、その肩に浮かぶ、小さな光。

声が、聞こえる。



「ホタル。俺が使える魔法に……風を起こす魔法はあるか?」


「あるよ……」


「でも、知ってるでしょ。詠唱した瞬間に、君は死ぬ」


「……発動は?」


「その前に、君の命が尽きる」



ゼドの胸に、引っかかるものが残った。



(……賢者、なのに?)



頭の上には、確かに《賢者》と書いてある。

なのに、魔法を使えない。


使わないのではない。

使えない。



(……僕も)



思考が、自分自身へと返ってくる。


攻撃魔法。

ゼドはそれを使えない。

使う技術はある、実際過去には使えていた。


しかし、ゼドのなかでは攻撃とは救済。

敵を倒し、場を制圧し、救うのは勇者の役目。


自分は、守られる存在。

だから――使う必要はない。


夢の中の声が、よみがえる。



『君は、救われる側でいなさい』



それは、優しかった。

安心できる言葉だった。


同時に、戦わなくていいという決定でもあった。



(……じゃあ)



もし、今ここに勇者がいなかったら?

誰も動かなかったら?


それは――

勇者がいないことを理由に、

救済のない世界を肯定することになるのではないか。



ゼドは、はっとする。


勇者の代わりになる必要はない。

同じことをする必要もない。


でも。

勇者がいなくても、救える存在にはなれるのでは。


その考えが、胸の奥で静かに形を持った。



ゼドは、走り出す。


地下へ向かう人の流れをかき分けて。

あの光を、追って。



まだ、答えは出ていない。

けれど――



このまま何もしないという選択肢だけは、

もう、選べなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ