13 ホタル砲!着弾
「……この森の狼に、こんな大きい個体がいるなんて……おかしい!」
息が荒く、喉が焼けるほど乾いている。
白いローブを土ぼこりに汚し、ゼドは乱れる呼吸を整えようと、必死に魔力を巡らせていた。
敵の脚を絡め取るような光が走り、次の瞬間には自分の体を軽くする魔法式が淡く浮かんでは消える。
それでも追いつかれる。
そして、時折かすれるように回復魔法で自分を保つ。
だが――
(……僕の体じゃ……もう限界だ……)
魔法を使いながら逃げるという行為が、体力をさらに削っていく。
足が地面を捉えられず、耳鳴りがひどい。
もう魔力の操作さえ手からこぼれ落ちそうだった。
「勇者様との集合場所からも……だいぶ遠い……まずい……」
焦りが胸を締めつける。
その瞬間、背後の魔物が地面を抉る音がした。
「……っ!」
狼の魔物が飛びかかってきた。
ゼドは咄嗟に体を丸め、腕で顔をかばおうとする。
次の瞬間―――
ピシィンッ!!
空を切り裂くような光が走った。
「……流れ星……?」
信じられないものを見るように、ゼドの瞳が揺れる。
同時に、爆ぜるような眩しさが視界を覆い、柔らかな何かが全身を包んだ。
狼の爪が光に触れた瞬間、わずかに軌道が逸れ、
ゼドの身体は地面へ投げ出されたものの――
(……痛くない……?)
光が守ってくれたような、不思議な感覚だけが残っていた。
そして、矢にしがみついたまま、光の粒となった何かが
ゼドの目の前に落ちてきた。
「ケンサク〜〜!! 次の作戦は〜〜〜!?!?」
小さな光の虫――ホタルが、涙目で叫んでいる。
「今考えてる! とりあえず時間を稼げ!!」
遠くからケンサクの声が飛ぶ。
「稼げって言うけど!!
今ので充電ほぼゼロなんだけど!?!?」
ゼドはその光景をただ見つめるしかなかった。
「……なに?これ」
さらに、弓を放ったと思われる少女――リテナの声が聞こえる。
「ケンサク、次どうするの!? あたしも動けるよ!」
「……ああ、助かる」
ケンサクが短く返す。
その声に迷いは少しもなかった。
ゼドは、ただ呆然と二人と一匹を見つめる。
(この人たちは、あの村で会った……)
息が荒いまま、胸の奥に奇妙な感覚が芽生えた。
助けられた安堵なのか、理解できない光景への困惑か――
どちらかすら、今の彼には分からなかった。




