11 むらびとたちは かんしゃしている!
夜の祭りの余韻がまだほんのり残る村に、朝の静けさが降りていた。
ケンサク、リテナ、ホタルは――
昨日助けた子どもの家の朝食の席にいた。
母親が湯気の立つスープを置きながら言う。
「ゼド様なら、夜明け前には村を出られましたよ」
「そうなんですね。朝早いんだな……」
ケンサクは頷きつつ、内心で眉を寄せる。
(勇者に報告を…って言ってたのが気になるが……。
考えても仕方ないか。今は俺たちのやることをやろう)
食事を終え、三人は祭りの片付けを手伝うことにした。
村人の一人が、柱の装飾を外しながら深く頭を下げる。
「昨日は本当に助かりました。
あのまま争いだと思われていたら……どうなっていたか」
別の村人も言葉を続ける。
「勇者様には感謝してるんです。光の化身を授けてくださったおかげで、こんな森の中でも安心して暮らせて……
でも前に、一度だけ“平和を乱した”と判断されて……」
リテナが心配そうに身をすくめる。
「そんなことが……」
ケンサクは独り言のように呟く。
「……判断が厳しいとは思う。
怖がられてるけど、そのおかげで秩序が守られてるところもあるようだし、難しいな」
昨日の争いの発端になった箇所をケンサクは見に行く。
傾いた柱の根元にしゃがみ込み、ケンサクが軽く土を押す。
「やっぱり根っこが膨らんでたんだな。
この場所は湿気が溜まりやすいんだ。また柱が押されるかもしれない。
支柱を足すか、場所を変えたほうがいい」
「祭りの準備に追われ、土の状態まで気を配れておりませんでした。
あの場ではゼド様の言葉に気圧されて何も言えず、情けない……
あなたがいてくれて本当によかった」
村人はしきりに感心し、何度も礼を述べた。
その横で、ホタルが神妙な顔で光の化身、もとい自分の以前の体を見つめていた。
「……むぅ、勝手にプレゼントされたのはムカつくけど……
役に立ってるなら……まぁ、いっか……」
リテナがくすっと笑い、ホタルの背を指でつつく。
「ホタル様の光、昨日すっごく喜ばれてたよ?
“安心して眠れる”ってみんな言ってた!」
「えっ……そ、そう?
ま、まあ……そういうの嫌いじゃないけど……!」
ホタルの光が、誇らしげにふわっと膨らんだ。
片付けが終わり、門へ向かうと、村人たちがぞろぞろとついてきた。
「本当にお世話になりました!」
「また来てくださいね!」
昨日の子どもたちが手を振りながら駆け寄ってくる。
「またあそびにきてねー!」
リテナも笑顔で手を振った。
「うん、また来るね!」
ケンサクは小さく息を吸い、森へと続く道へ歩き出す。
朝の光の中、しんと湿った森が静かに待っていた。
「さて。森の調査を再開しないとな」
三人の影が、ゆっくりと森の奥へ消えていった。




