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神「賢者が魔法を使えるなんて、誰が決めた?」  作者: 源泉
第三章:関連ワード「光」「影」——結果が揺らいでいます

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9 少年が告げる“勇者の平和”


村の入口のほうから聞こえていたざわめきが、次第に広場の熱気へと溶け込んできた。



「勇者様のお連れの魔法使い様がいらっしゃったぞ!」


「ああ、今年はゼド様がいらっしゃったんですか!」



興奮気味の声が次々とあがり、村人たちが自然と道を空け始める。


ケンサクも思わず視線を向けた。

近くの中年の村人が、誇らしげに説明してくれる。


「祭りの夜には毎年、勇者様のお仲間が来てくださるんですよ。

光の化身を覆う“最後の布”を外し、村に新しい一年の光を授ける——それが祭りの締めなんです」


「そういう役目があるのか……」



ケンサクは素直に感心する。



(こんな小さな村にまで来るなんて……勇者の一行、本気で“平和”を届けようとしてるのかもしれないな)



そう考えかけたとき——

人だかりが揺れ、白い影が中央に姿を見せた。


背は小さい。

勇者の仲間として想像していた姿よりも、ずっと幼い。


そして、ケンサクの眉が上がった。



(……見覚えがある)



前の街で、棒切れを貸してくれた少年——

あの少年が、そこにいた。


ケンサクは反射的に頭上へ視線を向ける。



──《ゼド》

──《魔法使い》



(……魔法使いか。思えばこの世界に来てから、一度も魔法を見ていないな。

俺は使えないし)


そのとき、隣からリテナの小さな息がもれた。



「……すごくきれいな子だね」



見ると、リテナはぽかんと口を開けたまま、少年を見つめている。


ケンサクも改めて観察した。



(街で会った時、普通の子どもだと思ってたけど……確かに雰囲気が違う)



光を反射して淡く輝く白金の髪。

透明感のあるミント色の瞳。

白い外套に金糸の縁取り。

胸元に揺れる小さな守り袋。



まるで光に染められたような、儚い気配をまとっていた。


ホタルがふわりとケンサクの肩へ降りる。


ケンサクがホタルを見上げるより早く、

その少年——ゼドがゆっくりこちらへ歩いてきた。


微笑みは柔らかい。

だがどこか、影を落とした静けさがあった。



「……あなたは、前の街でお会いしましたね。

はじめまして。僕はゼドといいます」



透き通るような声が響く。

ケンサクは少しだけ身構えた。



「俺はケンサク。旅をしていて、たまたまこの村に立ち寄ったところだ」



嘘は言っていないが、あえて短く答える。


ゼドは微笑みを保ったまま、まっすぐにケンサクを見つめる。



「この村には、勇者様が直接授けられた光の化身があります。

それが正しく扱われているか、村の方々が平和に過ごせているか、そして——」



淡い瞳が細められる。



「……平和を乱すものがないか。

それを確かめるために来ました」



その言葉に、ケンサクの胸がひやりと冷えた。

リテナも眉をひそめる。



「平和を乱す……って?」



ゼドは静かに、しかし絶対的な確信を持つ声で答える。



「“平和を乱す要素”があれば……勇者様に報告しなければなりません」



にぎやかな祭りの明かりの中で、

その言葉だけが異様に冷たく響いた。


ケンサクは息を飲む。

祭りの光の中に、

確かな“影”が落ち始めていた。



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