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神「賢者が魔法を使えるなんて、誰が決めた?」  作者: 源泉
第三章:関連ワード「光」「影」——結果が揺らいでいます

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5 “勇者の平和”の影



子どもの呼吸が落ち着くのを待ちながら、三人は周囲を警戒していた。

そこへ――誰かの名前を呼ぶ声が二つ、必死に近づいてくる。


その声を聞いた子どもは、ぱっと顔を上げた。



「……お父さん! お母さん!!」



その叫びと同時に、森の奥から駆けてくる気配。

泣きそうな声と足音が重なり、木々の隙間から二人の大人が飛び出してきた。


母親は子どもの姿を見た瞬間、膝から崩れ落ちるように抱きしめる。



「よかった……! よかったぁ……!」



嗚咽混じりの声が森に溶けた。



「いつのまにか、魔物にかこまれてて……でも、このお兄ちゃんたちが、たすけてくれたんだ!」



子どもが言うと、父親は肩を震わせながら深く頭を下げた。



「本当に、本当にありがとうございました……!

一人で森に行っては駄目だと言い聞かせていたのに……」



その光景を見ていたリテナの足が、ふと止まった。


安心した途端、緊張の糸が切れたように母親の腕の中で泣きじゃくる子ども。

父親の震える手。


二人の声の温かさ。



それらがどこか、リテナの胸の奥を強く締めつけた。



(……なんでかな、少しうらやましい)



忘れかけていた柔らかい温度がふっと蘇り、リテナの表情がゆっくり陰った。


その変化に、ケンサクは誰より早く気づく。



「……リテナ?」



そっと肩に手を添えると、驚いたようにリテナは瞬きをして、

「大丈夫」と笑ってみせた。


けれどその目は、ほんのわずかに潤んでいる。



「……ちょっと思い出しただけだよ。昔のこと」



無理に明るく振る舞うような声だった。

ケンサクはそれ以上は何も言わず、ただ静かに寄り添った。



母親は子どもを抱いたまま、震える声で言った。



「もし、勇者様やお仲間の方に見つかっていたら……」



父親が眉を寄せて続ける。



「“平和を乱す者”と判断されていたかもしれません」



ケンサクは眉をひそめる。


(……平和を乱す?

子どもが迷って魔物に囲まれていただけで?)



胸の奥に、冷たい違和感が静かに沈んでいく。



「……助けてくださって、本当にありがとうございました」



夫婦は深く頭を下げ、その感謝の仕草は切実だった。


三人が歩き出したとき、

後ろから小さな子どもの声が響いた。



「おねえちゃん、おにいちゃん、ありがとう!」



振り返るリテナの顔に、

先ほどの涙とは違う、少しだけ柔らかい微笑みが浮かんだ。



そして三人は、親子に礼をしたいと言われ、

彼らの村まで向かうことになった。



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