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神「賢者が魔法を使えるなんて、誰が決めた?」  作者: 源泉
第二章: 検索履歴:旅の楽しみ方/勇者 焼け跡

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24/43

9 ここからが始まり

ケンサクは街門のそばにひとり立ち、そわそわと落ち着かない時間を過ごしていた。

肩の上ではホタルが弱い光を灯しながら、なんとか話題を振ろうとしてくる。



「ねえケンサク、次はどこ行くの? 目的地!」


「いや……逆にどこに行くんだ?

某RPGなら『街に入れば自然と次の目的が決まる』ものなんだけどな」



ホタルは空中でぐねっと体をひねり、ため息みたいに光を揺らした。



「うーん……この世界はね、システム目線で言うと、もっと自由度の高い“オープンワールド”に近いよ」


「……グラ◯フ的な?」


「できればもっとこう……ゼル◯とか、ああいうのに例えてほしいなぁ。

まあ、いいけど!!」


ケンサクは肩をすくめる。



「じゃあ、今まで通り行き当たりばったりで行くってことでいいんだな」


「もっとこう……もっとこう……

――もう、それでいいけど!!」



二人の会話はいつも通りなのに、どこかぎこちない。

気を紛らわせようとしているのは、どちらも同じだった。


ケンサクの視線が、街道へと続く道に落ちる。



(……リテナ、来てくれるだろうか)



ふっと風が吹き、静かな門前に砂を転がした。


──そしてそのとき、


金色の髪が太陽の光に揺れた。



「お待たせ! ケンサク、ホタル様!」



リテナが駆けてきた。

息を弾ませながら、まっすぐにケンサクを見る。



「……あたし、一緒に行きたい!」


「本当に……来てくれるのか?」



リテナは息を整え、少しだけ胸に手を置く。



「……ケンサクと過ごした数日間ね、すごく楽しかったの。

でも、それだけじゃなくて……ケンサクが話してくれる“見てきたこと”とか“考えてること”を聞くと、

なんだか……世界がちょっと違って見えるんだ」



リテナは恥ずかしそうに笑って、でも目はまっすぐ。



「ずっと、勇者様が全部正しくて、

あたし達は守られてればいいって思ってた。

でも……今日のことを見て、

“本当かどうかは自分の目で見たい”って思ったの」



リテナの瞳に、ほんのり温かな色が混ざる。



「それにケンサクとなら……怖くても歩ける気がするの。

一緒にいたいって思ったの。……ダメ、かな?」


「……そんなわけない。心強いよ」



リテナは安心したように目を細めた。



その瞬間、ずっと弱かったホタルの光が——

ぱちん、と弾けるように強くなった。



「よーしっ!! 三人でレッツ旅路!

次の目的地は——あっち!!」


「……お前のいう『あっち』とは?」


「行けばわかる!!」



ため息をつくケンサク、元気にブンブン飛び回るホタル。


リテナが笑いながら紙袋を差し出した。



「それとこれ……ケンサクに食べてもらいたくて。昨日、宿のキッチン借りて焼いたの」



中には、村でもケンサクに焼いてくれた“ソーダブレッド”。

発酵なしで作る、リテナの家庭の味だ。



「考え事しながら作ったから……ちょっと混ぜすぎちゃったかもしれないけど」



ケンサクは袋を抱え、柔らかく笑った。



「……ありがとう。めちゃくちゃ嬉しいよ」



リテナの耳が少し赤くなった。

街門の横では、昨日と同じ門兵が声を張り上げる。



「商業都市グラディスへようこそ!」



変わらぬ調子で職務をこなしているその声を背に、三人は並んで門をくぐった。


歩き出した瞬間、ホタルがふわっと空に浮かび、前方を照らす。



「さぁ、行こう! ケンサク、リテナ!

私たちなら、きっと大丈夫だよ!たぶん!」



その声に、ケンサクもリテナも自然と笑った。

三人の影が、光の中でひとつ、またひとつと重なり合い、

新しい旅路へと伸びていった。

第二章 終わり

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