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神「賢者が魔法を使えるなんて、誰が決めた?」  作者: 源泉
第二章: 検索履歴:旅の楽しみ方/勇者 焼け跡

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6 風下に潜む答え

二つの勢力に挟まれたまま、

ケンサクは両側から突き刺さる期待と不信の視線を受けた。



「俺の意見を言う前に、少し調べる時間をくれ」



はっきりと言うと、場が一瞬しんと静まり返った。


言葉を発しないまま——

ケンサクの頭上の職業表示をちらりと確認してから、人々は静かに頷いた。


“賢者”という肩書は、

どんな発言よりも効果があるらしい。



(いや、職業は名ばかりなんだけどな……)



とはいえ、今はそれが役に立った。

ケンサクは市場から離れ、状況を整理しながら歩き始める。



「リテナは、“街道で魔物はほとんど見なくなった”って言ってたよな……」



実際、ここに来るまで魔物と遭遇したのは一度きり。

だがこの街では、毎日のように現れるらしい。

川沿いの家ばかりが被害に遭っているとも聞いた。



(……生態系のバランスが崩れた影響、って可能性もあるか)



勇者による“過剰討伐”が

どこかで歯車を狂わせていても不思議じゃない。


ケンサクはまず、人々から話を聞き始めた。


「最近の魔物の種類は?」

「いつ、どこで見た?」

「どっちの風向きの日に多い?」

「ゴミ捨て場の場所はどこだ?」

「川沿いの家の位置関係は?」



種類、時間、場所、風、匂い、生活の動線。

言われたことを頭の中で並べながら、

街の地図を思い浮かべていく。



ケンサクは市場から川沿いへ向かう途中、

路地裏に広がるゴミ捨て場の臭いに足を止めた。



(この匂い……肉の腐った臭いが強い。

魔物が反応してもおかしくない)



風は川から街へ向かって吹いている。



(風下……。

川沿いの家はちょうど“その風”を受ける位置にある)



さらに、川沿い地区の家屋を見て歩く。

被害の出た家は、どれも

“同じ方向”の壁や窓が破られていた。



(……なるほど。魔物は“匂いの流れた方向”に沿って動いてる)



市場に戻ると、肉屋からも強い匂いが流れていた。

干し肉の加工場と、ゴミ捨て場の位置が、

川沿い地区の“風下の一点”に重なっている。



(……祈りとか心じゃない。もっと単純な“問題”だ)



少しずつ、点が線になっていく。

だが、静かな観察は長く続かなかった。



「不信心からくる罰だ!!」


「祈りが足りないから守られないんだ!!」



神官たちが再び市場へ戻り、声を張り上げる。



「そんなもので魔物が減るか!!」


「祈るより、森の調査を先にしろ!!」



住民たちも負けじと怒鳴り返す。


再び空気が険悪に傾き、市場がざわりと揺れた。


ケンサクは深く息を吸い、集めた情報を頭の中で組み立てる。



(……原因を“お互い”に求めてる時点で、話がズレてる)



ケンサクは足を市場の中央へ戻し、深く息を吸った。

もう十分だった。


さて、どうやって提示するか。



ケンサクは歩き出す。

この事件の核心に、着実に近づきながら。



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