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神「賢者が魔法を使えるなんて、誰が決めた?」  作者: 源泉
第一章:【悲報】転生チュートリアルが適当すぎる【チートなし】

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2 神、創英角ポップ体で現れる


白く、無限に思える広い部屋。

そこに立つ人影がふたつ。



「ようこそ! 君を待っていたよ!」


「……え?」



ひとりは歓喜に満ち、もうひとりは戸惑っていた。



「ここは……?それに、俺は……」


「ああ、そうだね。驚くのも無理はない。

ここは私の部屋、君のいた世界の外側にある場所だよ。

君は今、記憶を失った状態でここにいる」


「世界の外側……というと、つまり俺は死んで、あの世に向かう途中ってことですか?」


「さすが、私が選んだ者だ! 理解が早い。

細かいところは違うけど、イメージとしてはほぼ正解だよ」


「それで、あなたは……神様?」


「そのとおり! まさしく神!

まあ、この空間では、見る者のイメージに合わせた姿で現れるようになっていてね。

君には、私はどんなふうに見えてる?」



誇らしげに胸を張るかのようなその姿に、彼はわずかに沈黙し、淡々と答える。



「“もしかして神?”って書かれた、白い布を被った何か、ですね」


「え?」


「フォントは創英角ポップ体です」


「よく分からないけど、すごく馬鹿にされてる気がする」


「ちなみに太字です」


「やっぱり馬鹿にされてるよね?」


「馬鹿にはしてないので、色々と説明をお願いします」



彼は、ごく淡々とした口調でそう言った。

目の前の“神”を名乗る存在は、しばし沈黙する。



「……本当に馬鹿にしてない?」


「まだ、馬鹿にするほどの情報がありませんから」



間髪入れずに返されて、神はわずかに肩を落とす。



「まあそれもそうだ。君には信じる神がいなかったからイメージがわかないだけなのだろう、うん」


「確かに、記憶もないらしいですからね」


「あ、ああそうだったよね、ごほん!」



神は咳払いでごまかすと、話題を無理やり戻した。



「まあ、それはともかく。君をここに招いたのは、私を――正確には、“私の創った世界”を助けてほしいからだ」


「神様を、助ける……?」



彼は、眉をわずかにひそめた。

突拍子もない話ではあったが、こうして目の前に不可解な存在がいる以上、まるごと否定するのも難しい。



「そう。君には、私が創った世界へ行ってもらう。

君がいた世界とは全く違う場所だ。

そして、そこで“ちょっとした手伝い”をしてほしい」


「なんで俺がそんなことを」


「君のいた世界で、“一番賢いもの”を選んで連れてきたんだ。

君になら……いや、君にしか頼めないんだ」


「“一番賢い”……なるほど。

まあ、少しくらいなら話を聞いてみましょうか」



腕を組んで視線を外すと、神はそれを合図と受け取ったのか、ぱっと白布の奥から喜びが弾けるような雰囲気を放つ。



「さすが賢い者は心が広い! 優しい! 慈悲深い!」


「……馬鹿にしましたよね?」



神は目をそらすように布に書かれた文字が歪む。



「まあともかく、君がこれから行く世界についてだ」



神が白い布をふわりと揺らしながら、改まった調子で言った。



「これまでいた世界ではない、ということでしたよね」


「その通りだ。君には記憶はないが、知識はそのままあるだろう?

向かってもらうのは、その世界とは異なる場所だ」


「異世界転生、ってやつでしょうか」


「ああ、向かうは剣と魔法の世界」



神は自信たっぷりに胸らしき場所を張った。



「王道RPGっぽい」


「そうそう! あの擬宝珠ぎぼしみたいなスライムとか出る感じのね!」


「擬宝珠……」


「うん、擬宝珠! 橋の欄干とかにあるタマネギみたいなやつ!」


「ああ、あれ……確かに似てますね」


「我ながら良い例え」



神は満足そうに頷く。



「初めからタマネギって言われたほうがピンと来そうですが」



彼の言葉は聞こえなかったかのように、神は言葉を続ける。



「……まあとにかく、君にはその世界に行ってもらう」


「はあ」



話が無理やり本筋に戻され、あらためて静かに息を吐いた。



「……それで、俺は一体何をするんですか?

魔王を倒して世界を救うとか?」



そう問いかけると、神はあっさりと首を横に振った。



「確かに世界の歪みで生まれた魔王はいたが……すでにいない」


「……え?」


「その魔王を討つために私が創った勇者が倒した」



あまりにも当然のように言われたその事実に、思考が一瞬止まる。



「じゃあ俺は一体何をすれば?」


「勇者をなんとかしてほしい」


「誰が創ったんですか?」


「私だ」


「製造者責任って知ってます?」



神は困ったようにため息をつく。



「あの子、私の言うこと全然聞いてくれなくて」


「反抗期ですか?」


「ああ、反抗期なら親の言うこと“以外”なら聞くかと思ってね。

勇者を止めるために、この世界の者たち全員にも力を与えようと思ってね」


「全員」


「いわゆるスキルとか職業っていうやつ。

まあとにかく、全員に与えるのは大変で……実はまだ終わってなくて」


「……どうやって配ってるんですか、それ」


「これ」



神がすっと床を指さす。


そこには――無限に広がる床一面に、びっしりとあみだくじが描かれていた。

見ただけで頭が痛くなるような線と文字の迷宮。

あらゆる人物の名前が交差し、重なり、渦巻いている。



「幸い、この空間は無限だからね」


「うわぁ」


「何に対する“うわぁ”なの?」


「文字がびっしりで気持ち悪いのと、ほんとにこれでやってんのかっていう、“馬鹿にしたうわぁ”です」


「正直に言うのが正しいとは限らないよ」



神は傷ついたようにつぶやく。



「とりあえず、それは置いておいて……力を与えた理由は、

勇者が力を振りかざして暴れているから、それを止めるため……ってことですね?」



神は、ふわりと布を揺らして頷く。



「まあ、流れとしては合ってる」


「流れ以外を詳しくお願いします」



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