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神「賢者が魔法を使えるなんて、誰が決めた?」  作者: 源泉
第二章: 検索履歴:旅の楽しみ方/勇者 焼け跡

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4 サポートホタルと賢者(笑)問題

ケンサクたちは宿屋に部屋を取り、この街に泊まることを決めた。


ここの食堂は夜になると酒場としても使われるらしく、

活気のあるざわつきと、肉とハーブの香りが混ざった温かい空気に満ちていた。



「わぁ……おいしそう……!」



リテナは目をきらきらさせながら席に着く。

ケンサクも腰を下ろし、目の前に並んだスープと肉料理に思わず息を漏らした。

頭上ではホタルが、店の灯りに紛れるようにふわふわ漂っている。


さっき店主に「光る虫扱い」されて捕まえられかけたとは思えないほど、

今はすっかり“変わったペット”として自然に受け入れられていた。


さっそく夕食を口に運ぶ。



「おいしい……!」



リテナがほほえむ。



「うん、たしかに」



ケンサクも頷いた。

そしてふと思い出す。



「……でも、パンだけは……リテナが作ってくれたほうがうまかったな」


「えっ……」



リテナは一瞬固まり、頬を赤く染めた。



「そ、そんなことないよ……!



ただ、ママに教えてもらったやり方で焼いてただけで……」



「いや、本当にうまかったよ。

リテナの家で食べたのも、今朝くれたのも。

材料の小麦がいいのもあるんだろうな」



リテナは照れくさそうに指を絡めた。



「……ありがとう。

ママのレシピも、パパの畑の小麦も……褒めてもらえて嬉しい。

じゃあ、また焼いてあげるね」


「楽しみにしてる」



その穏やかな空気をぶち壊すように、

向こうの席から“ふわふわ”とした足取りでホタルが戻ってきた。



「ケェンサク〜……リテナ〜……

おさけって……おいしいねぇ〜……」


「お前、酒飲んだのか」


「だって杯が近づいてきて……吸い取れって言ってる気がして……」


「絶対気のせいだろ」



ホタルはぐにゃりと輪郭をぼかしながらテーブルに落ちた。



「ふへへぇ〜……」



完全に酔っていた。



「この世界での仮の姿だもの〜、少しくらいいいじゃない〜……

だって私はあ……あ……気持ち悪い〜!!」


「うわ、ほらもう行くぞ!」



ケンサクは慌ててホタルをつまみ上げ、階段を駆け上って部屋へ戻った。



部屋に戻ると、ホタルは水で顔を洗ったようにシャキッと元に戻っていた。


リテナとは別の部屋を取ったケンサクはベッドに腰掛け、

そんなホタルにじとっとした視線を向ける。



「ふぁ……さて! 新しい能力を紹介しようじゃないか!」


「お前、飲んでたのに切り替え早いな」


「こんな姿でも神ですから!状態異常無効!!」


「ただし無効になるまで時間がかかる、と」


「まあまあ、細かいことは気にしない!」



ホタルは空中で一回転し、光を散らした。



「ケンサクのためのサポートを、いくつか追加したよ!」


「追加?」


「まずはこれ!

《軽量結界》!!」



透き通る薄膜の光がケンサクを一瞬ふわりと包んだ。



「……おお?」


「魔法攻撃は無理だけど、物理を少しだけ弾けるよ!

ただし持続時間は短い!」


「ホタルにしては珍しく便利だな。で、デメリットは?」


「軽量版だから!これを使うと私のバッテリーがすぐ切れる!」


「チャージ方法は?」


「食事をするか、生き物から吸い取るか!」


「……ホタルって、ホタルでも幼虫のほうだったりする?」


「幼虫は飛ばないでしょ!!」



声が一段大きくなった。

ホタルは気を取り直し、別の能力を見せる。



「次! 目的地の方向を光で示すやつ!」



窓の外へ向けて、小さな光の矢印をぽんと飛ばした。



「おお……これは普通に便利だな」


「でしょ!

あとね、ケンサクのステータス自動ログ!

体調も疲れも、だいたいわかる!」


「それはちょっと恥ずかしい」


「周囲の魔力も感じられるんだよ!

ほら、この宿屋の下……虫、めちゃ溜まってる」


「言わなくていいことを言うんじゃない!!」



ホタルは誇らしげに光を膨らませた。



「どう? ケンサクのために強化してきたんだ!」


「……正直、助かる」



ケンサクが素直に言うと、ホタルは嬉しそうに跳ねた。



「勇者には色々持たせてあげたのに、ケンサクには何も渡さず行かせちゃったからね。反省した!」


「なら遠慮なく……相談なんだけど」


「なになに?」


「名前はともかく……職業が丸見えなの、なんとかならないのか?」



ケンサクは自分の頭を指さす。

ホタルがきょとんとする。


「リテナは“マナーだから勝手に見るのは失礼”って言ってたけどさ……

他人から丸見えってのは、抵抗がある。特に俺は」


「う~ん……この世界全員の共通仕様だからね~。

空の色変えるくらいには難しい」



ホタルは一度悩んでから、ぴかっと点滅した。



「あ! “追加メッセージ”なら足せるよ!」


「追加?」


「例えば——

《賢者(笑)》!!」


「おい」


「じゃあ《賢者かな?》!」


「悪化してるだろ!」


「じゃあ《賢者(仮)》!」


「それもやめろ!!」



ホタルはふわーっと笑い、光をころころ揺らす。



「おいお前、まだ酔ってるだろ!

今からこの宿の下の虫のところに連れてってやる!」


「ひゃ〜! 逃げろー!!」



廊下に響く騒がしい声。

それを聞きながら、隣の部屋のリテナはくすりと微笑んだ。



「……ホタル様とケンサク、なんだか楽しそう」



街の喧騒とは違う、静かで温かい夜の気配が、宿屋の二階に満ちていた。

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