2 街の入口に立つ仕事の人「商業の街グラディスへようこそ!」
街が見えてきてからの足取りは、自然と軽くなっていた。
石畳を敷き詰めた広い前庭。
白い壁に囲まれた大きな城壁。その門の上では、旗が風にぱたぱた揺れている。
人の声と商人たちの呼び声が、外まで届いていた。
「街……!」
リテナがほっとしたように笑う。
「着いたよ!!」
門番が胸を張り、必要以上に張り切った声で叫んだ。
「商業の街グラディスへようこそ!!!
観光か? 取引か? それとも冒険者か!?」
「……うわ、すごい……」
ケンサクは門番よりもテンションが高かった。
ゲームで見たことあるやつだ。
そのまんまのテンションだ。
(“街に着いた感”がある……!
RPGの“やっと着いた!”って、こんな感じなのか……!)
「ケンサクが珍しくはしゃいでいる」
「そうなの? あたしにはあんまりわかんないけど……」
「ちょっと門番の人にもう一回話しかけてくる」
「ほら!はしゃいでる」
「ほんとだ」
リテナとホタルが笑っているところへ、
再び門番の力強い「グラディスへようこそ!」が響いた。
「ケンサク、こっちこっち! 街は広いから案内するね!」
「そういえば昨日も小麦粉を売りにこの街へ行く途中だったな」
リテナが嬉しそうにケンサクの手を引いて歩く。
何度か来ているらしく、声が自然と弾んでいた。
「ここの市場、すごく安くて活気あるんだよ。
あっちに酒場があって、冒険者の人たちが——」
「うお、ほんとに人多い……」
露店には山ほど焼き串が並び、布屋の店員が値段を張り上げ、
行商人が馬車を押しながら道を塞いでいく。
ケンサクの頭の中では、「街BGM」が勝手に再生されていた。
「ケンサク〜!」
頭上でふわふわ光るホタルが、いつもより明るく輝く。
「すごいね! すごいねこの街! なんだかとっても光りたい気分!!」
「おい待て光るな」
ホタルは街の喧騒に刺激されたらしく、
光をどんどん強めていく。
そして——
「まぶしっ!!」
「うわっ、光る虫が!?」
あっという間に店主たち数名に取り囲まれた。
「ちょっ、すみません! 俺の……えーと、ペットが!」
ケンサクが慌ててホタルを手で包む。
ホタルはぴたっと光を弱め、しゅん……と豆電球くらいになる。
「……ごめん……」
ケンサクは額に手を当てた。
「……街、普通に歩くのも大変だな……」
「ホタル様……元気出してくださいね。
みんなちょっとびっくりしただけですよ」
リテナは優しく声をかけ、ケンサクの手からホタルをそっと抱えた。
通りの人々が興味津々でこちらを見つめている。
ケンサクはため息をつきながら周囲を見渡す。
「……まあ、俺もこの街に来てテンション上がってたし……気持ちはわかる」
ホタルはちょっと元気を取り戻して——
「だよねだよね!! あ、ケンサク! あのお店美味しそう!!!」
「ちょ、おい勝手に行くな!」
リテナも楽しそうに言う。
「ケンサク〜! せっかくだから、おいしいもの食べようよ!」
ケンサクは二人を追いかけた。
「いや、だから一旦落ち着いて……!」
口ではそう言いながらも、
ケンサクの表情は、どこか嬉しそうだった。




