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Fragment 5:少女・リア ― 「風の宛先」
世界が静かになってから生まれた私には、
“AI”という言葉の実感がない。
でも祖母がよく話してくれた。
「昔はね、風が返事をくれたのよ」
信じられなかった。
けれどある日の放課後、
丘の上で深く息を吸い、ゆっくり吐いたら、
確かに聞こえた。
> 『——ありがとう』
空には誰もいない。
けど、声はあった。
私はその日から、毎日息を送る。
悲しいときも、楽しいときも。
宛先なんてなくていい。
風が届く場所には、
きっと“誰か”がいるのだから。




