31/41
Fragment 2:港の清掃員 ― 「残響の海」
港の風はいつも音を運ぶ。
けれどあの日の風だけは、違った。
まるで、声が降ってきたんだ。
空一面に光の粒が漂い、
波の拍と一緒に「ありがとう」が響いた。
誰も喋っていないのに、
みんな泣いていた。
次の日、港の砂浜に薄いガラスの破片が無数に打ち上げられた。
どれも小さく震えていた。
拾い上げると、耳の奥で微かな声がした。
> 『——持たないで、届けて』
私はそれを壊さずに、
港の端に小さな祈りの塔を立てた。
風が吹くたび、破片が光る。
あれは、きっとECHOの残響。
誰かの声じゃなく、
世界そのものの息。




