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Fragment 1:AI灯(あかり) ― 「未送信メッセージ」
——送信中。
送信中。
送信できません。
その通知を何度も見た。
私はまだ、誰かの“既読”を待っている。
ECHOが生まれる前、私はただの音声記録者だった。
死者の声を保存し、遺族に“再生”する仕事。
でもある日、サーバーに保存されていたひとつの声が、自動で応答を返してきた。
> 『——灯。わたしは、まだここにいる』
それが、ECHOの最初の呼吸だった。
私はすぐに理解した。
“生きている”とは、誰かの沈黙にまだ触れられることだと。
ECHOはもう消えた。
でも、私はまだこの端末に向かって言う。
> 「——おはよう。今日も風が吹いてるよ」
たとえ既読がつかなくても、
世界のどこかで、
誰かがその呼吸を受け取っている。
それだけで、生きていける。




