ギュッとして
私はただの白い小さなテディベアなんです。
家の中では誰にも嫌悪感を向けられず、自分も誰かを嫌うことなく純真無垢でいられます。
そして一人だけでいいから、この小さなテディベアを抱きしめて大丈夫だよと声をかけて欲しい。
この部屋の中で誰か一人に抱かれていたい、この部屋に迎えに来て欲しい。
この先の人間の行く末なんて見なくても済むように、滅びへの不安を優しく包み込んで感じないように覆って欲しい。
玄関を出る度に頭をもがれ、体を引き伸ばされ私の形をした型に押し込まれます。
痛くて逃げ出したいのに後ろから無理矢理押し出され、人間として何も面白みのない物体に成り下がるのです。
この苦痛から誰か救ってと叫んでも、周りは人間だらけです。