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ニエ=ファンデ

機械人形と小鳥の他愛ない日々

作者: リィズ・ブランディシュカ



 気がついたら、ひとりぼっちだった。


 さびしくて、かなしい。


 でも涙を流す事はできない。


 生きていない。


 それどころか、完璧な物ですらない。


 欠けている。なおらない。


 どこかおかしい。狂っている。


 壊れている。


 そんな機械人形がワタシ。




 だからなのか。


 ワタシは、


 記憶もなく町中に倒れていた。


 覚えている事は。


 何もない。


 意識は、倒れていた時から始まっているのみで。


 今のワタシが、前のワタシとどれくらい違うのか、同じなのか分からない。


 どうしてそうなったの?


 たった一つ。


 唯一。


 判明したのは。


 わかるのは名前だけ。





 壊れたまま。


 行く当ても知らぬまま。


 あてもなくさまようけれど。


 記憶は一向に戻らないまま。


 町の通りにはたくさんの人がいた。


 一人で歩く者。


 二人で歩く者。


 大勢で歩く者。


 でも。


 けれどワタシは機械人形だからうまくとけこめない。


 友達がほしい。


 ぼんやりとそう思っていたワタシは、ずっと一人で生きていくのだと、思っていた。


 ワタシみたいな機械人形はなぜか一体も見つからなかったから。


 何も知らなくても、そう思うのは、自然な事だっただろう。








 でも、ある日私に友達ができた。


 小さな白い小鳥。


 きれいな歌声を披露してくれる、歌が好きな小鳥だ。


 触れれば壊れてしまいそう。


 でもたくさんの命のエネルギーを秘めている。


 とても力強い生物。


 お腹がすいていた状態で小枝にとまって休んでいた。


 だから、機械のワタシには必要ないーーどこかで拾ったパンをあげて、仲良くなった。







 それからワタシ達はいつも一緒だった。


 一緒に木の実を探したり、羽繕いをしたりした。


 白くて小さくて歌上手。


 そんな小さな友達といる時間はとても楽しくて、素晴らしいものだった。


 たった一人だった頃には味わえなかったたくさんの幸せがそこにあった。


 このままずっと一緒にいられたら。


 幸せだろう。


 幸せは分からないけれど。


 なんとなくこれが幸せなのだろうとは思った。


 だからこの小さな友達といられるそれが幸せなら、ずっとそうありますように。


 そう願ったけれど。






 そんな日々が奪われるのは、そう遠くない日の事だった。


 ワタシの小鳥も、まだ、それを知らない。




 

 知らないから、幸福を願う日々はーー慰めの様に、きっとまぶしく輝いていたのだった。




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