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5 公爵邸での晩餐会



夕日もすっかり落ちはじめた時間まで、私はお母様に膝枕をしてもらって寝てしまっていた。


「リユー起きて?」


お母様に優しく起こされて、ぼーっとしているとお腹がぐーっとなる。


「あれだけ動いたものね。

夕食の時間だから向かいましょう」


私は目をコシコシとこすってお母様の手を握った。

公爵邸のダイニングルームまで手を引かれて歩いた。




公爵邸のダイニングルームに入ると、私に気づいたベルが私の元までやってきてくれた。

その後ろをお父様が歩いてくる。


「さぁ奥様。席までエスコートを」


腕を差し出すお父様にお母様は

「まぁ」

と言いながら頬を染めお父様の腕に手を置く。


お母様がお姫様のように見える。

頬が少し熱くなるのを感じながら、お父様とお母様を見ている。

すると私の手を取り顔を真っ赤にしたベルが勢いよく口を開く。


「リユーものすごくかわいい!

リユーは俺……僕がエスコートさせていただきます!」


ベルの言葉に顔が一気に熱くなるのを感じながら、お母様の真似をして、ベルの腕に手を添える。

お父様とお母様が私たちを見てクスクスと笑っていた。


「リユーすごく似合うぞ!

かわいい俺の姫が更にかわいくなった」


お父様に褒められて、わたしは満面の笑みでお父様を見た。


「俺が先に言ったのに!

父上ずるい!」


怒るベルをなだめながら席に着いた。

私はベルとアリアに挟まれた席だ。


「さぁ自己紹介は食事を楽しみながらにしようか」


公爵様らしき真っ黒な髪の綺麗な男の人が言ったのを合図に、料理が運び込まれてきた。

食事の合間に先ほどの公爵様らしき男の人が話し出した。




「それじゃぁ少し自己紹介をするね」


優しく微笑みながら言ってくれたので、私は頷きつつそちらを向く。


「僕はジョエル。

こう見えても元王子様なんだよ。

今はこの公爵家の主だよ。

ジョエルおじ様って呼んでくれると嬉しいな。

そしてこちらはさっき一緒だったよね。

僕の奥さんのアイラ。その隣がアリア」



元王子という言葉にびっくりしてジョエルおじ様を見れば面白そうに笑っていた。

そして、おば様とアイラを紹介してくれて、二人は私に微笑んでくれたので私も微笑みを返した。


そして次はおじ様は左手を出して続ける。


「こちらは僕たちの息子アルヴィン。

ミハエルと同い年だ」


「アルヴィンだよ。

ミハエルが可愛い妹ができたって言うからね。

君に会うのを楽しみにしてたんだ。

よければ私の事はアル兄様と呼んで?

アリアもそう呼ぶんだよ?」


キラキラしたアイラおば様と同じ銀髪で、ジョエルおじ様にそっくりの笑顔を私に向けてくれる。


「よろしくお願いします。ジョエルおじ様、アル兄様」

と微笑みながら答えた。



次はお父様が私の紹介をしてくれる番だ。


「じゃあ、我が家の新しい姫を紹介するな。

名前はリユー。

うちのエルとアリア嬢と同い年だな。

今日はアイラに可愛がってもらったみたいで?」


ニヤっと私を見ながら言うお父様に私は頬を膨らまして反論した。


「お父様!!

そのニヤっと顔やめてください!!

……リユーです。

よろしくお願いします」


恥ずかしくなって少し小声になったけれど、なんとか自分の名前を言うことができた。

全員が楽しそうに笑うので、私も面白くなって一緒に笑ってしまった。




「ところでリユーちゃんは食事のマナーはどこで覚えたんだい?」


ふと思ったように私がフォークとナイフを扱うのを見ながらエルおじ様に聞かれる。


「お母様に習いました」


そう言うとびっくりしたようにお母様を見ておじ様が問う。



「孤児院から引き取ったのは数週間前だよね?」


「そうですわ。

その数週間でここまでできるようになるなんて、私もびっくりしるの」


「リユーちゃんは人の動作を見て覚えるのが得意よ」


ワインを飲みながら、なんともない風にアイラおば様がつけたす。


「そんなつもりじゃなかったんだがな……」


お父様が苦笑しながら言う意味が分からずコテンと首をかしげる。


「エル。

後で、歓談室でゆっくり話しましょう。

まずはご飯を食べてからね」


ウインクしながらいうアイラおば様。


そんなおば様を見て照れて、顔を赤くしながら

「わかった」

とジョエルおじ様が返事をした。






夕食を食べ終わり、公爵邸の歓談室に全員で移動する。

歓談室で、大人はお酒を、私たちはカモミールティーを準備してもらう。


私はお父様とお母様に挟まれて、おじ様とおば様の正面に座る。

私以外の子供たちは各々好きな場所に座るようだ。



「さぁ。それではこの公爵家の秘密と国の秘密でも教えようか」



ジョエルおじ様の言葉に固まった。

そんな軽い感じで、そんな大きな秘密を聞くことになるとは思わなかった。



「まぁそんなに固まらなくて大丈夫だ」


「そうよ。大丈夫。力を抜いて」



お父様が私の背中を大きな手で優しく撫でてくれる。

お母様が私の手を優しく握ってくれ、私は体の力をゆっくり抜いた。


「今知らなくてもサウス邸に居る限り、知る事だからね」



そう言って話された内容に私は納得半分、動揺半分だった。


公爵家は、ずっと昔から国の隠密として裏で国を支える家だそうだ。

ジョエルおじ様が公爵として、そして隠密部隊の主として様々な公にできない問題を解決しているらしい。

そして、その隠密部隊はカラスと呼ばれ、おじ様はカラスの主と呼ばれている。



カラスには大まかに分けて6部隊に分けられる。


お父様が部隊長の『護りのカラス』は秘密裏に要人の護衛をする部隊。


お母様が所属する『青のカラス』は貴族の中で主に情報収集をする部隊。


今日、訓練場で出会ったおじさんたちのような『茶色のカラス』は市井に紛れ込んで情報収集をする部隊。


私に色々教えてくれていたのは『茶色のカラス』のおじさんだったらしい。

下町や貧民街の孤児で私のように見込みがあるものを、公爵家経営の孤児院に連れて行く役割もある。



もちろん関係のない普通の孤児もいるそうだ。

私がお父様に見つけられたのは完全に偶然だったと、お父様が必死になって私に言うので思わず笑ってしまった。

私みたいにいきなり引き取ってもらうことは稀だそうだ。



院長や職員さんもカラスで、彼らが見込んだものを13歳ころにテストを受けさせる。

その後、カラスとなるかどうか見極める。

だから、私の孤児院で出会った子供でもほとんどの者が、ごく普通に仕事を見つけ大人になると聞いて少し安心した。



「ここまで半分説明したけれど大丈夫かな?」



私にもわかりやすいように説明してもらったので理解できているはず。

頷きつつも私はおじ様に尋ねた。



「おじ様?

じゃぁ私に色々教えてくれた……。

あのおじさんにまた会えますか?」


私は話を聞いてあのおじさんにまた会いたくなった。


「いいよ。調べておくね。

でも茶色のカラスは人数が多いからちょっと時間をもらうね」



私はコクンと頷いて、おじさまに続きをお願いした。



この屋敷やサウス邸の警備をしている騎士服を着ている騎士たちもカラスらしい。

『片付けカラス』と呼ばれて事件を公にできるように工作する部隊だそうだ。


あまり詳しく話してもらえなかったが、大人の女の人たちだけの部隊で『花のカラス』というものもあるそうだ。


『伝令カラス』と言って、今日ベルと一緒に居たお兄さんが、そうらしい。

鳥の鴉を従わせ、指令やカラス同士の秘密の連絡に使われるカラスもいる。


カラスの最高峰の『漆黒のカラス』という部隊。

カラスとなるものは一般の人より戦闘はできる。

しかしそれと比にならない戦闘能力を持つ。

そしてカラス同士でも素顔を知らない部隊だそうだ。



「これで一応カラスの部隊の説明をしたけれど何か質問はあるかい?」


「みんなもカラスなの?」


私は子供たちの方に向かって言った。


「私は次期カラスの主候補だよ。

だからちょっと特別かな?」


アル兄様が教えてくれる。


「僕たちはまだひなカラスなんだよ。

一人前ではなくて教育係について勉強中なんだ。

僕はアルの右腕で護りのカラスになるために、父上について勉強をしているよ」


ミハエルお兄様がお父様を見ながら言ってくれた。

お父様も嬉しそうにミハエルお兄様を見ている。


「私は青のカラスの勉強をミレッタおば様から受けているわよ。

戦闘訓練は苦手なの……」


アリアの青のカラスは納得だ。

公爵令嬢としていろんなお茶会に参加しているらしく、本人もお茶会が好きだそうだ。


「俺は……」


言いよどむベルにお父様が

「ゆっくりでいいんだよ」

と優しく声をかける。



「俺は……伝令カラスにも護りのカラスにもなりたい!!」



意を決したように立ち上がって宣言するベルに、おじ様が優しく微笑みながら言う。



「別に一つの部隊に絶対所属しないといけないわけじゃないよ。

伝令カラスを扱いながら、護りのカラスになればいいよ。

その分、訓練は大変になるけどね。

アーロンの息子だし大丈夫だろう。

今もクリスに教えてもらっているんだろう?」



ベルは

「頑張ります!」

と力強く返事をした。



私はさらに疑問に思った事を口にする。


「あれ? アイラおばさまは?」


ギクリと肩を震わせたおば様を不思議そうに見ていると、気まずそうに話し始めた。



「えっとね……私は……。

一応青のカラスの長なんだけど、実質はミレッタが長の仕事をしてくれているの。

私は社交が苦手でね……。

ニコニコ座っていることはできるんだけど……」


悩まし気に頬に手をあてて

「ほぅ…」

とため息をおば様がつく。


おじ様が笑いながらおば様の手を握って口を開く。




「アイラは唯一無二の戦闘狂カラス姫なんだよ」




おじさまの言葉にぽかんとした。



「戦闘狂??」



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