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33 誓い



それからベルと二人で西広場に移動していろいろと見て回った。

時間的に北広場で花祭りのダンスが始まる時間だった。

それに向かうと思っているとベルに声を掛けられる。


「リユー。

今日はダンスには参加しないでリユーを連れて行きたい場所があるんだけれどいい?」


「もちろんいいよ。

花祭りのダンスはまたいつでも参加できるし」


そう答えるとベルは私の手を引き、北広場とは反対の噴水広場に向かっていった。




噴水広場で再び馬を受け取り二人で馬に乗る。

どこに行くかは教えてくれなかった。


「ねぇ。ベルどこに向かっているの?」


「ついてからのお楽しみだ」


そう返事するベルの表情は少し硬くなっているように見えた。

花祭りに向かうときと同様に私のお腹に回った腕が時々ぎゅっと力が入る。


そのたびにベルを見るけれど、朝とは違いベルとは目が合わなかった。

真剣な表情で前を見据えるその表情は何か覚悟を決めたような表情だった。





ベルに連れて来られたのは過去に一度だけ来たことのある崖の上だった。

草原が広がっていて下には大きな川が流れている。



「なんでここを……知っているの?」


「昔、リユーを孤児院に連れて行ったおじさん覚えているか?

その人に……その茶色のカラスに教えてもらったんだ」


私がまだ、ばぁちゃんと暮らしている時に護身術を教えてくれていた人がカラスだと公爵邸に初めて行った時に教えてもらっていた。


そしてその後すぐに訓練場でそのおじさんと再会したことは覚えている。

おじさんは驚きながらも嬉しそうに、そしてあの頃と同じように私の頭をガシガシと撫でてくれたのを覚えている。




ばぁちゃんを亡くして火葬した後、その骨をばぁちゃんの希望通りこの崖から下の大きな川にまいた。



ばぁちゃんは昔から海を見たかったそうで

『もしばぁちゃんが死んだら川から骨をまいておくれ。

いつか海にたどりつけるから』

とずっと言われていた。



ばぁちゃんの希望通り、おじさんにお願いして一度だけここに来てばぁちゃんの骨を崖からまいた。

貧民街のどぶ川よりこんな綺麗な場所からばぁちゃんを送り出せた事が嬉しかった……。

いつかまた来たいと思いながらもどんどんと年月が経ってしまっていた。


「リユーがおばあさんをずっと大切に想ってきたことは知っている。

だからここでどうしても伝えたいことが会ったんだ」


真剣な面持ちで話すベルを私も見つめ返す。

ベルは片膝をついて私の手を取る。




「リユー・サウス。

君を飾る花輪の通り、俺の恋を信じてくれ。

そして死んでもリユーから離れないことを誓う。

だから俺と結婚してほしい」




私の目から涙がぽろぽろと零れ落ちる。

私の頬をやわらかな風が撫でる。


「……私も……死んでもベルから離れない。

私の恋を信じて……」


私の返事にベルは勢いよく立ち上がり、思いっきり私を抱きしめる。

私もベルの体に自分の腕を回す。



その時、再び優しい風が吹き抜けていったことで私の涙はまたこぼれた。



しばらくそうして二人で抱き合って言ううちに私の涙も止まっていた。

すこし体を離しお互い見つめ合うようにするとベルが私に話しかける。


「リユー。

俺は恋人では我慢できないんだ……。

……俺と婚約してくれないか?」


私は少し驚きつつもコクリと頷いた。

ベルは嬉しそうに微笑んで私の額にキスを落としてくれる。

そして片手で私の顎をとらえて親指で私の唇をぬぐうように触る。

ベルのその仕草に私の体が思わずびくりと跳ねる。


そんな私を見て微笑みながら

「ここは婚約できるまで取っておこう」とささやいた。



2人で馬を繋いだところに戻ろうと歩き出す。

私は少し振り返り心の中で呟いた。



『ばぁちゃん大好きだよ。私、今すっごく幸せだよ』



またやわらかな風が吹き抜けていった。





馬に乗りそのまま二人で屋敷に戻った。

そのころには外はベルの髪の色のような真っ赤な色に染まっていた。


屋敷に戻りベルは私の手を繋いだまま、ずんずんと歩いていく。

私はどこに向かっているのか分からず、とりあえずベルについていくことにした。


ベルがノックをした部屋はお父様の執務室だった。

なぜお父様に会いに来たか分からなかったが入室してお父様にベルが言った言葉で理解した。


「父上!!

リユーと婚約させてください!!

リユーを俺に下さい!!」


勢いよくお父様に頭を下げるベルにお父様は威圧を含めて言い放つ。


「リユーはお前にやらん!! 俺を父上と呼ぶには早い!!」


お父様の言葉に私は意味が分からなくて唖然とする。

すると横から冷静な声が聞こえてきた。


「おじ様。

そもそもベルはあなたの息子ですし、もう15年もずっとあなたを父上と呼んでいますよ。

それにリユーはそもそもこの家の子ですし、やるもやらないもないでしょう」


うんざりしながら言うのはアルヴィン兄様だった。


「分かっている。

一度言ってみたかっただけだ。

今日は良いことがたくさんだな」


そう言いながら声を上げて笑い出すお父様。

そんなお父様の代わりにアルお兄様が説明してくれる。


「今日アリアとミハエルの婚約が決まった。

今その書類をアーロンおじさまに私が届けにきたんだ。

ベルとリユーもおめでとう。

今日の夜、公爵邸で身内だけのミハエルとアリアの婚約パーティーを急遽することになったんだが……。

今から急ぎ戻って、ベルとリユーの婚約も合同で祝う準備をしなきゃだな」


そう言って書類をお父様から受け取ってアル兄様は部屋から出ていく。




お父様がお母様を呼び4人でお父様の執務室のソファに座る。


婚約の事をお母様にも伝えると、お母様は涙を流して喜んでくれた。


「リユーは養子だし。

孤児院にいたことも書類で証明されているから問題なく二人は婚約できる」


「私の可愛い子供たちが同じ日に一斉に幸せになるなんてすごくうれしいわぁ」


「ありがとうございます」「ありがとうお父様。お母様」


「ねぇアーロン。二人の手首を見て?」


お母様はそう言いながら自身の左手首を撫でていた。

お父様が私とベルの手首を見て嬉しそうに微笑みお母様の左手を取る。

お母様の手首にキラキラと光る私とよく似たブレスレットに軽く口づけを落とす。


「お前たちも……良く似合っているよ」

お父様の優しい声を聞いて私たちはお互いの手をしっかり握り顔を合わせて微笑んだ。


そんな私たちを見て2人が嬉しそうに微笑んでくれることに胸が熱くなった。

それからお母様が急に涙を引っ込めて勢いよく言う。


「さぁ! 公爵邸のパーティーの準備を張り切るわよ!」


そう言って私の手を引いて部屋に向かっていった。




お母様に拉致された後、部屋に入ればトルソーに真っ赤なドレス。

ドレスの裾にはアイビーが緑の糸で刺繍されていた。


「お母様……これ……」


「あなたたちがグロリアに行っている間に私が注文していたの。

娘の婚約式と結婚式のドレスはどうしても私が準備したかったの。

気に入ってくれた?」


せっかく止まっていた涙が再び零れ落ちる。

そんな私を見てお母様は優しく抱きしめて言ってくれる。


「私の自慢の息子だから安心して大事にされなさい」



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