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3 初めての公爵邸



新しい家族のもとで生活を始めて数週間が経った。


毎日、お母様とご飯を作ったり、お兄様に勉強を教えてもらったり、ベルと一緒になってサウス邸の庭で走り回ったりした。


お父様が毎日、私に何着も洋服を買って帰る。

それをお母様に怒られて、次の日からはリボンになってみんなで大笑いした。



ある日、いつも仕事の時間のお父様が昼間に帰ってきた。

普段、お父様が居ない時間に帰ってきたことで、私たちは大はしゃぎながら昼食に向かった。


昼食の席でお父様が改まった様子で口を開いた。



「今日はミレッタとアイラのお茶会に、リユーも連れて来るようにということだ。

エルと坊ちゃんも顔を出すらしいし、嬢ちゃんもアイラに同席するらしい」


「まぁそうなの!? リユーがアリアちゃんと仲良くなれれば嬉しいわぁ」



私はお父様とお母様の話の意味が分からなくて首を傾げた。

それに気づいたお母様が私の方を向いて説明をしてくれた。



「アイラはね公爵夫人なのよ。

アリアちゃんはアイラの娘でリユーの同い年なの」


「そうだ。

エルはジョエル様といって公爵様だ。

長男はアルヴィンでうちのミハエルと同い年だな」


「お父様とお母様は公爵様たちと仲良しなの?」



私の質問に嬉しそうに

「ええ」「ああ」と返事をする。


私もお父様とお母様達みたいに仲良くなれればいいなぁと思う。



「僕はアルと公爵様に勉強を見てもらう約束しているんだ。

だから後でリユーたちのお茶会に行くよ」


「俺はリユーを守らないといけないから母上についていくからな!」



ミハエルは優しく言い、ベルは張り切って宣言する。

しかしお母様がベルに向かって言う。



「あら?

ベルはアイラの侍従のクリストファー様が鴉の扱いを見せてくださるそうだけど……」



ベルがハッとして私とお母様を見比べる。



「ベル。私は大丈夫だよ」

と言うとあっさりベルは頷いた。





兄さまとベルと母様と4人で馬車に乗り込む。

窓から馬に乗るお父様に手を振るのに忙しくしていると、あっという間に公爵邸に着いた。


初めて見た公爵邸はお城かと思うくらい大きくて、私はポカンと開けた口をなかなか閉じることができなかった。


公爵邸に到着すると、みんなと別れて、私はお母様に手を繋がれて庭園に向かって歩く。

今まで見たことも無いような世界に、きょろきょろとしながら向かう。


すると庭園の先にあるテーブルのそばで女神さまと妖精が遊んでいた。


お母様の足にくっついて女神さまと妖精の前に行く。

私はお母様のスカートをクイクイと引く。


「お母様、女神さまと妖精がいるわ」


お母様が「ふふふ」と笑う。


私の声が聞こえたのか、女神さまと妖精が私に近づいてくる。

それに気づき私は緊張のあまり固まってしまう。


「私はアイラよ。

女神さまじゃなくてごめんなさい。

アイラおば様って呼んでね?」


「妖精って私の事?

嬉しいわ。私はアリアよ。よろしくね」


お母様が私の背をそっと押して合図をしてくれたので

お母様に教えてもらってたくさん練習した淑女の礼をしながら

「リユーです。アイラおば様、アリア様、よろしくお願いいたします。」

というと私よりも綺麗な礼を返してくれた。




アリア様に手を引かれてテーブルに座る。

テーブルには見たこともない、可愛いお菓子がたくさんあった。

アリア様に勧められて、かわいいピンクのマカロンをかじる。


「おいしい!」


「そうでしょ?

うちのお菓子はすごくおいしいって貴族の中では有名なのよ」


「アリア様は綺麗な髪だね」


私は見たことないアリア様の綺麗な髪の色に目を奪われる。


「そうでしょ?

黒いのにここだけお母様の銀色なの」


前髪の一部だけ引っ張りながら言う。

ミハエルお兄様も真っ赤な中に一部だけ金色の部分がある。


「なんだか兄様みたいね」


そういうとアリア様は顔を真っ赤にしながら私の耳に近寄り囁く。



「あのね、リユーにだけ教えるわね。

私ミハエル様が好きなの。秘密よ」



顔を真っ赤にしながら、唇に人差し指をあてて言うアリア様がものすごくかわいかった。

ふたりでクスクス笑っていると、ふと「ブーン」という音がして体が無意識に警戒態勢になる。


その私の雰囲気に気づいて

「どうしたの?」

と不安そうになるアリア様の手をグイっと自分の方に寄せる。


バランスを崩して私にもたれかかったアリアを抱きしめて音の方にフォークを突き立てた。



音は無くなったが私はハッとしてお母様を見た。

アイラおば様が私の手にあるフォークをメイドに手渡し頭を撫でてくれる。


「アリアを守ってくれたのね。ありがとう」


私は怒られると思って固くなっていた体の力をゆっくりと抜く。


「フォーク汚しちゃってごめんなさい」


そういうとお母様も私の手を繋ぐ。

そして逆の手をアリア様が握ってくれる。


アリア様を見るとキラキラした目で私を見ていた。

「リユーは私のお母様みたい!!!」

そう言ってはしゃぎだす。



「あら。確かに。アルヴィンはエルに似ちゃったし。

アリアはミレッタやお義母様みたいなのよね……。

ねぇミレッタ?」


「もう。こんなに早くばれちゃうなんて。

じゃぁ訓練場に行きましょうか」



アリアがきゃっきゃっと

「私の事はアリアと呼んでね」とはしゃぐ。


私はそれに笑顔で頷きながらも戸惑う。

私は疑問符をたくさん頭に浮かべながらアリアに引っ張られ目的地に連れていかれた。




連れてこられた場所は土が敷き詰められた広場で色々な人が、色々な訓練をしていた。

遠くには、さっき公爵邸で見た執事服を着た人とベルが見える。

こちらに気づいたベルが嬉しそうに走り寄ってくる。



「リユー!! どうしてここに来たんだ!?

俺とクリスさんの訓練を見に来たのか!?」


「違うの。なんか……よくわかんないけど、連れてこられちゃって……」


私の腕に抱き着くアリアに気づいて、なぜか二人で睨み合う。


「違うわ! リユーはまだアリアとお茶をするんだから。

今はちょっとお母様に言われてここに来ただけ!」


2人がバチバチとしている間に準備が済んだのか、お母様が私達を呼びに来た。



「とりあえず準備をしてもらったから、リユー行くわよ」



アリアは私の手を放し、後ろでベルと騒ぎながらついてくる。


お母様に連れられた先にはアイラおば様が待っていた。

その横には謎の物体があった。



大きな木の幹にところどころ丸が書かれていた。

そしていろいろな場所に木剣が生えている。

下の部分に綱が二本あってその先にムキムキのおじさんがいた。



「さぁリユー準備はいい?

まずはお手本を見せるから。

リユーに見えるような速さでお願いね」



優雅に歩き、その木に向かって行くアイラおば様の背中を目で追う。

ムキムキのおじさんが紐をひっぱりはじめ、木の幹がぐるぐると回り始めた。




「えっ!?」


思わず声がでた。


アイラおば様はしゃがんだり、跳ねたり、宙返りしながら木剣を避けていく。

そして、どこから出したのか分からないナイフをリズムよく投げていく。


しばらく見ているとアイラおばさまがまた優雅に歩いて戻ってくる。


「お母様! お素敵でした!」


そういいながら抱き着くアリアの頭を撫でながら

「さぁリユー行ってらっしゃい」

と私に目配せをして言った。




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