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18 秘密のオークション会場に潜入(2)(アリア視点)



フロアを回っているときに意図せず、リユーたちとすれ違うことができた。

さりげなく目配せをして、離れる。


今回は、念のため私たちは正体がばれないように、リユーとエディハルト御一行とは極力離れて行動している。

リユーの雰囲気を見ればうまくやっているようで安心した。


しばらくフロアをうろうろとしていると、私はある一角に興味を持ったふりをする。


「ねぇあそこを案内してもらえる?」


「奥様は水たばこをご存知なのですか?

それとも葉巻にご興味が?」


基本的に葉巻は男性が嗜むもので、水たばこはまだクォーツでは一般的なものではない。

しかし今回の調査内容が薬物関連なので念のため興味があるふりをした。


「えぇ。先日、旦那様に連れて行っていただいたゴラン国で水たばこを嗜みましたの。

グロリアでも見られるなんて思わなかったわ」


弾んだ声を上げながら案内係のマイクに言うと、嬉しそうにそちらへ案内してくれる。


「奥様は水たばこにご興味がおありのようですね。

旦那様は葉巻を嗜まれますか?」


「いいや。私は葉巻よりも、もっぱら酒の方だね」


上手に切り返したミハエル。

もちろん私たちは未成年なのでどちらも嗜むことはしないが。


「たくさんのフレーバーがございますのね」


水たばこに興味津々といった風にフレーバーの液体瓶を見る。


「こちらではお試しいただくことはできないのですが……。

香りだけであれば、ご確認していただくことは可能でございます。

味については説明欄をご確認ください」


私とミハエルは時々香りを確認したりして説明欄を見ていく。

想像していたものと違い、残念に思いながら片手を頬に当て困ったような仕草を見せる。


「どれも素敵ですけど、見知ったものばかりでしたわね。

確かに高級品ではあるようですけれど……」


「そうだね。今回はルビーだけになりそうだね。そろそろ行こうか」




ミハエルと軽くため息をつきながら、それぞれマイクをちらりと確認しながら言う。

密かにマイクの目の色が変わった。

しかしそれを表に出すことなく、商品の支払いと受け渡し専用の部屋に案内してくれる。


オークション会場では独特の香の香りがずっとしていた。

あれは興奮作用のある薬だ。


だから、水たばこの試供はしていないのだろう。

人体に大きく影響するものではないが、あの香りで確かに会場は異様な雰囲気になっていた。

興奮作用が含まれた香で参加者は知らぬ間に購買意欲を刺激される。

それを利用しているのだろう。


私たちは薬に耐性をつけているので影響されることはない。

しかしさすがに長時間あの香りの中にいると疲れるので少しホッとした。

慎重に通された部屋を確認したが特に変な香りも、仕掛けも無いことを確認してソファに座る。




応接室のようでなかなか高価な品が飾られ、ソファもテーブルも高級品だった。

メイドらしき女性がお茶を運んできて、マイクとローランが入室し正面に座る。


「それでは先にロワールルビーのお取引をさせていただきます」


そう言って手袋とビロードの台にのったルビーを差し出される。

私たちは手袋をつけルビーを手に取る。


うっとりとした表情を心掛けながらルビーを観察する。

しっかりとロワールルビーだった。

満足そうに台にルビーを戻す。


「これネックレスにしてもらいたいわぁ」


「君の金の髪に合うようにネックレスに加工しようね」


言いながら出された書類を確認してサインをするミハエル。


「それでは」

と手に持っていた大きなトランクを、ローランとマイクに見せるようにしながら開く。


「「ゴクリ」」と二人が喉を鳴らす音を立てる。

気づかないふりをしながら束になった金貨300万ルーをローラン側に押し出す。


「これでいいかな?」


「は……はい……ご確認させていただきます」


そう言ってマイクが別室に金貨を運ぶ。

数えているのを待つ間、お茶に何も入っていないことを確認してゆっくりと口をつける。


「奥様は水たばこにご興味がおありとか?」


「えぇこの間、旦那様にゴラン国で教えていただきましたのよ。

グロリアでも流行っていると聞いて、グロリア独特のフレーバーがあるかと期待したのだけれど……」


頬に手を当て残念そうに言うとローランが嬉しそうに額の汗をぬぐいながら言う。


「普段ですと、このご案内は常連の方だけに……。

なおかつこのオークションで、何度かお買い上げしていただいたお客様だけにしかお渡ししていないのですが……」


言いながら一枚の封筒をテーブルの上に置く。


「なんだい? なかなか含めた言い方をするね?」


にやりと怪しい、黒い笑みを浮かべながらミハエルが言う。


「今回のドラリス様と奥様のお買い物。

そして失礼ながらお客様の仕草等をこちらでご確認させていただきました。

お客様にはこちらのオークションの方が楽しんでいただけるかと……」


封筒を確認するように促すローラン。

ミハエルは黒い封筒をさっと開け中を確認し「ほぉ」と一言、言って私に手渡す。


中身には真っ黒なカードに金文字で住所と日付、時間と126とだけ記入されていた。


私は甘えるような仕草をしながらミハエルに寄りかかり

「どういうこと?」とあからさまに聞いた。


それにローランが嬉しそうに反応する。



「こちらは裏のオークションでございます。

普段取り扱いの難しい商品をオークションで紹介させていただきます。

宝石はもちろんのこと、奥様がご興味をお持ちの水たばこ用フレーバーも準備しております。

もちろんグロリアで開発されたものです」



「まぁ! 素敵だわ!

ぜひ行きたいですわ!

旦那様? 連れて行ってくださいませ?」



はしゃいだように、ミハエルの服の袖を引っ張りつつ言う私にミハエルは笑顔を私に向け言う。


「しかしもう明日にはグロリアを立つ予定だよ?」


「そんな……。

あと数週間くらいいいじゃないの……」


悲しそうにミハエルにしなだれかかりながら言う私に、続きローランがニヤニヤとしながら説明を続ける。


「奥様のご興味を惹けるかわかりませんが……。

このオークションではドレスコードが決まっております」


「まぁ!それはなんだか楽しそうね。

どんなドレスコードなのかしら?」


「仮面をつけていただきます。

参加者全員に。

ですので誰が何を落札したか分かりません。

様相は仮面舞踏会のようで華やかですぞ」


「私、仮面舞踏会に憧れていましたの!

旦那様……? だめですか?」


ミハエルにぴったりとくっつき、強請るように甘えた声をだす。


「しかたないなぁ……。

可愛い君にそこまでお願いされるとはね。

それでは……。商隊は先に国に帰らそうか。

私たちは休暇としてもう少しグロリアでゆっくりすごすかい?」


「嬉しい! 旦那様ありがとう」


そう言って頬にキスをする。

ミハエルは一瞬驚いた様子だったが、すぐに我に返り私の頬に手を当てて額にキスをする。

頬を思わず染めながらもなんとかミハエルに微笑む。

ミハエルの耳も少し赤かった。


「なんとも! 本当に仲がよろしゅうございますね。

ではこちらの招待状は受け取っていただけるのですかな?」


「それでは受け取ろう」


そう言って私たちはロワールルビーと新たな招待状を手に帰宅の馬車に乗った。


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