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その2 獣人族のお婆様

次に連れられて行ったのが、学校だった。

沢山ある教室にも驚いたけど、体育館っていう大きな建物にはびっくりした。床には板が貼ってあって、ちゃんとした屋根があるから、雨が降ってもこの建物の中で練習ができる。凄いな、人族の学校って。


さっきの獣人族のお婆ちゃんが、小さな子供達を二十人ほど並べて、剣術の稽古をさせていた。人族ばかりではない、尻尾のある獣人族や、可愛い角の魔族の子もいる。

「おう、来たな。」教えていた生徒に「休め!」と指示して、先生はこちらに歩いてきた。

「剣術が得意と言ったね、腕前を見せてもらおうか。」


壁には、ズラリと練習用の剣が並んでいる。「気に入ったのを選びなさい。」って言われたから、いつも使っているのと同じくらいの長さの剣を手に取った。

「ほう、両手持ちの大剣をつかうのか。面白い。」そう言うとお婆様も、同じ長さの剣を取った。私に合わせてくれたみたい。


「さあ、かかっておいで!」とお婆様が言うので、私はその両手持ちの剣を、いつものように大きく振りかぶった。お婆様がニヤリと笑う。「この私に、剣を振りかぶるか! その意気やよし!」お婆様も、私と同じように大剣を大きく持ち上げた。


この振りかぶった構えは、次は攻撃に踏み出す流れだ。いつもだと、こうして私が振りかぶれば、弱い相手だとびびって下がる。または、相手が防御の姿勢を取ろうとする。そこをすかさず攻めにいく。


いつもはこれで勝てる、村の大人にもたいてい負けないんだけど、今日はダメ。私より背の高いお婆様が、高く剣を持ち上げているから、頭から下の、腕もお腹も、そして脚もガラ空きだ。どこだって攻められるはず。だけど私は踏み込めない。気持ちで押されているのが判った。


心臓がばくばくしてきた。こんなに相手が怖く思えたのは、初めてだ。大型の魔獣と戦った時より、もっと私はびびっている。

お婆様の足が、すうっと横に動いた。誘われたのかもっ? て思いながら、体は反応してお婆様に切りかかっていた。


私が先に仕掛けたのに、お婆様の剣が凄い速さで振り下ろされて、私の剣の根元を叩いた。ギーンと大きな音がして、剣を持つ手がビリビリした。思わず前のめりになったら、左側からお婆様の剣が薙ぎ払ってきた。


体を捻って、剣先をスレスレで避ける。後ろに飛んで、今度は私の番ね。大剣を横殴りにブンと振る。お婆様がひらりと身をかわす。もう一度、剣を反対側から横にブンと振る。お婆様が、またこれをかわす。


いけない! 攻撃が単調になっている、こちらの攻めを読まれるって思った瞬間、剣を振って伸び上がった私のお腹を、刀身の平たい面でしたたかに打たれた。

グウっと声が出て、私は吹っ飛ばされる。何とか立ち上がろうとしたところで、首筋に剣先をピタリと突き付けられた。


「負けました。」悔しくて、痛くて、涙が出た。

「お嬢ちゃんの踏み込みが鋭いので、つい本気で打ってしまった。大丈夫だったかえ?」って、笑いながら言ってくれたけど、それって嘘だ。ぜんぜん本気じゃない! 簡単にあしらわれてしまった自分が、とても情けなかった。


「あの重たい剣を、ブンブン振れる。腕力うでぢからだけではなく体幹がしっかりしているからだ。踏み込みのバネもいい。同い年の子供らでは、相手にならんだろうねえ。」

お婆様は手を伸ばして、私を立たせてくれて、「カーラと言ったね。お前はまだまだ強くなるよ。」って言ってくれた。


 ◇ ◇ ◇


「どうれ、久し振りだ。ジロー! 相手をしてやろう。」お婆様が、次に一緒にいた彼に声をかけた。

「はい。」と返事をして、彼も壁の剣を取りに走る。この子、魔法だけじゃなく剣術もやるんだ。


「カレン婆ちゃん、今日は魔法剣だ、本気で行くぞ!」

そう言ってジローは、姿勢を低くすると、右手で片手剣を腰だめに構える。刀身がわずかに白く輝いて、シュルシュルと風を巻き始める。決して強そうには見えなかった彼の体から、闘気が湧き上がって見えた。


「ならば、私も受けて立とう。」お婆様は、大剣を両手で腹の位置に斜めに構える、その刀身が鈍色にびいろに輝くと、周囲の光を集め始めた。

これが、うわさに聞く魔法剣ね! お婆様ならともかく、このジローが魔法剣を使えるとは思わなかった。


ジローは、腰だめのままでジリジリと近づく。間合いに入る直前、左手からポンポンと火球をお婆様に向かって投げた。思ってもみない魔法攻撃だった。

お婆様が、その火球を斜め上に切り散らす。そこへ、ジローが走り込んだ。


いつの間にか彼は左手に、輝く魔法の盾(マジックシールド)を展開している。その盾でお婆様に体当たり。なるほど、これが狙いだったのか。そして、すかさず右手の剣を振り上げようとしたが、


「甘いわ!」お婆様は、彼の体当たりでは揺るがなかった。スイとたいを入れ替えて、ジローの剣を掴んだ右手首を、大剣の刀身の腹で強く打ち据えた。


ジローがギャッと叫んだ。片手剣が手から離れて、ガランと床に落ちた。ジローの右手からは、血が滴っていた。

(続く)

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