表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
71/72

その4 使命

「ウルト・ゴール、門球(ポータル)を先ほどの時点に戻してくれ。私の船の質量ならば、そこを通過できるはずだな。」

「お前が過去に行くと言うのか、戻ってくるには時間がないぞ。門球(ポータル)を維持できるのは、あと50秒ほどだ。」


「魔石に魔素を圧縮すれば、核爆発を起こせるのは知っていたか? 魔人の言う根源解放の魔術と言うやつだ。」

「お前たちが小惑星を砕いた時に、見せてもらったよ。」

「これで至近からガンマ線を浴びせられる。そして残念だが、この搭載艇にはあの時の魔導機のように、魔石を打ち出す機能はない。ボット経由では魔法は発現しないのだ。私は、魔石を抱いたままゾラック16の(そば)でその時を待とう。」


「お前も(めっ)することになる。」

「やむを得んだろう。私ならば、あの船の燃料供給装置(エネルギーサプライ)を狙って、正確な時間に正確な範囲を破壊できるのだ。」

「お前の行為も、評議会の規定に違反する。」

「キュベレが私たちを、治外法権としたことを忘れたか!」


ウルト・ゴールの理解は早かった。

「分かったよ。神の実験を、お前が貫徹(かんてつ)させるのだな。またしても年若い友を失うのか、儂は。」

「私たちが生きた歴史を正史(せいし)とするぞ。私が(めっ)するよりも、お前の覚醒(かくせい)が神の思惑(おもわく)なのだ。ウルト・ゴール、地球を頼んだぞ。」


私の船は、ソルマール号の舟艇ピットから浮き上がると船底ハッチを抜けた。時空間隙に滑り込むと、その先には過去への出口となる門球(ポータル)が私を待っている。


「ドーピンが盾となった時間の30秒前に送り出してくれ。」それだけあれば、私は魔石に魔素を充填しつつ、ゾラック16の推進機構まで肉薄できる。

私は、迷わず船を門球(ポータル)に突入させた。


忽然(こつぜん)と過去の時空に出現した。ゾラック16の船体が現れる位置に、搭載艇を浮かべて待機する。背後では門球(ポータル)が閉じようとしていた。ソルマール号の動力が尽きかけているのだ。


既に魔石には、魔素の充填を終えた。もう一押しするだけで、根源解放の魔術は発動する。そう言えばこの賢者の秘術を、孫のジローには教えていなかったな。


そうだ、ジローには言っておくべきことがあった。私はダメもとで、感覚共有を接続(ONに)した。孫に渡したスマホを呼んだのだ。

「どうした爺っちゃん、今どこにいるの?」孫の呑気(のんき)な声が伝わってきた。

何と! これだけ時間的、空間的に離れていても、感覚共有アプリは機能したのか! キュベレの種族の科学技術は凄まじいな、私は素直に感動した。


「爺っちゃんは、遠いところにいる。そして、お前ともこれでお別れだ。お前に渡したスマホのストレージな、中身は全てお前のものだ。」

「えっ、いいのか! ラッキー!」


「カーラを大切にしろ。子供を作り、幸せな家庭を築く努力をせよ。」

「気が早いな、爺っちゃん。僕もそうしたいけど、あの()が何て言うかな?」

「思い切って告白してみろ。」

「うん、そうだね。それを言うために、連絡をくれたのか?」

「そんなところだ。じゃあな。レベルアップ頑張れよ!」私は感覚共有を切り(OFF)にした。


決行の瞬間が迫っていた。最後に可愛い孫の声が聴けたのが、嬉しかった。

私が属してきた時空(じくう)円環(えんかん)(いま)、自分自身で閉じる。待ち受ける私の心は、静かだった。


時が来た!

ゾラック16が通常空間に浮上する。同時にドーピンが実体化してガンマ線を(さえぎ)り、閃光と共に消滅した。さあ、精密に同期させて、私は魔石を解放した。


周囲が真っ白になり、私の意識は霧散した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ