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その4 サホロの街へ

翌日の朝、家族六人で朝食を済ませた頃、家の前で騒ぎが起こった。

扉を開けて外に出てみれば、昨夜の飛竜様と、少し大きめで体の模様が綺麗なもう一匹の飛竜様、そしてあのジローが立っていた。

その周りを、わらわらと村人が囲んでいる。


この村で、飛竜は珍しい。しかも二匹揃って我が家の前にお出ましだから、村人が驚いて騒ぎ出したのも無理はない。

ジローが前に出て言った。「お早うございます。こちらがカーラのご両親ですね。」家から出てきた私の親父とお袋に、丁寧に頭を下げた。


「こちらの薬草を、治療院で使わせてもらっていると聞きました。年が明けたら、カーラに高等学校に進学してもらえるように、ご相談したいと思って来たのです。」やっぱり、昨夜の続きの話みたいだ。きっと、あれから飛竜様がジローに伝えたんだわ。


「学費のことや、カーラがいなくなった後の仕事について、相談したいのです。これから半日、彼女をお借りできませんか?」

ジローは育ちが良いためなんだろうな、初対面の私の親父に対して、物怖ものおじせずに言いたいことをはっきりと口に出す。真正面から、私の進学問題を解決しようとしてくれるみたい。


私はどうなるの? ジローとの出会いは、私にとってラッキー? この子、お坊ちゃまに思えたけど、実は出来る子? あまりタイプじゃないけど、この子を私の男友達(かれし~)にできればばイイのかな? でも、これって打算ってやつよね。


親父がゴクリと喉を鳴らして、前に出た。「貴方は、サナエ様の治療院の息子様と、お聞きしましたが?」尻尾が左右に揺れている。


「はい、正確にはサナエは俺の婆ちゃんです。治療院は、もう一人のクレア婆ちゃんと二人で経営しています。」

「おお、クレア様! あの聖母として名高い、筆頭治療師様ですな。」あれっ、親父がすっかり商売人の顔だ。私たち家族には、いつもは見せることのない顔だ。


「そんな方が、私の娘の進学を心配してくださるとは。」昨夜とはうって変わって、親父の口は滑らかだ。尻尾の振れも大きくて、これって薬草を卸すときの商人モードね。

「もちろん、私も娘には学ばせたい。ですが、先立つものの当てがないのも、残念ながら現実です。そこをご配慮いただけるのでしたら、どうぞ娘をお連れ下さい。」


何だか、あれよあれよという間に、話が決まってしまった。

「それでは、カーラをお借りします。昼過ぎには、お返しに戻りますので。」そう言って、ジローが飛竜様に跨った。私は、大きな方の飛竜様に乗せてもらった。あとで聞いたらウォーゼルの奥様で、ビボウと言う名前なんだって。


二匹の飛竜は、揃ってふわりと浮き上がると、手を振る村の皆に見送られて、ジローの住むサホロの街に向かって飛んだ。

わずか三十分くらいの飛行だったけど、涼しい風をいっぱいに受けて、初めて見下ろす景色の素晴らしさに、私の心はときめいていた。


後で聞いた話だけど、村では私が人族のお金持ちのお坊ちゃんに見初められて、嫁に迎えられたとの噂が飛んだそうだ。そんなんじゃ、ないんだったら~!


◇ ◇ ◇


サホロの街に着いた。私は、もちろん初めてだ。

大きな街で、南には私の村につながる道が、北には海辺の町につながる道が、そして東には豊かな農業地帯に向かう道が伸びているそうだ。


昔は、この街に出入りするための関門が設置されていたらしい。しかし、人口が増えて町が膨れ上がり、その門も廃止されてしまったと言う。

ここは、周囲の集落との交易の中心地、大小の商店が立ち並び、高等教育を学べる学校と治療院、騎士団の守衛地もあり、そして沢山の人族が住んでいる。


騎士団には、ここ最近では私たち獣人族も多く所属していて、まだ数は少ない魔族と共に交易路を守る仕事をしているらしい。


ジローと二匹の飛竜様に連れられて、私は治療院だという建物の広間に案内された。そこには、三人のお婆様が待っていた。


まずは私と同じ、猫型獣人族のお婆様。

歳はとっているけど、背筋せすじがピンとして、眼光が鋭く、肩幅が広くて胸板が厚いけどあれは筋肉なんだわ。おっぱいが小さめなのは、私と同じね。

一目で剣士と判る。私を見ると口元をゆるめて、笑いかけてくれたようだ。


二人目のお婆様は、角があるから魔族ね。とっても綺麗な顔立ちに、怖いほど澄んだ目をしている。体は小さく華奢に見えるけど、大きなオーラに包まれているみたい。この人が、ジローのお婆様なんだって。聖母様って、こんな人なんだわ。


そして三人目のお婆様、人族ね。ふくよかで貫禄があって、満面に笑みを浮かべている。この人が、ここの院長様。


私を見て、「ようこそ、お嬢ちゃん。いつも貴女あなたのところの薬草を、使わせてもらっているのよ。」と言ってくれた。

そして、二人のお婆様に「なんだか、昔のカレンを見るようだわねぇ。」って言った。


猫型獣人のお婆様が、りんとした声で宣言した。「これから、臨時の入学試験を始めます。」

えっ? なに? 試験ってなに? 私、聞いてないんですけど~!

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