表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
50/72

その6 初めての

怪我の痛みで疲れ切った顔だけど、もともとは綺麗なお姉さんだ。歳は僕より(とお)くらい上かな。

ミリア先輩も綺麗だけど、見比べれば先輩はまだ美少女の(たぐ)いだ。この女性(ひと)には、整った顔立ちに均整の取れた体、大人の女性の成熟した美しさがあった。


包帯を解いて現れた胸のふくらみも、ミリア先輩に負けず豊かで形もいいみたい。そんな見事なおっぱいが、おぞましく傷ついているのが気の毒だった。

僕は水属性で細かな霧を作り出すと、風属性で患部に吹き付けていく。傷を丁寧に洗って、蛋白分解酵素(プロテアーゼ)を含んだ魔物の消化液を流し落とすのだ。


「次に解毒魔法(ディスポイズン)に移ります。痛覚緩和(ペインリリーフ)は、維持できますか? 僕の方でやってもいいですけど?」

「ああ、頼めるなら、そうしておくれ。朝から半日かけ続けだ、正直疲れてるのさ。」

「分かりました、それでは。」僕は闇属性の波動を()り始める。患部に周囲からの光を収斂(しゅうれん)させて闇に転じていく。

「見事な手際(てぎわ)だ、ジローや。」爺っちゃんが()めてくれた。


ふう、とお姉さんが溜息を()いた。

「坊や、人族のくせに、こんなに闇の波動が使えるなんて! あんた、私より数段上(すうだんうえ)の実力だ。お陰で楽になったよ。」

「このジロー君のお祖母様(ばあさま)は、あの聖母クレア様ですもの。魔素量(M P)も、そんじょそこらの魔族より大きいわ。」ミリア先輩が威張ってる。はいはい、でも僕より先輩の方が、魔素量(M P)もレベルも上ですけどね。


「何と、クレア様! 我らがお(つか)えするオーレス様の姉君(あねぎみ)じゃあないか。そうかい、坊やは王家の血を引いているのか。こりゃ、恐れ多いことだねぇ。」僕の治療を受けながら、お姉さんは魂消(たまげ)表情(かお)をしてみせた。


 ◇ ◇ ◇


「ここの治療はジローに任せよう。私たちは、先程の魔物を追おうではないか?」爺っちゃんの声が頭の中に聞こえた。そうだよね、必要なら離れていても、爺っちゃんの賢者のスキルで治療ができる僕だ。

「そうだね、生体波動で追跡できるのなら、早めに追いかけた方がいいよ。」僕は治療で手を動かしながら、子機から仲間だけに話しかけた。

ミリア先輩がゲラントに向き直る。

「ゲラント様、ここはジローに任せましょう。私たちの船で、魔物を追跡いたしませんか?」


ゲラントは、治療を(ほどこ)す僕とお姉さんを交互に見下ろす。

「ミランダ、それで良いか? 傷の具合はどうなのだ?」

「はい、隊長。この坊やの魔法は本物です。だいぶ楽になりましたから、隊長は魔物を追ってください。」

「分かった。では、そうさせてもらおうか。」


僕とこの女性(ひと)、ミランダさんって言うんだね、二人を残して皆はこの魔動機から降りていく。

「アキラ、無茶するなよ! ミリア先輩の指示をよく聞くんだぞ!」俺は、仲間の背中に声をかけた。

「おう、今度は飛び出さねぇよ。」アキラは僕に背を向けたまま、片手を振って船から出て行った。


 ◇ ◇ ◇


よし、解毒魔法(ディスポイズン)が終わった。次は、いよいよ(いた)んだ組織を修復していく。

「幸い、骨までは侵されていません。これから筋肉と上皮組織に、傷の修復魔法(ウーンドリペア)をかけていきます。」ラムザで一度経験した施術だから、今回は僕一人でもやれそうだ。まずは溶かされた筋肉繊維に対処する。


筋肉が修復できたら、これを筋膜で丁寧に覆っていく。周囲の組織に合わせて、今度は表皮下に脂肪層の復元を始めた。引き締まった体をしていても、ミランダさんは女性だから、ラムザに比べれば脂肪層は厚めだな。


脂肪組織を盛って、その上に表皮を張っていく。うん、我ながら上出来だ。豊かで形の良いおっぱいが、目の前にあった。

そうしたら、急に僕は恥ずかしくなった。こんな綺麗なおっぱいを、僕はしげしげと見つめていた。場面によっては、手を触れさえしたのだ。頬が熱くなるのが分かった。そんな僕を、ミランダさんは面白そうな表情(かお)で見ていた。


僕は気を取り直して、ミランダさんの胸を布で覆う。本当は、もっと見ていたかったけど。

次いで、(ほお)(あご)の傷に取り掛かる。ここは、そんなに消化液を浴びなかったみたいだ。傷は浅い、だけど丁寧に施術していく。女性の顔に、傷跡を残すわけにはいかないからね。


二時間ほどかかっただろうか。全ての施術が終わった。ミランダさんは立ち上がると、うーんと伸びをした。ああっ、そんな恰好をすると、豊かな胸が(こぼ)れそうですよ。彼女はそのまま、魔動機の端にある部屋のドアを開けて、中に消えた。


しばらくして戻ったミランダさん、シャワーを浴びてきたね。部屋には鏡もあったはずだから、傷の治り具合も確かめたのだろう。

「すっかり元通りだ、有難うね、坊や。これは、お礼をしなけりゃねぇ。」そう言うなり、さっきまで横たわっていた布団に、いきなり物凄い力で僕は押し倒された。

「何、するんですか!」

「私は、ゲラント隊では楯騎士(タンク)回復術師(ヒーラー)の兼任でね。力では、坊やに負けないよ。」形のいい二つの丘を顔面に押し付けられて、僕は息が詰まる。


「初めてかい? 優しくしてあげるよ。」次いで、強烈な接吻を喰らって、僕はクラクラした。戸惑う僕、だけど僕の身体は正直に反応していた。

「ほらほら、女に恥をかかせるもんじゃない。」綺麗なお姉さんにギュウと抱き締められて、僕の男に火が付いた。


僕は慌てて、感覚共有(かんかくきょうゆう)子機(こき)切り(O F F)にした。遅かったなと思いながら、、、

(続く)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ