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その2 いざ実戦

「レベルの話は、とりあえず置いておきましょ。次は、この新たな仲間同士の通信とお祖父様(じいさま)からの魔物の地図を、どう活用するか? それを考えるべきだわ。」孫たちは、この新しい玩具(おもちゃ)に夢中だ。いつもは冷静な司令塔ミリアも、今は気が()いているようだ。


「そうだな、さっそく試してみたいよな。」アキラも、先程(さきほど)の疑問をもう忘れたらしい。

「爺っちゃん、今から頼めるか?」そう期待を込めて孫に聞かれたからには、私は受けざるを得ない。可愛い孫の頼みだ。


「いいだろう、これから魔物の森に出掛けるか。だがもう昼を過ぎている、今から半日だけだ。夕飯に間に合うように戻るぞ。」四人と一匹の歓声が上がった。

「では支度をして、30分後に私の船に集合だ!」一斉に、皆で駆けだしたのは言うまでもない。


 ◇ ◇ ◇


サホロの里から、いつもの魔動機では小一時間かかる森にやってきた。もっとも今日は爺っちゃんの船に乗せてもらったから、あっという間に着いたのさ。


船から降りた僕たちは、(おでこ)の子機を「使う(O N)」にした。四つのアイコンが表示されて、全員が動作中(アクティブ)になったのが判る。

次いで、爺っちゃんの船の形のアイコンも灯る。「よーし、始めるぞ!」爺っちゃんの声と共に、僕の視野には周囲の地図(マップ)が薄く重ねて表示(オーバーレイ)された。


皆で勇んで森に分け入る。しばらく進むと、地図(マップ)に赤い点がポツンと浮かんだ。

「魔物を探知した、鑑定するぞ!」頭の中で爺っちゃんの声がして、地図の上に更に魔物のステイタスが表示された。

・名前:大地の蛇(ポチュメルミア) Lv.24

活力(H P):82,470

・特技:毒の牙、締め付け

・弱点:低温


ミリア先輩の声が、頭の中に響く。「みんな、毒に警戒よ! 噛まれないように!」

僕も急いで付け加えた。「こいつは変温動物、低温では動作が鈍くなる。魔法で叩いて、それから物理攻撃がいいと思う。」何故か、この生き物のことが僕にはよく分かる。

横にいたミリア先輩が、ニッと笑顔を見せた。「そうね、まず私が氷魔法を打つわ。その後で前衛の二人は攻撃、但し一撃離脱で。ジロー、障壁を展開して!」


太くて長い大きな魔物が、こちらに近づいてくる。

森に溶け込む濃緑色の胴体は、僕より一回り太く、その長さは10mほどだろうか。少なくとも、カーラを乗せる子供の飛竜バウラの倍はある。


動くたびに、体を覆う鱗がこすれてシャラシャラと音を立て、赤黒い二股に分かれた舌をピロリピロリと出し入れしている。周囲の匂い分子を舌で捉えて、口の中にある嗅覚器官に運んでいるのだ。


グイともたげた鎌首は、高さ3mほど。(まぶた)のない二つの目には、僕たちの姿が映っているのが見えた。上唇には穴が横に並ぶ、これは赤外線を、つまり僕たちの体温を感じる器官だ。匂いで見て、眼で見て、熱でも僕たちを捉えた。戦闘態勢に入ったようだ。


ミリア先輩のリクエストにお応えして、僕は一行(パーティ)の前方に、白く輝く物理障壁を張った。これで、先輩の術式構築の時間を稼ぐ。

氷結魔法(フロズン)!」ミリア先輩の魔法が飛んだ。蛇の頭に命中して、青い氷の塊がパキパキと敵を包む。

流石です、先輩! これは、爺っちゃんのスキルじゃない。先輩自身の魔法だな。


頭部を氷で固められて、蛇の頭がどさりと地面に倒れ込む。視野に敵の活力(H P)が、大きく減って表示された。

「こいつの心臓は、頭からみて体の四分の一の場所にあるはずだ!」前衛の二人に向けて叫ぶ、今日の僕はこの蛇のことがよく分かっている。生き物係のスキルのお陰だな。


僕の声に応えて、すかさずアキラとカーラが、地面に横たわる蛇の胴体に剣を突き立てる。自由に振れる尾を警戒して、二人とも一撃を加えるとパッと飛び下がる。

二人の攻撃を受けて、蛇が苦し気にのたうち回った。敵の活力(H P)が更に大きく低下したのが判る。蛇の活力(H P)は、もうそれほど残っていない。最初の魔法で減ったほどは、残っていない。


「次の魔法で、トドメね。」ミリア先輩の、二発目の氷結魔法(フロズン)が飛んだ。

再び頭を氷漬けにされて、蛇は動きを弱め。やがて絶命した。


「凄いな、これ。敵の強さが判るし、先輩の魔法や俺たちの剣で、どれだけ活力(H P)を奪えるかが見える。戦いが、断然有利になるぜ!」アキラが大いに喜んでいる。

「そうよね、敵の場所が探知できて、その強さが判るから、私たちが先手を取れる。魔物との戦闘が、大きく変わるわね。」カーラの瞳が輝いて、興奮で可愛い尻尾が左右に大きく振れていた。


「よし、次に行こう、次!」張り切るアキラ。もう前に進み始める。

「アキラ君、連携はどうしたの。お祖父様、探知をお願いします。」やんわりとアキラを叱りながら、ミリア先輩も綺麗な顔を上気させている。


この半日、たった四時間ほどだったが、僕らはこの新しい戦い方を試して大きな満足を覚えることができたんだ。

(続く)

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