その5 あの子のステイタス
「へえ、自分のレベルを初めて見たぜ。」アキラが叫ぶ。
「レベルアップまであと47%ってことは、半分くらいまで進んでいるってことでいいのか?」興奮のあまり、僕の胸ぐらをつかんで喚いた。
「落ち着け、アキラ!」僕は、アキラの手を引き離す。初めてのアキラにしてみれば、気が昂っても仕方がないか。
「そうか、これからは俺にも判るんだな。ジロー、魔獣狩りが終わるたびに、これを俺に見せろよな。」すっかり当てにされてしまった。
「では、次はジローにするか。」爺っちゃんがそう言うと、また表示が切り替わる。
・名前:ジローjr.
・種族:人族75%+魔族25%
・年齢:16歳と2ヶ月
・活力:45,631
・魔素量:81,625
・主職能:剣士Lv.20 レベルアップまであと92%
・副職能 :魔導士Lv.20 レベルアップまであと99%
・技能:生き物係、賢者
・装備品:天風の剣、スマホ、感覚共有子機
僕が人族と魔族の混血なのが、よく判る。
父は100%の人族で、母は人族の爺っちゃんと魔族のクレア婆ちゃんの子供だから人族と魔族が50%ずつ。だから僕の魔族の血は四分の一と言うわけさ。
剣士レベルは、このあいだ20に届いたばかりだ。そして、その前に副職能の魔導士もLv.20になっている。
「そうか、ジロー君は魔導士Lv.20なんだ。道理で攻撃魔法も強力なわけだわね。そして剣士もLv.20か、二つの職能でこれだけのレベル、この歳でたいしたものね。」ミリア先輩が褒めてくれた。
「それにしても魔素量が多いわね。魔族の血を引いているのは判るけど、この歳でこれほど多いのは魔族でも珍しいわ。」ミリア先輩が、僕の顔を覗き込む。
「私の子や孫は、魔力の強いものが多い。ましてジローは、クレアの孫でもあるからな。魔素量は母系遺伝するから、多いのは当然なのだよ。」爺っちゃんが言い訳してくれた。
「なんだジロー、角がないくせにお前、凄い奴だったんだな。」アキラが睨んできた。
「そりゃそうさ。僕は子供の頃から、剣と魔法の鍛錬を欠かさなかったからな。」
そして僕は、とりあえずアキラを持ち上げておく。「でも、お前の方が剣士レベルが上じゃないか。」
するとアキラは、ふんと得意げな顔をした。負けず嫌いだからね、お前。
◇ ◇ ◇
その時、カーラがやっぱり聞いてきた。
「ねえ、ジローの技能の『賢者』はミリア先輩にもあったけどさ、『生き物係』って何?」
きっと聞かれると思った。すると僕が口を開く前に、爺っちゃんが割り込んだ。
「これは、昔からの私の渾名なのだ。まさかここで、孫のスキルとして表示されるとは思わなかったがな。」
「爺っちゃんが母星で学んだ、生物学と医学の知識のことだよね。治癒魔法を使うときに、参考になる。ほら、あのラムザの治療にも、これが役立ったのさ、実はね。」
「ミリア先輩の技能には、出てきませんでしたね。この生き物係。」なおも、カーラが食い下がる。
「そうだな、ジローには素質があったのだろうよ。」爺っちゃんが応える。
そう、僕も生き物が大好きだもの。爺っちゃんの血を引いたのさ。だけど、確かに変だ。僕が自分でそう考えたわけではない、どうして表示されるのかな?
「細かなことは後にしましょ。あと二人、次はカーラね。」ミリア先輩は、カーラのが待ちきれないようだ。
実は僕もそうさ。好きな娘のステイタス、見ていいのかしら、ドキドキしちゃうな。
「よし、次はカーラだ。」爺っちゃんの声で、また表示が切り替わる。
・名前:カーラ
・種族:獣人族97%+魔族3%
・年齢:16歳と8ヶ月
・活力:46,772
・魔素量:20,405
・主職能:剣士Lv.19 レベルアップまであと29%
・副職能 :竜騎士Lv.1 レベルアップまであと11%
・技能:生活魔法
・装備品:感覚共有子機
ほら、やっぱりだ。さっきカーラが言った。「ミリア先輩が、私の四倍」だと。でも僕は信じられなかった、例え四分の一だとしても、生活魔法しか使えず剣に闇属性を乗せるのに苦労しているカーラの魔素量が、そんなに高いわけがないと思っていた。
でも、これで見ると魔素量は二万もある! カーラは訓練次第で、もっと魔法に開眼するだろうと言うことだよね。
(続く)




