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その3 カーラの進学

待ちに待った高等部に、入学したわ。

勉強は、とても難しくなった。でもやり遂げて見せる、半年間ミヒカ先生からみっちり補習を受けて頑張ってきたんだもの。


ミヒカ先生は、とっても素敵。

美人で、頭が良くって、優しくて。初等部の先生だけど、今でも時々会ってるの。授業についていけない時は、初歩から丁寧に教えてくれる。あんなお母様を持ったジローが、私は本当に(うらや)ましい。


そのジロー、私にいろいろ気配りしてくれる。もしかして、好かれてる?

そもそも私が(いや)なら、初めて会ったあの時に進学の面倒なんて見てくれなかったわよね。

丸顔で平凡な顔立ち、お母様のミヒカ先生に似ればイケメンだったのに、お父様に似たのかしら、残念だったわね。背は私の方が高いし、剣術ではまだ敵わないけど、今に追い抜かしてやるんだから。


性格もいいのよね。出来る子だけど鼻に掛けないし、優しくて誰にも親切だわ。まあ、苦労知らずに育ったからだわね、きっと。

あれっ、私ってば、出会った頃よりジローを意識しちゃってる?


特待生(とくたいせい)扱いにしてもらったのは、確かにジローのコネだわね。

朝は早起きして初等部の子供たちに剣術基礎を教えていて、学校からお給金をもらって学費の足しにしてる。カレン校長先生に掛け合ってくれたのは、ジローだったっけ。


休日や昼休みの開いた時間は、治療院で薬師のアルバイトをしているけど、これもサナエ院長先生に紹介してくれたのはジローだった。彼の発案(アイデア)で、実家では村の人を雇って薬草の納品も増やせたわ。ジローのお陰で、私の村も(うるお)っているのよね。


名家のお坊ちゃまのジロー、知り合えてラッキーだったわ。でも、私には手の届かない男の子ね。

同じ人族でも、ハルウシの貧しい漁村から進学してきたアキラって子がいる。剣の腕は立つし、体も大きい。ジローだって「同学年で俺とやり合える奴」って認めてる。


大人しいジローと違って、アキラは明るく朗らかで、そして少しイケメン。日焼けして逞しいのは、きっと子供の頃から家業の漁師を手伝っていたからね。それは私も一緒だわ。

ハルウシの村からは、毎年三人の奨学生が選ばれる。網元が選ぶそうよ、アキラはその一人なの。


猫型獣人族しかいないミソマップの村と比べれば、この学校には人族や魔族の生徒がいるし、魅力的な男の子も多いわね。

私もそろそろ年頃だから、ここにいるうちに将来の相手を見つけられればと思っているのよね。

もし、もしもよ。将来の夫に選ぶなら平民のアキラかな?


 ◇ ◇ ◇


今度、四人で冒険パーティを組むの。魔獣を狩って、皆でレベル上げよ。

高等部一年の剣術上位三人、つまりアキラとジローと、そして私。もう一人は、一年先輩のミリアさん。腕利きの魔導士で、もちろん魔族だわ。この人がパーティの司令塔ね。


そうそうジローのお友達の飛竜様ウォーゼル、沢山いるその娘の一人バウラが私と気が合うの。いま、私を乗せて魔獣と戦う練習をしているわ。

飛竜様に乗った私は、夢にまで見た竜騎士よ。


カレン校長先生は、竜騎士だった時も両手持ちの大剣を愛用したそうだけど、私は短槍(たんそう)を練習しているの。

ジローの伯母様、カミラ様を紹介してもらったわ。この人は、今は電設工事の技師長をしているけれど、若い頃は最強の竜騎士として有名だった方なの。


 ◇ ◇ ◇


孫のジローが少々惚れた様子がある、獣人族の娘カーラ。各所に配置されたボットから、私はこの()を日々見守っていた。


入学前に補習に通ったにせよ、初めて親元を離れる娘だ。人族の里に馴染めるのか、学業にはついて行けるのか、孫と共に入学式の前にこの娘を迎えに行ってからというもの、私はこの娘の日常を各所のボットが画像として捉える範囲で注視していた。


だが、どうやら心配する必要はなさそうだ。

寄宿舎に一室をもらって、早朝から朝練に出る。カレンに委嘱されて、年少組の子供達に素振りや剣を帯びての走り込みの指導なのだ。

終われば温泉で汗を流して食堂に現れ、朝から大量の飯をっ食らう。


次いで始まる高等部の授業には、なんとかついて行けているらしい。ミヒカが用意した特別補習の甲斐があったようだ。


昼にまた呆れるほど食べたら、講義のない午後は治療院の調剤室で薬草の加工を懸命に手伝った。ここでは、サナエの育てた薬師やクレアの血を引く治療士たちから、大いに可愛がられている。


そして夕方には、剣技の時間だ。ジローや同年代の生徒に交じって、無心で剣を振るう。最近は短槍の練習も始めたようだ。そしてまた食堂で腹一杯食べて、風呂から上がれば部屋で今日の復習を欠かさず、そして爆睡する毎日のようだ。

根が頑張り屋なのだ。これだけ食べて鍛えているから、ずいぶん体もできてきた。


カレンが、見所みどころがあると熱心にカーラを教えている。

同じ猫型獣人族、しかも二人とも両手持ちの大剣遣いだ。カレンの熱も入ろうというものだ。


ある時、俺をボットに呼び出したカレンが言った。

「旦那様からたまわった魔人の大剣。継がせる者が見つかったかもしれません。」

(続く)

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