その4 鑑定魔法
とても美しい剣だ。
「これは何という剣なのかな?」そう思ったとたんに、僕の目の前に文字が浮かび上がった。まるで、自分の状態表示を見るみたいに、
・天風の剣
魔人によって作られた、魔法剣士にとって究極の片手剣。剣速が早まり切れ味が増す。持ち主の活力と魔素を増加させ、各能力値にも補正がかかる。風属性の波動で励起して使用する。
えっ、何だこれ?
「ほう、鑑定魔法か。お前も使えたのか? いやいや、そんなはずはないな。」壁の爺っちゃんは、驚いた顔をしたが、
「ジローや、お前の状態表示を見せてくれ。」何か思いついたらしい。
「どうやってさ? 自分の状態表示は、自分にしか見えないよ。」
「今は感覚共有していることを忘れるな。お前が見たものは、今なら私にも見えるのだ。」なるほど、そうなんだ。
「状態表示!」僕は、自分の情報を呼び出した。
・名前:ジローjr.
・種族:人族3/4+魔族1/4
・年齢:15歳と2ヶ月
・活力:24,678/45,631
・魔素:78,632/81,625
・主職能:剣士Lv.19 92%、レベルアップまであと8%
・副職能:魔導士Lv.20 1%、レベルアップまであと99%
・技能・接続中:生き物係、賢者
・装備品:スマホ、感覚共有子機
あれれっ、何だかずいぶん細かく表示されたぞ。
そして、今まで表示されなかった技能が二つ並んでいる。生き物係って、爺っちゃんの得意技だったよね。「接続中」って何だ?
「ふうむ、こいつは面白い。」爺っちゃんの声が、驚いている。
「お前がその剣を鑑定できたのは、私の賢者の知識をスキルとして使ったのだな。『接続中』か、なるほど。」爺っちゃんが一人で納得している。
「なんだよ、僕にも教えてよ。」
「ああ、済まん、済まん。つまりだ、お前は私と感覚共有している。そこでお前が『これは何だろう?』と考えた時に、私の賢者のスキル『鑑定魔法』が発動したのだろう。」
「じゃあ、僕は爺っちゃんの賢者の魔法を使えるようになったのか?」
「そうかもしれんな。」
「じゃあ、クレア婆ちゃんみたいな広域爆裂魔法とかも、やれるかな?」
「それはどうかな? あのような大魔法は、訓練された大きな魔力が必要だし、そもそも光と闇の波動を完璧に駆使できなければ発動できない。だが、鑑定魔法は賢者の初歩で、魔力も少なくていい。」
僕は少しがっかりしたが、それでも鑑定魔法が使えるのは凄いことだぞ。戦うときの魔物や、何なら仲間のレベルだって、判ってしまう。
「むやみに、他人の状態表示を覗いてはいかんぞよ。」ニヤついていたら、爺っちゃんに心を読まれた。
「それにしても、ジローの魔素量は大きいのう。魔導士Lv.20で、8万を超えるか! 流石はクレアの孫だわい。」
「爺っちゃんだって賢者だろ、このくらいあったんじゃねーの。」
「いやいや、私は人族だからな。魔法剣士と賢者もLv.100に達したが、それでも魔素量は3万と少しだったよ。」
「僕、婆ちゃんに似て良かった。」
「ふふん、魔素量は細胞質の小器官に依存する。つまり母性遺伝だから、お前が婆ちゃんの魔素量を引き継ぐのも当然だぞ。」
「なんだよ、その小器官とか、母性遺伝って。僕にはさっぱり、、、あれ? 分かってるな。」僕は自分で驚いた。そんな難しい言葉なんて知らないはずなのに、言葉に出した途端に意味が分かっていた。
僕は、頭の中に浮かんだ考えを、言葉に出してみた。「小器官は、細胞の中で特別な働きをする器官のことで、この場合はミディクロリアンのことを指している。卵子の細胞質に含まれているから、母性遺伝なんだな。」
「そう、正解だ。」
「爺っちゃん、僕、なんでこんなことを知ってるんだ?」
「私の生き物係スキルを共有しているからだろうな。」
そうか、爺っちゃんのスキルって、こうやって使うのか。勉強しなくともいいなんて、僕ってラッキーだ。
(続く)




