400話:後始末
公安覚醒者対策課を名乗る2人は、海外の組織が送り込んだ工作員だと思って俺たちを拘束しようとしたって言うけど。
「魔力が強いってだけで拘束するのか? なんか無茶苦茶だな」
監視カメラを壊した時点で、こいつらが合法的な手段を使うつもりがないことは解っている。公安ってのも本当か怪しいモノだな。
「貴方たちが組織と繋がっていないことが解れば解放します。どうか私たちに同行して貰えませんか?」
こいつらが本当に公安の人間だとしても、俺たちが組織と繋がっていないと証明する手段なんてないだろう。今後もこの世界に来ることを考えると、騒ぎにはしたくないけど、下手について行けば、いつ解放されるか解ったモノじゃない。
「この部屋に向かって来る2人も、おまえたちの仲間か?」
『索敵』の反応で、他にもそれなりに強い魔力を持つ奴らが近づいて来るのが解る。公安かどうかはともかく、こいつらが組織の指示で動いているなら、応援が駆けつけて来たってところだろう。
「もしかして……貴方も魔力が使えるの?」
眼鏡の女が驚いている。こいつらは魔力を隠す方法を知らないのか? だけど否定しないってことは、外にいる奴らも同じ組織の人間ってことだ。
「ミリア、邪魔が入ったから仕方ない。ここに泊まるのは諦めるか」
「アリウス、私が油断したせいでゴメンね」
「いや、俺もここまで警戒する必要があると思わなかったからな。さっさと後始末をして撤収しよう」
このタイミングで、再びドアがノックされる。魔力の反応からも外の奴らが到着したことが解る。
ノックを無視していると、ドアが空いて銃を持った2人が飛び込んで来る。これくらいは想定の範囲だからドアのカギは開けておいた。ドアを壊されると騒ぎが大きくなるからだ。
「手を頭の後ろで組んで動くな! 月島、霧崎、無事か?」
入って来た30代の2人の男が俺たちに銃を向ながら、先にいた2人の状況を確認する。魔力が使える2人が手足を縛られていることに警戒心を強める。
「おい……おまえたちはいったい何者だ?」
「いきなり銃を持って人の部屋に踏み込んで来た奴が、何を言っているんだよ?」
「そうよ。貴方たちの方がどう見ても怪しいじゃない。警察でも呼ぼうかしら」
銃口を向けられても平然としている俺たちに、2人の男はさらに警戒心を強める。
「月島……こいつらに何をされた?」
「それが……気がついたときにはこの状態で、魔力が使えなくなっていました」
「東山さん、月島が言ったことは本当です。こいつらは俺たちよりも明らかに上手だ。気をつけてください!」
「どうやら、そのようだな……鳳、情報を聞き出す必要があるから殺すなよ」
「ああ、解っている……手加減できる相手とは限らないがな」
2人の男、東山と鳳が全身に魔力を漲らせる。見た目から結構鍛えているみたいだし、魔力も先にいた2人よりも明らかに強いな。
「物騒な話をしているけど、本当に公安の人間か? 先に仕掛けてきたのはそっちで、俺たちがしたことは正当防衛だろう」
「随分と日本語が上手いようだが、日本人を舐めているだろう。おまえたちのような奴の相手をするときに手段を選んでいるほど、今の日本は平和ボケしている訳じゃない!」
東山と鳳が何かの呪文のような詠唱を始める。『鑑定』したから解るけど、こいつらは俺の知らない魔法やスキルが使える。
ステータスから考えて俺に効くとは思わないけど、そんなモノを使わせる筈がないだろう。発動する前に手刀を叩き込んで2人の意識を駆り取る。
「え……東山さん、鳳さん、どうしたんですか!」
「おい、おまえ……2人に何をしたんだ?」
眼鏡の女月島と刈り上げ頭の藤崎には、俺の動きが見えなかったみたいだ。
「一応言っておくけど、おまえたちが言っていた組織と俺たちは関係ないからな。おまえたちが本当に公安の人間だとしても、これ以上相手をするほど暇じゃないんだ」
明らかに動揺している2人に近づくと、何をされるのかと身構えるのを尻目に、魔導具の首輪を外して手足を縛るロープを解く。
「おまえたちも仕事だから、俺たちを放置する訳にもいかないだろう。これからは俺たちも気をつけるよ。だけど次に仕掛けて来たら容赦しないからな」
月島と藤崎の意識を手刀で刈り取ると、俺はミリアを連れて部屋を後にする。
フロントに急用ができたと伝えて、支払いを済ませてチェックアウト。駐車場に止めてある車に向かう。あの4人が部屋にいるから騒ぎになるかも知れないけど、そのときは自分たちで対処するだろう。
俺はステータスのせいで一切酔わないけど、酒を飲んだから飲酒運転になる。だから車ごと『転移魔法』で、予約をドタキャンしないで支払だけ済ませておいた昨日のホテルに戻る。
「明日朝メシを食べた後、少し時間があるから、ミリアが行きたいところがあるなら付き合うよ」
「今回はもう十分よ。ねえ、アリウス……明日の朝まで2人でゆっくりしない?」
ミリアが何を言いたいのか解らないほど、もう俺は鈍感じゃない。
「そうだな。ミリア――」




