398話:ファミレスの後はリゾート
ミリアの実家に行った後、俺たちはファミレスで遅めの昼飯を食べた。どこの店が美味いとかネットで調べれば解るけど、ファミレスの味こそ俺たちの世界じゃ味わえないからな。
「じゃあ、このページに乗っているハンバーグとステーキ全部。あ、どんぶりモノも美味そうだな。このページのどんぶりも全部」
「あの……冗談じゃないんですよね?」
「勿論。ミリアは注文決まったか?」
「私は明太子カルボナーラとシーザーサラダ、デザートはイチゴパフェ。あと二人分のドリンクバーをお願いします」
注文を終えると二人でドリンクバーに向かう。これも俺たちの世界にはないからな。
席に戻って飲み物を飲んでいると、注文したものが届く。最初に来たのは俺が頼んだ海鮮丼とミリアのシーザーサラダ。俺はわさび醤油にして食べるのが好きだ。昨日回転ずしを食べたけど、ファミレスの海鮮丼も美味い。
次々と運ばれて来る料理が瞬く間に消えていく光景に、周りの客だけじゃなくて店員まで注目している。俺が良く食べることに慣れているミリアは平常モードだ。
ステーキは醤油ベースのソースが美味い。
「ミリア、醤油や味噌とか調味料全般を買って帰るか。あとは米を買わないと」
「良いわね。私たちの世界の魚は種類が違うし、魚介類も大量に買ってアリウスの収納庫で持って帰らない? そうしたら向こうでも普通に日本食が作れるわ」
前世の母親と再会したことでミリアが何を思ったのか。少なくとも今のミリアの様子はいつもと変わらない。無理して平気そうに振舞う必要はないけど、今さら俺の前で強がったりしないだろう。
「今直ぐかどうかは別にして、ミリアはお母さんに自分が転生したことを話したいとは思わないのか? 信じるか解らないけど、お母さんの性格なら端から聞く耳を持たないってことはないんじゃないか?」
「私もそう思うわ。だけど直ぐには決められないわね。お母さんには今の生活があって、私はこの世界にずっといられる訳じゃないから」
「無理して決めることはないよ。ゆっくり考えれば良い。ミリアが決めたことなら俺は応援するよ」
「アリウス、ありがとう」
空になった皿は店員が直ぐに片づけたから、テーブルに積み上がることはなかったけど、俺は注文したものを全て完食した。
ファミレスの後は郊外のスーパーで買い物を済ませる。魚介類を買うなら専門の市場とかの方が良いモノが手に入るだろう。だけど今回はそれが目的じゃないから、近くで手に入るモノだけで済ませて、本格的な買い物は次回に持ち越しにする。
「次はどこに行くか?」
「食べてばかりいたから少し身体を動かしたいわね」
「了解。だったらそんなに遠くない場所にスパリゾートがあるけど?」
「あの温泉がプールになっているところ? 良いわね。だけど水着を持っていないわ」
「それくらい売っているだろう。だったら決まりだな」
車に乗るとカーナビで目的地を指定する。前世でも使ったことがあるけど、今さら使うことになるとは思っていなかった。
高速を使って1時間ほどで目的地に着く。今回の旅行は1泊2日の予定で、時差を考えると明日の午前中に俺たちの世界に戻ることになる。
「昨日使ったホテルを今日も予約してあるけど、ここはホテルが併設されているみたいだから今夜はここに泊まるか?」
「え? そんな無駄なことしなくて良いわよ。車ごと『転移魔法』すれば直ぐに戻れるじゃない」
「いや、俺はこういう施設に泊ったことがないから泊まってみたいと思ったんだよ。ミリアが嫌じゃないなら、金のことは気にしなくて良いよ。どうせ使い切れないからな」
「そうね……実は私もスパリゾートに来るのは初めてだから、気分的に部屋を取った方がじっくり楽しめる気がするわね」
フロントで入場料を払うときに部屋も予約する。プレミアムスイートが空いていたからそこにした。まあスイートルームって言ってもそこまで高くなかったけど。
水着売り場は結構広くて本格的だ。ミリアに似合う水着をじっくり選びたいところだけど、今日は手早く済ませる。
「じゃあ着替えたら中で落ち合おう」
スマホは耐水だから中でも使えるけど、俺たちは『伝言』で連絡できるから必要ない。
男の方が着替えが早いのは当然で、海パン一枚で俺がミリアを待っていると、周りの視線が集まる。俺を見ているのは主に女子だ。
身長2m近い銀髪でどう見ても日本人に見えない奴がいたら目立つのは仕方ない。
「ねえ、あの人凄いイケメンな上に物凄い身体じゃない……」
「海外のモデル? それともプロスポーツの選手? 検索しても出て来ないけど……」
最初は遠巻きに見てるだけだったけど、3人組の女子が近づいて来た。
「ねえ、お兄さん一人で来ているの? 私たちと一緒に遊ばない? Are you available? Do you want to hang out?」
「日本語で解るよ。だけど悪いけど連れがいるんだ」
「うわ、メチャ日本語上手いじゃない! だけど残念、彼女と一緒なんだ」
「いや彼女じゃなくて――」
「アリウス、待たせたわね!」
このタイミングでミリアが登場すると、3人の女子は目を奪われる。純白の髪に紫紺の瞳の美女。スタイルも完璧でとても子供がいるようには見えない。
ミリアは自分の権利を主張するように俺の腕に抱きつく。
「これは勝てないわ……お兄さんとお姉さん、日本のスパリゾートを楽しんでね!」
3人の女子はアッサリと退散した。




