395話:前世の世界でデート
「凄い……アリウス、本当に元の世界に戻って来たのね……」
眼下に広がるビル街を見て、ミリアが感動したように声を上げる。
「まだ俺たちがいた世界とは限らないけどな」
空中に出現した『異世界転移門』を抜けて、俺たちは前世の世界と思われる場所に来た。
念のために俺とミリアの周りには『絶対防壁』を展開した上で『認識疎外』と『透明化』を発動済みだ。
時間帯的には夜だから上空に出現した『異世界転移門』に気づいた奴はいないだろう。この高さなら防犯カメラで撮影されている可能性も低い。
みんながいる世界と『伝言』で連絡できるように『異世界転移門』の中に常に魔力を通して、『絶対防壁』で入口を塞いだ上で『認識疎外』と『透明化』で隠しておく。
「聞いてはいたけど、世界を繋ぐ魔法を発動したままにするなんて……どれだけの魔力が必要なのよ?」
「結構な魔力量なのは確かだけど、俺の場合は消費する魔力より自然回復する魔力の方が多いから問題ないよ」
「自然回復する魔力の方が多いって……今さらだけど、アリウスは本当に規格外ね」
俺は今でもダンジョンの神の『支配領域』に創った俺専用ダンジョンの攻略を続けている。攻略難易度はさすがに天文学的数字と言うのは大袈裟だけど、最早俺以外は神や魔神でも立ち入れないレベルだ。
そんなダンジョンの攻略が日課だから、俺のMPは毎日結構な量増え続けている。
「ミリア。とりあえず俺のことは置いておいて、この世界を楽しまないか?」
「それもそうね……アリウス、2人きりのデートを楽しむわよ!」
俺たちは姿を隠したまま地上に降りて、空いている多機能トイレを探す。トイレの中ならなら監視カメラはないだろう。
多機能トイレに入って扉を閉めると魔法を全部解除する。ここまで用心する必要はないかも知れないけど、余計なトラブルになりたくないからな。
「じゃあ、街に繰り出すか」
俺とミリアは前世の世界でも違和感のない服を来ている。まずはウインドウショッピングしながら、ミリアと腕を組んで街中を歩く。俺が死んでから5年以上経っている筈だけど、街の様子に違和感を感じない。
「そもそも前世じゃ家と職場を往復する生活で、街に出掛けることなんて滅多になかったからな。多少の変化があっても気づく筈がないか」
「今は○○○○年なのね。私も流行りを追うような生活をしていなかったから、特に違和感はないわ。アリウス、そんなことより……」
ミリアが嬉しそうに、俺に抱きつく腕にギュッと力を込める。
「前世の世界でアリウスとデートできるなんて、想像もしていなかったわ。連れて来てくれて、本当にありがとう!」
「ミリアが喜んでくれるなら俺も嬉しいよ。一人で来たときにこっちの世界の金をそれなりに手に入れたから欲しいモノがあったら言ってくれ。プレゼントするからさ」
「ありがとう。だったら向こうで待っているみんなにお土産を買いたいわね」
ミリアならそう言うと思ったけど、みんなの土産は初めから買うつもりだった。ミリアのプレゼントは反応を見て、俺が決めた方が良さそうだな。
俺たちが歩くと周りの人たちが注目する。俺は身長2m近い銀髪で氷青色の瞳のイケメンで、ミリアは純白の髪で紫紺の瞳の美人。視線を集めるのは仕方ないだろう。
「そろそろ夕飯にしようか。ミリアは何が食べたい?」
「そうね。せっかく前世に来たんだからラーメンか回転ずしが食べたいわ!」
豪華な料理は向こうの世界でも食べられるし、日本食もミリアが再現した。この前ハンバーガーを土産に買ったから、次はラーメンか回転ずしか。
「ガッツリラーメンが食べたいなら専門店だけど、回転ずしならラーメンが食べられる店もあるだろう」
「じゃあ回転ずしが良いわ。アリウスもそれで構わない?」
「ああ、回転ずしなら量を気にしなくて良いからな」
俺の記憶だと日本で一番店舗数の多い回転ずしの店に入る。ラーメンがメニューにあるのは確認済みだ。
「いらっしゃいませ……」
俺たちを見た店員が固まる。今どき外国人の客はめずらしくないだろう。だけど自分で言うのも何だけど、俺とミリアの外見のインパクトは凄いからな。
「二人でカウンターでもテーブル席でも構わないよ」
「日本語が上手いんですね……直ぐにご案内します」
俺たちはテーブル席に案内される。店内でも周りの客たちが俺たちに注目している。
「アリウスはネギトロと卵が好きで、ウニとイクラが苦手だったわよね」
「よく憶えているな。ミリアは確か……エビとサラダロールと稲荷ずしが好きだったよな」
「正解! アリウスも憶えていてくれたじゃない!」
タッチパネルで注文しながら、回転している皿も取る。大人になってからウニとイクラの美味さを覚えたから特に嫌いなネタはない。
「うん……回転だけど、久しぶりで食べる本物のお寿司は美味しいわね!」
ミリアは向こうの世界で寿司も再現したけど、さすがに素人だから再現度は70%というところだった。それでも十分美味かったけど。
俺は普通に魚介類のネタから食べ初めて、途中から肉やハンバーグ、唐揚げやてんぷらのネタも食べる。サイドメニューは味噌汁にラーメンとうどん、フライドポテト。瞬く間に積み上がっていく皿とドンブリに、周りの客たちが別の意味で注目する。
「アリウスならまだまだ食べられると思うけど、お金は大丈夫なの?」
ミリアがちょっと心配そうな顔をする。
「問題ないよ。それなりの数の金貨を換金したからね。それと渡し忘れていたけど、これはミリアの分だ」
俺が渡したのはパスポートとスマホ。パスポートの国籍は某国で名前はミリア・ジルベルト。勿論偽造だけどこっちの世界でできた知り合いに頼んだからたぶんバレない。スマホはパスポートの名義で契約して、決済用に50万円ほどチャージ済みだ。
「なんか色々と事前準備したみたいね……」
ミリアがジト目で見るけど、事前準備は必要だろう。




