表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

489/614

3-25話


「エリス殿下。せっかくですから、殿下も模擬戦に参加しませんか?」


 エリス殿下は一瞬戸惑ったけど、直ぐに笑顔で応える。


「だけどミリアには申し訳ないけど、貴方一人じゃ、私の相手にならないわ。ミリアさえ構わなければ、ソフィア、ノエル、貴方たちも参加しない?」


 みんなが戸惑っているけど、エリス殿下が奢っているようには見えない。


「ソフィア、ノエル。お願いできる?」


「ミリア……解ったわ。エリス殿下、私も参加します」


「わ、私も……わ、私じゃ役に立たないかも知れないけど……」


 ソフィアとノエルが私の後ろに立つ。エリス殿下は制服姿のままジーク殿下の剣を構える。剣の構え方にも余裕を感じる。


「『特殊結界ユニークシールド』があるから、遠慮しなくて構わないわよ」


「はい、エリス殿下。最初から全力で行かせて貰います――『身体強化フィジカルビルド』『加速ブースト』『飛行フライ』!」


 私が支援魔法を連続発動すると、私の本気さが伝わったのかソフィアとノエルが身構える。


「『輝きの矢シャイニングアロー』!」


 光属性攻撃魔法を発動すると同時に、不規則な動きでエリス殿下との距離を詰める。


「『輝きの矢シャイニングアロー』を八本・・同時に出現させるなんて、ミリアもやるじゃない」


 エリス殿下が躱そうとすると、八本の光の矢が弧を描いて追尾する。だけどエリス殿下に命中する直前に全ての光の矢が消滅する。無詠唱で『解除ディスペル』したってこと?


「『閃光剣ソードスラッシュ』!」


 私は間髪入れずにスキルを発動して、加速した斬撃を連続で叩き込む。


「『影の棘シャドウソーン』!」


「『石弾ストーンバレット』!」


 同じタイミングでソフィアとノエルが魔法を発動。エリス殿下の足元から『影の棘シャドウソーン』が伸びて、死角から『石弾ストーンバレット』が襲い掛かる。

 だけどエリス殿下は私の斬撃を全て受けながら、ソフィアとノエルの魔法を剣で切り裂く。スキルも使わないで魔法を剣で切るなんて、まるでアリウスみたい。


「みんなも、やるじゃない。特にミリアは動きが正確で無駄が無いわ。じゃあ、そろそろ私も反撃させて貰うわね」


 エリス殿下が剣に魔力を込めると、白い光の刃が伸びる。エリス殿下の姿が一瞬ブレたように見えた直後、私は弾き飛ばされて『特殊結界ユニークシールド』がバリンと音を立てて消滅する。


 ソフィアとノエルの『特殊結界ユニークシールド』も立て続けに消滅する。エリス殿下が一瞬で距離を詰めて、二人に一撃を入れたからだ。


「ミリアが三人掛かりで手も足も出ないなんて……エリス殿下は凄えな!」


「姉上は……こんなに強かったのか……」


 バーン殿下は素直に賞賛して、ジーク殿下は唖然としている。驚いたのは私も同じだけど、エリス殿下が自分の実力を見せつけるために戦ったことじゃないことは解る。


「貴方たちはアリウスから私のことを聞いているみたいね。アリウスとエリクの力を借りるのは事実だけど、私は自分の手で決着をつけるつもりよ」


 エリス殿下は綺麗で優しいだけじゃなくて、決して折れない強い意志を持っている。ソフィアが憧れる気持ちも解る気がするわ。


「エリス殿下、私の完敗です。だけど私も諦めるつもりはありませんから」


 何のことか言わなくても、エリス殿下なら解る筈だわ。


「エリス殿下、私は自分の気持ちに素直に従っているつもりです。その上で言わせてください。私もエリス殿下の力になりたいんです」


 ソフィアが真っ直ぐにエリス殿下を見つめる。エリス殿下はソフィアの気持ち・・・・・・・・に気づいているみたいだけど、これも・・・ソフィアの素直な気持ちだと思う。


 ノエルは気後れして何も言えないみたいだけど。何か思うところがあるのか、じっとエリス殿下を見ている。


「ミリア、ソフィア、二人の気持ちが聞けて嬉しいわ。夏休みになったら私はエリクとアリウスと一緒に、グランブレイド帝国の帝都に行くことになるわ。良かったら貴方たちも一緒に来ない?」


 エリス殿下がグランブレイド帝国に行くことの意味は私にも解る。だけど私とソフィアを一緒に連れて行く意図が解らなかった。


「ミリアとソフィアも、アリウスとエリクがグランブレイド帝国で何をするか、見たいでしょう? 貴方たちにはその権利がある・・・・・・・わ。安全のこととか、私たちの邪魔になるとか、余計なことは考えなくて構わないから。私たち・・・が一緒だから旅行気分で同行しても何の問題も無いわよ」


 エリス殿下がアリウスを含めて『私たち』と言ったことが、ちょっと気になる。だけどエリス殿下は私やソフィアのことを認めてくれているってことよね。

 バーン殿下は自分の前でこんな話をして良いのかと、訝しそうな顔をしている。


「バーン殿下がグランブレイド帝国にどう伝えても構わないわ」


「俺は聞かなかったことにするぜ。ドミニク兄貴のことは俺も苦手なんだよ。エリス殿下が覚悟を決めて行動するなら邪魔するつもりはないぜ」


「バーン殿下、ありがとう。貴方が私の婚約者だったら、こんなことにはならなかったかも知れないわね」


 エリス殿下が悪戯っぽく笑う。


「エリス殿下、俺を揶揄っても何も出ないぜ」


「あら、ごめんなさい。そう言えば、バーン殿下にはもう……」


「お、おい、エリス殿下は何を言っているんだ? お、俺には何のことを言っているのか、全然解らないぜ!」


 バーン殿下が、めずらしく慌てている。つまりバーン殿下には好きな人がいて、それが誰かエリス殿下は言っているってこと? エリス殿下はバーン殿下と入れ違いでグランブレイド帝国に留学した筈だけど。色んな情報に詳しいのは、さすがはエリク殿下の姉君ってところかしら。


「姉上。グランブレイド帝国には、俺たちも一緒に行って構わないか?」


 ジーク殿下がサーシャを連れて心配そうな顔で言う。


「勿論、構わないわよ。ノエルも予定を空けておいてね」


「え……わ、私も一緒に行って良いんですか?」


「当然でしょう。ノエルにもその権利があるわ」


 ノエルが戸惑っているけど、エリス殿下ならそう言うと思ったわ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ