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385話:事情


 マバール王国の2人の王女キシリアとエルザ、そして異世界転移者の藤崎冬也(ふじさきとうや)を連れて。俺たちが転移した先は『自由の国(フリーランド)』の街だ。


「せっかくだから、キシリアとエルザを『自由の国』に招待しようと思ってね。冬也はここで人間と魔族が共存していることは聞いているか?」


「はい、一応は……あれが魔族ですか? 本当に一緒に暮らしているんですね」


 『自由の国』の街には当然だけど、普通に魔族が歩いている。キシリアとエルザも『自由の国』に来るのは初めてだから驚いている。


「じゃあ、早速メシを食いに行くか」


 この人数だと席を確保するのが大変だけど、当てならある。俺たちが向かったのは冒険者ギルド。冒険者ギルドには酒場が併設されているし、昼時なら冒険者はそんなにいない筈だからな。


 冒険者ギルドの建物に入ると。案の定、中にいる冒険者は(まば)らだ。


「アリウス陛下……皆さんを連れて、どうしたんですか?」


 受付の女子が俺たちに気づいて声を掛ける。


「この時間なら空いていると思って、みんなでメシを食べに来たんだよ。話しながら食べやすいモノを適当に用意してくれないか」


 空いているテーブルを横に繋げる形で人数分の席を確保する。子供たちの椅子は俺が『収納庫(ストレージ)』から出す。外でメシを食べるときに子供用の椅子がない店も多いから、いつも持ち歩いている。


 みんなはそれぞれの子供の隣に座る形で、キシリアとエルザもみんなの中に加わる。ママ友の食事会の中に、2人が加わったみたいだな。


冬也が俺に話があるみたいだから、俺と冬也だけ少し離れたテーブルに着く。出て来た料理はサンドイッチと、手掴みで食べられるフライドチキンと串に刺した肉。あとは小分けしたサラダだ。


「じゃあ。みんな、食べるわよ」


「「「「「「うん。いただきます!」」」」」」


 ミリアの合図で子供たちが食べ始める。うちの子供たちは俺の影響なのか、みんな食欲旺盛だ。普通の子供の何倍も食べるけど、毎日鍛錬しているから問題ない。


「あの子供たちって……本当に全員、アリウス先輩の子供なんですよね?」


 冬也が子供たちの勢いに圧倒されている。


「ああ、勿論だよ。一番上のアリオンが2歳半で、一番下のエストが1歳。これからも、また子供が生まれる予定だけどな」


「なんか父親しているって感じですね……勝手な思い込みで女たらしなんて言って、ホント、済みませんでした」


 冬也が改めて深々と頭を下げる。


「いや、その話はもう良いから。冬也は『恋愛魔法学』って乙女ゲームを知っているか?」


「乙女ゲームですか? 俺、ゲームはあまり詳しくないんです」


「じゃあ、信じられないかも知れないけど。この世界の一部が『恋愛魔法学』、通称『恋愛(コイガク)』の世界で、その外側にRPGの世界が広がっているんだ。勿論、俺たちにとってはゲームじゃなくて現実だけど」


「え! ここってゲームの世界なんですか?」


 冬也が驚いた顔をする。


「ああ。冗談じゃなくて、本当のことだ。そして俺が転生したアリウス・ジルベルトは乙女ゲーム『恋学』の攻略対象の1人なんだ。女子の理想の姿をしているから、自慢するつもりはないけど女子にモテる。だから冬也が俺を女たらしだと思っても仕方ないよ」


「アリウス先輩……」


「俺は乙女ゲーの攻略対象に転生したけど。みんなに出会うまで恋愛には興味なかったし、見た目だけで近づいて来る女子は好きになれなかった。だけどみんなに出会って、お互いが大切な存在になって結婚した。奥さんが5人いるはおかしいと思うだろうけど、俺はみんなと子供たちが世界で一番大切で、どんなことをしても守りたい存在なんだ」


 俺たちのことを冬也に話しても、只の惚気話に聞こえるだろう。だけど冬也も何か感じることがあったらしく、俺を女たらしだと言ったことを真剣に謝ったから。俺も自分のことを正直に話そうと思った。


「俺のことばかり話したけど。冬也は俺に話したいことがあるんだよな?」


「俺がアリウス先輩に訊きたいのは、この世界のことです。ここはゲームの世界って話ですけど。魔王が存在するのに倒さないことも、アリウス先輩が『魔王の代理人』をやっていることにも違和感を感じます」


「少し前までは、この世界の人間も多くが魔族は人間の敵で、魔王は世界を滅ぼす存在だと考えていた。過去に2つの種族の争いが起きたのは事実だけど、人間同士でも戦争をするのに、魔族だからという理由だけで敵だと決めつけるのは間違っているだろう。

 それにこの世界の魔王アラニスは自分から人間と争ったことは一度もない。降り掛かる火の粉を払っただけだ。そんな魔王と戦う理由があるのか?」


 冬也は俺の説明を聞くと、しばらく黙って考え込む。


「確かに、その通りですね。だからアリウス先輩は魔族と人間の争いを止めたんですか?」


「俺だけの力じゃないけどな。魔王アラニスにも協力して貰って、今も魔族と人間の共存を進めている最中だよ。魔族だから敵だと考えている人間はまだ多いし、人間を敵視する魔族もたくさんいるからな」


 俺の説明に冬也は納得したみたいだけど。


「だったら尚更(なおさら)、俺がこの世界に召喚された理由が解らなくなりました。アリウス先輩は何か知っていますか?」


「俺の他に転生者はいるけど、俺たち転生者も自分が転生した理由を知らないんだ。冬也のような異世界転移者が、この1年くらいの間に何百人も出現している。だから俺たち誰が何の目的で異世界転移させているのか調べているところだよ」


 俺が知らないと言ったら、冬也は落胆している。

 この世界の『神たち』のことを話すと余計に混乱するだろうし、冬也には直接関係ないことから、今は話すつもりはない。


「まあ、俺が話したのは普通の(・・・)転移者のことで。冬也は他の転移者とは違うだろう?」


 冬也が驚いているけど、『鑑定(アプレイズ)』したから俺には解る。


 冬也は『異世界転移者特典』ってスキルを発動していないのに、レベルが1,000を超えているし。俺が知らない魔法やスキルをたくさん覚えている。



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