表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

452/616

380話:意外なコンビ


異世界転移者たちがMMORPGのキャラとして、この世界に送り込まれた可能性を考えて。俺は知り合いの中で、一番ゲームに詳しそうな奴に話を訊きに行った。


「なあ、誠。おまえってMMORPGに詳しいか?」


 オタク系異世界転移者の佐藤誠(さとうまこと)。こいつは『恋学コイガク』もプレイしたことがあるからな。


勿論(・・)、有名どころのタイトルなら一通りプレイしましたけど。本気でハマったのは、○○○○と△△△△くらいですね」


 誠が上げたタイトルは、俺でも知っている有名なタイトルだ。


「あくまでも可能性の話だけど。おまえたちがMMORPGのキャラとして、異世界転移させられた可能性はあると思うか?」


「ここがMMORPGの世界ってことですか? うーん……そう言えば『恋学』って、オーソドックス過ぎて没になったRPGのシステムと世界設定を流用していて。この世界はそのRPGが元になっているって言っていましたよね?」


 この世界について説明するときに、誠たちに話したことだ。


「『恋学』って、確か□□□□が作ったんですよね。□□□□ならMMORPGも運営していますから、同じ世界観のMMORPGがあっても不思議じゃないですね」


 MMORPGには物凄い数のタイトルがあるから、誠も該当するようなMMORPGをプレイしたことはないらしい。


 もしプレイしたことがあって、そのMMORPGの世界にブリスデン聖王国が存在したとしたら、何かのヒントになるかも知れないと思ったけど。そんなゲームを誠がプレイしたことがあったら、自分で気づいているだろう。


「あまり役に立てなくて、スミマセン」


「いや、おまえが謝ることじゃないだろう。話は変わるけど、おまえたちも『自由の国(フリーランド)』での暮らしに慣れたみたいだな」


 佐藤誠、小鳥遊優里亜たかなしゆりあ、小野寺小百合《おのでらさゆりの異世界転移者3人が『自由の国』に来てから2週間が経った。


 誠と優里亜は冒険者に登録して『自由迷宮(フリーダンジョン)』を攻略している。小百合は魔物と戦うのが嫌いらしく、『自由の国』の宿屋で働き始めた。


「ブリスデン聖王国でもダンジョンを攻略していましたけど。『自由迷宮』の浅い階層はレベルが低くても攻略できるのに、階層が深くなると攻略難易度が一気に上がりますね」


 『自由迷宮(フリーダンジョン)』の攻略難易度は高難易度(ハイクラス)ダンジョンの中では最上位。だけど上層部の攻略難易度は低難易度(ロークラス)ダンジョン並み。1つのダンジョンを攻略するだけで強くなれるように創ったからな。


「誠のレベルなら問題ないと思うけど、あまり無茶をするなよ」


 自分のことを棚に上げた発言という自覚はあるけど。誠のレベルが高いのは『成長加速(レベルアップブースト)』のおかげで、戦闘経験は1年ほどだからな。


「はい。僕も自分の実力は理解しているつもりです。アリウスさんの紹介で相手をして貰った人たちに惨敗していますから」


 誠が勘違いしないように、アリサたちに頼んで模擬戦の相手をして貰った。

 あまりレベル差があるとゴリ押しできるから、その辺は人数や縛りで調整したけど。結果的に誠は一度も勝てなかった。


 それでも負けを素直に認めて、前向きに考えているのは誠の良いところだな。


「あー! いないと思ったらマコっち、こんなところにいるじゃん!」


 俺と誠がメシを食べながら話しているところに、優里亜がやって来る。


「アリウスもあーしを放置して、マコっちと2人でご飯食べるなんて酷くない?」


「俺は誠に訊きたいことがあったんだよ。優里亜を無視するつもりはないし、おまえも一緒に飯を食べるか?」


「うん! じゃあ、あーしを放置したお詫びにアリウスの奢りね!」


 最初をの頃は優里亜がやって来ると、勢いに負けて誠の影が薄くなったけど。


「優里亜さん。僕のことを『マコっち』と呼ぶのは止めてって言いましたよね?」


「そんなこと言った? でもマコっちは、マコっちじゃん!」


「僕は佐藤誠。マコっちじゃありませんよ!」


「マコっちの名前くらい知ってるって。そんなことより、マコっち。ご飯食べたら、今日もダンジョンに行くから。あーし、もう少しレベル上げたいんだ」


「なんで僕が一緒に行く前提なんですか?」


「そんなの、あーしとマコっちがパーティーを組んだからに決まってるっしょ」


「僕はパーティーを組んだ覚えはありませんけど」


「もう、マコっちは細かいな。そんなこと言ってると、いつまで経っても童貞だよ」


「童貞は関係ないでしょう!」


 最近は誠も優里亜の勢いに負けていない。だけど結局、優里亜の意見が通るのは変わっていない。


 誠が良い奴なのもあるけど。優里亜も誠を利用しようとか、そんなことは考えていなくて。対等な相手を築いている。意外と良いコンビだよな。


 他の客たちが思いきり見ているけど、誠も優里亜も全然気にしていない。さすがに周りに迷惑だから『防音(サウンドプルーフ)』を発動するか。


「それにしても、アリウスに本当に奥さんと子供がいたって。あーし、結構ショックだったんだけど。しかも奥さん5人に子供6人って、どこの女たらしって感じ?」


「あれは僕もさすがに驚きましたね……しかも全員美人でミリアさんとソフィアさんまでいるなんて……『恋学』の設定が完全に崩壊していますよね」


 1週間くらい前。俺は誠たち3人に、みんなと子供たちを紹介した。


「あーし、『恋学』のことは知らないけど。アリウスの奥さんたちがみんな美人で、子供たちが可愛いことは同意。エストちゃん、マジであーしの子供にしたい!」


 他の国から解放した5人の異世界転移者も、2人は『自由の国』で暮らしている。他の3人は自由に生きたいと言うので、金貨5枚を渡して好きにさせた。


 新しく来た2人の異世界転移者と、誠と優里亜は少し距離を置いている。


 ブリスデン聖王国では10人以上の異世界転移者が一緒だった。だけど『自由の国』に来たのは、結局誠たち3人だけだ。同じ異世界転移者だからって、仲間意識は特にないみたいだな。


10月30日マイクロマガジン社より2巻発売! コミカライズ企画始動!

各種情報はX(旧Twitter) で公開しています!

https://twitter.com/TOYOZO_OKAMURA



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ