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374話:帰省


「「「「「「レイアおばあちゃん、こんにちわ!」」」」」」


「みんな、良く来たわね。さあ、早く入って!」


 ロナウディア王国の王都に来たのに、実家に寄らない訳にもいかないからな。夕方になって俺たちがジルベルト家の邸宅を訪れると、玄関で母親のレイアが待ち構えていた。


 リビングには子供たち用に、ローテーブルと子供用の椅子が人数分用されていて。テーブルの上に子供が好きそうな料理が並べられている。


「エストはまだ小さいから、私が食べさせてあげるわ」


「おばあちゃん、だいじょうぶ。エストはじぶんでたべられるもん」


「まあ! エストは偉いわね! ギュッとさせて!」


 母親のレイアは6人の孫に囲まれてデレデレだ。子供よりも孫の方が可愛いって言うけど。俺の最初の子供のアリオンが産まれから、レイアはずっとこんな調子だ。


 それにしてもレイアは孫がいるようには全然見えない。もうアラフィフなのに、俺が子供の頃とほとんど変わっていないからな。


「みんなには済まないが、レイアは子供たちに会えて、はしゃいでいるんだ。許してやってくれ」


 父親のダリウスも、いまだに見た目が変わらない。20代って言っても通用するんじゃないか。


「お義父さん、気にしないでください」


「そうですよ。子供たちも、お義母さんに相手をして貰って嬉しそうですから」


 俺たちの方は、全員で囲んでも余裕な長テーブルに着く。ジルベルト家も一応貴族だから、来客を想定してテーブルを用意している。


 今日の夕食は母親のレイアが全部用意したらしく。子供たちやみんながいるから、肉料理ばかりじゃないけど。俺が子供の頃から食べている懐かしい味だ。


 夕食を食べ終えると、母親のレイアとみんなが一緒に後片付けをする。みんなで楽しそうに喋りながら、5人の嫁に囲まれたレイアも嬉しそうだ。


「アリウス兄さん、来ていたんだね。お義姉さんたちに、みんなもいらっしゃい」


 このタイミングで、スーツ姿のシリウスが戻って来た(・・・・・)


「シリウス、遅かったな。また貴族との会食か?」


「うん。アリウス兄さんみたいに圧倒的な実力があれば別だけど。僕は地道に貴族たちとの関係を築かないとね」


 結局、ジルベルト家の家督はシリウスが継ぐことになった。今は冒険者を辞めて、諜報部の管轄機関であるロナウディア王国内務省に入って修行中だ。

 冒険者をしている間も、シリウスは社交界には頻繁に顔を出していたけど。父親のダリウスの傍で、政治的な手腕を勉強しているところだ。


「俺のやり方は褒められたモノじゃないからな。力ずくで相手を捻じ伏せるのは、最後の手段だろう」


「アリウス兄さんの実力があれば、力なんて使わなくても相手が勝手に屈服するよ。それも含めて、兄さんの実力だと思うし。そんなことを言いながら兄さんは、敵対する相手以外に力を使わないだろう」


 シリウスは周りの人間を良く見ている。自分のことも冷静に分析して、決して背伸びしないで自分にできるベストを尽くそうとする。シリウスも今年で21歳になるけど、大人になったよな。


 エリスたちみんなは子供たちと一緒に風呂に入って寝かしつける。今夜はジルベルト家に泊まることになっている。


 学院の寮に住んでいた頃は実家に来たときも、生活のリズムが狂うからと夜は寮の部屋に帰ったけど。今は『神たちの領域』で鍛錬しているから、いつでも幾らでも鍛錬できるからな。


 母親のレイアも子供たちを寝かしつけたいと、みんなと一緒に寝室に行った。リビングに残った俺とシリウス、父親のダリウスは酒を飲みながら、ゆっくり話をする。


「アリウス兄さんは、異世界転移者の水原七瀬(みずはらななせ)さんの件でエリク陛下のところに来たんだよね。七瀬さんは転移者の割に真面な人って話だけど、本当のところはどうなの?」


 シリウスは王国内務省の人間だし、諜報部と一緒に仕事をしているから情報は早い。


 この1年の間に、世界中に異世界転移者が出現するようになって。最近は取り込もうとする国が早々に動くようになったけど。それまでは転移者が各地でトラブルを起こしていたから、転移者の評判はあまり良くない。


「七瀬は如何にも学生って感じだけど、悪い奴じゃないよ。俺たちが異世界転移者のことを知るために、協力してくれているからな」


「もう名前呼びなのか? アリウスは相変わらずだな。おまえなら心配は要らないと思うが、奥さんたちを悲しませるなよ」


「父さん、相手は子供だし。俺はみんな以外の女子に興味ないよ」


 俺は堅苦しいのが嫌いなだけで、他意がある訳じゃない。


「そんなことよりも、俺は七瀬たちを転移させた奴の目的が知りたいんだ。突然、大量の転移者が出現するようになったのは不自然だからな。それに転移者たちを取り込んでいる国が、どう動くのかも見極めたい」


 俺やミリアがこの世界に転生した理由も、いまだに解らないけど。俺たち転生者は元の世界で一度死んでいるから、転生したことに文句はないだろう。


 だけど転移者たちは違う。この世界に勝手に連れて来られて、七瀬のように元の世界に戻りたいと思っている奴は他にもいる筈だ。

 転移者たちを取り込んでいる国も、保護することが目的じゃないだろう。


「もう少し情報が集まったら、俺は転移者を囲い込んでいる国に行って探るつもりだよ」


「兄さんなら情報を掴んでいると思うけど。一番多く転移者を抱え込んでいるのは、ブリスデン聖王国らしいね」


「アリウスなら問題ないと思うが、あまり派手なことをするなよ」


 先代勇者のアベルが『魔族の領域』に侵攻したときやフレッドの件で、俺がブリスデン王国と揉めたことは2人も知っている。


「ああ。勿論、問題ないよ。ブリスデン聖王国の奴らには、たくさん貸しがあるからな」


 相手がブリスデン聖王国なら、多少手荒な真似をしても文句は言わせない。父親のダリウスとシリウスが顔を引きつらせているけど、気づかないフリをしておくか。


10月30日マイクロマガジン社より2巻発売! https://gcnovels.jp/book/1743

アリウスのバトルシーンカラーイラストをX(旧Twitter)に掲載しました!

https://twitter.com/TOYOZO_OKAMURA



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