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349話:新しいダンジョン

書籍版二巻のカバーイラストをX(旧Twitter)で公開しました! 

https://twitter.com/TOYOZO_OKAMURA

新装備のアリウスと、意外なキャラが表紙を飾っています。是非ご覧ください!

※こいつ誰? と思うかも知れませんがw


「私たちの命の恩人を、このままお礼もしないで行かせる訳にはいきません。せめて名前だけでも教えてください!」


 イレギュラーから助けた冒険者のルーディーたちが、じっと見ている。ちょっと面倒なことになったけど。


「俺はA級冒険者のアルだ。本当に礼は要らないからな」


 今の俺は黒髪で黒い瞳のアルの姿をしている。

 身バレすることを考えて。『短距離転移(ディメンジョンムーブ)』を発動したのと同時に、『変化の指輪(シェイプリング)』を着けた。


「A級冒険者って……嘘でしょう? あれだけの数のブラッディ―デーモンを殲滅したんだから。あんたはS級……いいえ、きっとSS級冒険者に違いないわ!」


 ルシアが決めつけるけど。俺はA級冒険者のプレートを見せる。


「別に等級が全てって訳じゃないからな。じゃあ、俺はもう行くから」


「だから、待ちなさいよ! まだお礼をしていないじゃない!」


 さっきから、同じやり取りを繰り返しているな。だから礼は要らないって、何度も言っているだろう。


「だったら……せめて『伝言(メッセージ)』の登録をしなさいよ! あんたがお礼を要らないって言っても。何もしないんじゃ、私の名前(・・・・)に関わるわ。今度、ご飯だけでも奢らせなさいよ!」


 言い方は完全に上からだけど。ルシアはツンデレみたいだからな。


 まあ、それくらいは構わないかと。俺はルシアたちと『伝言』の登録をお互いにして。ようやく、その場を立ち去ることができた。


 『制御室(コントロールルーム)』に戻ると。グリューダがジト目で見る。


「アリウス様……全部、映像で見ていましたが。冒険者に干渉することを、私たち『迷宮の主(ダンジョンマスター)』は禁じられています」


「俺は『迷宮の主』じゃないから、問題ないだろう。『制御室』の映像を見て駆けつけたのは事実だけど。俺は魔力の性質で、相手を見分けられるから。映像を見なくても、大よその状況を把握して。同じことをしたと思うよ」


 『索敵(サーチ)』のスキルレベルを極限まで上げると。魔力の微妙な性質の違いを見分けることができるようになる。


 だから俺は『索敵』に反応した魔力の大きさと位置、その性質だけで。ルシアたちがイレギュラーに遭遇した状況を把握できた。


「アリウス様は、そんなことまで……解りました。過ぎたことを言いまして、申し訳ありません」


「いや、別に構わないよ。おまえたち『迷宮の主』の存在を知られたら、ややこしいことになるからな。冒険者に干渉しないのは正解だろう」


 例えば『迷宮の主』が冒険者を一度でも助けたら。次も助けてくれると思って、無茶をする奴が出て来るだろうし。『迷宮の主』を利用しようと、余計なことを考える奴が出るかも知れない。


 俺は早速、『神たちの領域』に行って。他の『神たち』にグリューダを別のダンジョンに移動させることを承諾して貰うことにした。


 『神たちのゲーム』に影響が出ることじゃないし。『神たち』はアッサリ承諾する。俺は色々とやらかしているから、今さら細かいことに文句を言うつもりはないと『RPGの神』と『モンスターハントの神』に言われたけど。


※ ※ ※ ※


 ダンジョンを創ることで実益があるけど。半分は俺の趣味のようなモノだし。他にも色々とやることがあるから。

 『自由の国(フリーランド)』の街の近くに創るダンジョンのデザインは、草薙渉(くさなぎわたる)に任せて。もう1つのダンジョンの方は、ダンジョンのコンセプトと基礎だけを創って。後は『迷宮の主』のグリューダに全部任せることにした。


 だから新しいダンジョンが出来上がるのは、まだ先のことだと思っていたけど。草薙渉に任せたダンジョンのデザインは、翌日には出来上がっていた。


 草薙渉は『ダンジョンの神』としての能力を失っても。『神たちの領域』にいるくらいだから、神の能力を完全に失った訳じゃなくて。自分の領域を展開して、俺と同じように時間の流れを操作することで。ダンジョンのデザインを瞬く間に完成させたって訳だ。


 他人に依頼して出来上がったものを、放置する訳にもいかないから。俺も『神たちの領域』で時間を操作して、草薙渉がデザインしたダンジョンを完成させる。


 勿論、『神たちの領域』にダンジョンを創っても、『神』じゃないと入れないから。俺は全く同じダンジョンを、『自由の国』の街の近くに創った。


 出来上がったモノをコピーするだけだから。普通の時間の流れの中で作業しても、ダンジョンは数日で完成した。


「ここがアリウスが創ったダンジョンなの?」


 俺はエリスたちみんなを、作ったばかりのダンジョンに連れて来た。


「まあ。俺が創ったことを知られると、色々と面倒なことになりそうだからな。『自由の国』で新しく発見されたダンジョンってことにするつもりだけど」


 ダンジョンの名前はベタだけど、『自由迷宮(フリーダンジョン)』にするつもりだ。

 攻略難易度的には、高難易度(ハイクラス)ダンジョンの最上位。これまで高難易度ダンジョンの中では最も攻略難易度が高かった『竜たちの王宮』を超えるものだ。


 だけど、それは最下層の話で。『ギュネイの大迷宮』以上に、上層部の攻略難易度は低くて。低難易度(ロークラス)ダンジョンレベルだ。

 つまり登録したての冒険者が『自由迷宮(フリーダンジョン)』だけに挑み続けて。最下層まで攻略出来れば、SS級冒険者でも上位の実力になるってことだ。


「こんなダンジョンがあるなら、他のダンジョンに行く必要はないわね」


「いや、そんなことはないだろう。冒険者としての等級を上げるには、ダンジョンを完全攻略することが手っ取り早いからな」


 中難易度ダンジョンを攻略すれば、その功績でA級冒険者になれるし。高難易度ダンジョンを攻略すれば、S級冒険者になれる。


「あくまでも『自由迷宮(フリーダンジョン)』は鍛錬を積むための場所で。この成果を試すため他のダンジョンを攻略して、等級を上げるって流れかな」


 それでも『自由迷宮(フリーダンジョン)』目当てに、『自由の国』に冒険者が集まって来るだろう。


 そうなると治安のこととか、他の問題も色々と発生するけど。俺は人間と魔族の共存を進めるために、『自由の国』を発展させることにしたからな。

 どんな問題が起きても、みんなの力を借りながら解決するつもりだ。



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