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346話:迷宮の主


 『自由の国(フリーランド)』の街の近くに創るダンジョンは、元『ダンジョンの神』の草薙渉(くさなぎわたる)にデザインを任せることにしたけど。


 俺はダンジョンコアを制御する能力を持つという『迷宮の主(ダンジョンマスター)』に興味があるから。別のところに、もう1つダンジョンを創って。そっちを『迷宮の主』に任せるつもりだ。


 とりあえず、『迷宮の主』の能力が実際にどんなモノか。先に知っておく必要があるだろう。『ダンジョンの神』の能力で『迷宮の主』をダンジョンに配置した後。上手く使いこなせなかったら、面倒なことになりそうだからな。


 という訳で、草薙渉が過去に創ったダンジョンの1つに行って。『迷宮の主』がダンジョンを管理している様子を見てこようと思う。


 俺が向かったのは高難易度(ハイクラス)ダンジョン『グリューダの地下城塞』。

 攻略推奨レベルは350と、高難易度ダンジョンの中では平均的な攻略難易度で。地下に造った巨大な城塞というコンセプトのダンジョンだ。


 迷宮の中は城塞を模した造りで、巨大な長方形の階層が全部で120。高難易度ダンジョンとしては一般的な階層数だ。


 俺はグレイとセレナと世界中のダンジョンを巡っていたときに、『グリューダの地下城塞』も攻略済みだ。だから『単距離転移ディメンジョンムーブ』を発動して、最下層にあるダンジョンボスの部屋に直行する。


 とりあえず、ダンジョンボスを瞬殺。

 俺が高難易度ダンジョンを攻略していた頃は、『索敵(サーチ)』の効果範囲はそこまで揃くなかったけど。今の俺の『索敵』の効果範囲は半径10kmを超えている。


 俺は『グリューダの地下城塞』に来たときから、『索敵』に反応する魔力で。最下層から2kmほど下にあるダンジョンコアの存在に気づいていた。大抵のダンジョンコアは、ダンジョンの地下深くに埋まっている。


 そしてコアの近くに、もう1つ魔力の反応がある。こいつが『迷宮の主』だろう。


 だけど2kmという距離が微妙だな。『短距離転移』で移動できるギリギリの距離だけど。転移した先に空間がなければ、岩の中に転移することになる。

 まあ、今の俺なら岩の中に転移しても、破壊されるのは岩の方だけど。


「普通に床を破壊して進むか。魔法で修復すれば済む話だしな」


 俺が魔力を集束させて、床に向けて放とうとすると。


「ちょっと、待ってください! 貴方は何をするつもりですか?」


 突然、ドレス姿の女が出現する。魔力の反応から、こいつがダンジョンコアの近くから転移して来たことが解る。


 見た目は普通の人間。長い黒髪に黒い瞳。20代半ばの仕事ができそうな美人って感じだ。


「何って、床を破壊しておまえのところに行くつもりだったけど。おまえが『グリューダの地下城塞』の『迷宮の主』か?」


「私の存在を知っている貴方は……」


「俺はアリウス・ジルベルト。一応、今の『ダンジョンの神』だよ」


 俺は草薙渉から『ダンジョンの神』の力を継承したことを説明する。だけど『迷宮の主』は訝しそうな顔をする。


「貴方が本当に『ダンジョンの神』であれば、そんなことをしなくても。眷属である我々に声を届けて、従わせることができる筈です」


 俺が『ダンジョンの神』の力を継承したのは、『神たちの領域』で『RPGの神』に直接対峙するためで。『ダンジョンの神』の力を使うことが目的じゃなかったから。草薙渉から『ダンジョンの神』の能力について、細かいことは聞いていない。ダンジョンを創る方法だけは、必要だから教えて貰ったけど。


 だけど俺が『ダンジョンの神』であることを証明するには、『ダンジョンの神』の能力を使うのが手っ取り早い。

 俺は『迷宮の主』に意識を集中して『これで証明になるか?』と念じてみる。


「はい! 貴方が本当に新たな『ダンジョンの神』なのですね……大変失礼しました。数々の御無礼を、お許しください!」


 『迷宮の主』は片膝を突いて、俺の前に膝まづく。


「いや、そういう堅苦しいのは良いからさ。俺は別に怒っていないし。『ダンジョンの神』の能力を知らなかった俺の方が悪いだろう」


 俺はここに来た目的を『迷宮の主』に説明する。


「つまり私がどのようにして、ダンジョンを管理しているか。それが知りたいということですね? 承知しました。でしたら『制御室(コントロールルーム)』にご案内します」


 『迷宮の主』は転移で俺を『制御室』に連れて行くと言うけど。


「悪いけど、俺は他人に転移させられるのは好きじゃないんだ。その『制御室』ってのは、おまえが俺のところに来るまでいた場所のことか?」


「はい。私は普段から『制御室』にいますので?」


 『迷宮の主』は何のための質問か、理解していないようだな。俺はさっき『迷宮の主』の魔力の反応があった場所に『短距離転移』ピンポイントで移動する。


 そこは魔法の光に照らされた無機質な部屋で。壁にダンジョンの中の各地と思われる映像が映し出されている。


「ご自身で転移されたんですが? ですが、どうやってこの場所を?」


 後から転移して来た『迷宮の主』が訝しそうな顔をする。


「『索敵』に反応した魔力で、おまえが居た場所は把握していたからな」


「『索敵』って……これだけ距離が離れているのに。アリウス様は私の魔力を感知したんですか? もしかしてアリウス様は、このダンジョン中の魔力を感知できるのですか?」


 『迷宮の主』が驚いている。まあ、俺みたいに『索敵』のスキルレベルを限界まで上げる奴なんて、そうはいないだろう。


 それにSSS級冒険者レベルの奴が、高難易度ダンジョンに来ることなんて滅多にないから。広範囲を『索敵』できる奴に、こいつは遭遇したことがないんだな。



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