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340話:実力


 『地獄の狼王(ギガントヘルウルフ)』の巨体が、轟音とともに大地に崩れ落ちる。


 ジェシカたち『白銀の翼』のメンバーは全く危なげなく。無傷でギガントウルフに完勝した。


「この人数で、『地獄の狼王』に無傷で完勝とか……マジかよ」


 シンディーが唖然としている。狩人(ハンター)が巨大な魔物を仕留めるときは、普通はレイド規模の人数で挑むし。特級狩人のシンディーたちは3人で魔物に挑むけど。1,000レベル超えの変異種の地龍(アースドラゴン)に全然歯が立たなかったからな。


「次の獲物が控えている(・・・・・)けど。今度はシンディーたちが行くか?」


 俺の『索敵(サーチ)』の効果範囲は半径10kmを超えているから。当然、他の魔物も捉えていて。ジェシカたちが戦っているから、実は足止め(・・・)していた。


「おい、アリウス。てめえ……どうせ次も、『地獄の狼王』級の魔物だろう。ガルドリア高原は、そういうところ(・・・・・・・)だからな」


 シンディーたちと情報を共有している訳じゃなくて。俺は高速で空中を飛び回って、自分で調べたんだけど。この辺りは確かに、ギルモア大陸でも特に巨大な魔物が犇めいている。


 巨大な魔物の餌になる魔物も、当然生息しているけど。そいつらも普通の感覚で言うと、十分巨大だからな。


「あたしたち3人じゃ、とても倒せねえって言わせてえのか?」


「いや。エリスたちと協力すれば、倒すのが無理とは思わないけど」


 エリスはSSS級冒険者クラスって訳じゃないけど。実はジェシカ並みに強いし。


 ミリアも今ではロナウディア王国諜報部の課長クラスの実力で。ソフィアやノエルだって、魔術士として優秀だからな。


 ヨハンもいることだし。危なくなったら、俺が手を出せば良いからな。


「ケッ! ジェシカの姉御以外のアリウスの嫁たちが、どれくらい強いか知らねえが。人の力を借りてまで、魔物を倒してえとは思わねえよ」


「僕もとりあえず、遠慮しておくよ。僕が付いて来た目的は、アリウスが戦うところを見ることだからね」


 ケイナが煙草を吹かしながら、面白がるように笑う。


「アリウス、俺も御免だぜ。自分から鉄火場に足を踏み入れる趣味はねえからな」


 ギジェットはお手上げという感じだ。


「みんなはどうする? 俺も一緒にやるから、戦ってみるか?」


「いや、さすがに大物過ぎるわよ。私はアリウスが戦うところを見ているわ」


 ミリアの言葉にみんなが頷く。


「じゃあ、あとで場所を変えて。もう少し小さい獲物を狙うとして。今回は俺が戦うとするか」


 俺は魔物を閉じ込めるために遠方に展開した『絶対防壁アブソリュートシールド』を解除すると。


 土煙を上げながらこっちへ向かって来る巨大な魔物の方に向かう。


 そいつは体長40m超の巨大な蜈蚣(ムカデ)のような魔物で。鋼鉄のような外骨格が巨体を覆って、無数の足は刃のように鋭く。牙の生えた巨大な口は、普通のドラゴンなら一撃で噛み砕けるサイズだ。


「今度は『死神大(グリムリーパーセ)蜈蚣(ンチピード)』かよ……」


 イメージ的に解らなくもないけど。それにしてもギルモア大陸の魔物は、どれも大袈裟な名前だよな。


 突っ込んで来る『死神大蜈蚣』の正面に立つと。『死神大蜈蚣』が俺を圧し潰す直前。突然、巨体が真っ二つになる。


「おい。アリウス。てめえ……今、何をしやがった?」


 勿論、そう見えただけで。集束させた魔力の刃で、俺が切っただけの話だ。

 俺以外の誰にも、見えなかったみたいだけど。


 もっとゆっくり動いた方が、見ている奴には解り易いけど。結果は同じことだし。時間を掛ける意味はないからな。


 俺は『収納庫(ストレージ)』に『死神大蜈蚣』を回収すると。


「じゃあ、別の場所に移るか」


「アリウス、てめえ……説明は何もなしか? ホント、スカかしやがって」


「これがアリウスさんの実力ってことですよ。いちいち文句を言うなら……私が許しません」


「あん……許さねえって? ヨハン。だったら、どうするつもりだ?」


 ヨハンとシンディーが睨み合う。ケイナは咥え煙草で苦笑して。ギジェットは呆れ顔だ。


「おまえら。喧嘩しているなら、置いていくけど?」


「アリウスさん……解りました」


「チッ……仕方ねえな」


 ヨハンとシンディーは水と油だな。


「なあ、シンディー。次の狩場では、俺がおまえたちの動きに合わせるから。一緒に戦ってみるか?」


「手を抜かれるのは好きじゃねえが。まあ、仕方ねえ。今度こそ、アリウスの戦いっぷりを見せて貰うぜ」


 ミリアが微妙な顔でこっちを見ている。


「アリウスって、シンディーに構い過ぎじゃない?」


「アリウスは面倒見が良いから。シンディーのことも、上手く導こうとしているんでしょう」


 エリスが小声で囁きながら、優しい笑みを浮かべる。エリスには全部お見通しみたいだな。



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